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クロエ  作者: KAE


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38/63

〈38〉

クロエはウイングと共に朝日に向かって駆けた。

体は疲れているが、心は晴れやかだった。

マックスの味方が増えたことが嬉しかった。


アルシェッタ辺境伯の屋敷に戻ったクロエは概要をベックに話し、リンダ小隊から男性5人女性10人とジル小隊から12人を選抜し、指令を出して、すぐにハング伯爵邸に向かった。


クロエが宣言した通り、日付が変わる前にはハング伯爵邸に到着した。


「殿下、ただ今戻りました」


「本当に1日で戻ってきたのだな…ご苦労であった」


「恐れ入ります」

クロエの後ろには護衛に扮したジル小隊12人と侍女長に扮したリンダ隊長と侍従に扮した者5人と侍女に扮した者9人を紹介した。


エリックは「さすがだなアルシェッタ。後ろに控えているのは皆、腕に覚えのある者と見た。此度の件落ち着くまでよろしく頼む」


ジルとリンダが代表して「「かしこまりました信用を裏切ることのないよう努める所存でございます」」と答えた。


エリックは満足そうに頷きそしてクロエに

「アルシェッタご苦労だったな。明日は昼前に出立する。それまでゆっくり休め…調印まで、まだ緊張の日が続く」と言った。


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて休ませていただきます」


「うむ。我らも明日からまた旅が始まる。休もう」と言ってエリックと諸侯は部屋に戻っていった。


ジルとリンダ、隊員達はサロンに残ったマックスと再会を喜んでいた。


「マックス!久しぶりだな!お勤めお疲れ様!」とジルが肩を叩けば

マックスも「ジル隊長!リンダ隊長!お久しぶりです!本当は辺境伯領で会いたかった!」と子どものように笑った。


サロンは先ほどとは打って変わって賑やかになった。


再会を喜んだ後、リンダはハング伯爵家の侍女長と打ち合わせをし、本格的に活動するのは明日からにして、休むためにハング伯爵家侍女長の案内で各自寝床に向かった。


サロンにはクロエとマックスが残された。


「クロエ、お疲れ様。部屋に案内するよ…行こう」


「うん」


ふたりはクロエに用意された部屋に向かった。


クロエに用意された部屋は、ハング伯爵邸の客間が並ぶ階の一番端の部屋だった。


「ここだよ。俺の部屋は隣なんだ」


「そうなのか…」と言ってクロエは客間の扉を開けた。

その時、クロエは背後から温かいものに包まれた。

「マックス?」


「クロエ…」

じんわりとマックスの体温がクロエの背中に伝わってくる。

愛しい温もりだった。

「ふふ、マックス…顔が見たい」クロエはマックスの腕の中で方向を変えてマックスと向き合った。

見つめ合い、微笑み合う。

「久しぶりにクロエの顔を見た気がするよ」


「私もだ…マックス。久しぶりだな…」

自然とふたりの唇は重なった。

もうやめなければ…とお互いわかっているのにやめられない…口づけはどんどん深くなり、舌を絡めあいお互いの存在を確かめ合った。


暫くの後、クロエはマックスに抱きしめられていた。

クロエはマックスの腕の中で「マックスの香りがする…ふふ」とすり寄る。


マックスはクロエの頭にキスをしようと近づくと、

「あ!ダメだ…私は埃だらけだ…マックスまで汚れてしまう…」とぐいっとマックスの胸を押して離れようとした。しかしマックスは離さない。


「ふふ…そんなの気にしない…もう少しだけ…」


「ああ、じゃあもう少しだけ…」


扉の陰でふたりは暫くの間抱きしめ合っていた。


…………………………………


「うぅっ…うぅ。や…め…うっ…」

誰かがうなされているような声がしてクロエは目覚めた。


静かな暗い部屋、ベッドに起き上がったクロエは周りを見たが、何もない。耳を澄ましていると、壁の向こうから聞こえてくる。


「マックス?」


壁の向こうから微かに「うぅ…うっ…あっ」とマックスがうなされている声が聞き取れた。


クロエはマックスの部屋に急いだ。

そっと扉を開けると、暗い部屋のベッドで汗をかいたマックスがうなされていた。


近寄って、マックスを揺すり起こした。

「マックス…マックス。大丈夫か?…マックス?」


「うぅ…っはっ!」マックスは驚いたように起き上がった。


マックスはクロエがそばにいる事に気がついて「はぁ…すまない…びっくりしたろ?…最近は見なくなっていたのに…」と乱れて顔にかかった金色の髪をかき上げながら弱々しく言った。


クロエは少し震えるマックスを黙って抱きしめた。

優しくゆっくりマックスの背中を撫でる。

マックスは大人しくクロエに包まれていた。


ポツリと「あの顔が…俺を追いかけてくるんだ。〈吐け!〉って…クロエに拾ってもらってからは見なくなっていたのに…なんでだろうな…」マックスが溢した。


「私が追い払ってやる…。必ず仕返しをしてやる」


「ふふ、頼もしいな…クロエなら本当にやってくれそうな気がする」


「任せてくれ…ふふ。背中は大丈夫か?」


「ああ、少し疼くけど、大丈夫だ。クロエの手が気持ちいい」


「ふふ、そっか」


「クロエ…暫くこうしていて欲しい。クロエのここは安心するな…」マックスはクロエの胸に頬を擦り寄せてくる。


「ふふ、いいよ。その気持ちはよくわかるから…」


暫くすると、クロエの胸でマックスの静かな寝息が聞こえてきた。

クロエは静かにマックスを横にして、掛布をかけて、「おやすみ、マックス」とマックスの額にキスをして客間を出ていった。


翌朝、マックスが目覚めて昨夜の事を思い出していた。

「参ったなぁ…どんな顔をすればいいんだ…」と独り言を言いながら外の空気を感じようとバルコニーの扉を開けて外に出た。


「おはよう!マックス!」と下からクロエの声がした。


「クロエ?…あ、おはよう」


「久しぶりに付き合わないか?」と模擬剣を振りかざす。「護衛の詰め所にあったんだ!」


マックスは普段通りに接してくれるクロエに、ありがたく普段通りに「いいね!今日こそは勝ちたい!」とかえした。










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