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クロエ  作者: KAE


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34/63

〈34〉

流血の残酷描写があります。

お気をつけください。

ガイナ伯爵領の街道の視察も終盤を迎え、ガイナ伯爵領内の宿場町の視察はあとひとつになった。


今日中にアルシェッタ領に入る予定だが、クロエは少し難しいかもしれないと思っていた。


皆、なにも言わないが、疲れているのは誰の目にも明らかだった。

並走している馬車の中は静かだった。

次の宿場町で泊まるのが一番安全かもしれないと思い始めていた。


クロエとマックスも疲れていたのだろう。少し気づくのが遅れた。


複数の馬がこちらに向かってくるのがわかった。

危険を知らせる笛を鳴らそうとしたが先にマックスが笛を鳴らした。


一気に緊張が走った。


商隊(キャラバン)は野盗に扮した何者かに囲まれていた。


護衛達が応戦体制に入った。クロエもマックスも応戦体制に入る。

マックスが檄を飛ばす「馬車を守れ!」

御者に扮した護衛達が馬車の周りを固める。

野盗に扮した何者かは荷馬車には目もくれず、護衛達にかかってきた。

クロエもマックスも応戦する。〈慣れてる〉とクロエは思った。

マックスも同じことを思ったのだろう「生捕にしろ!」と檄を飛ばした。


馬車の周りで怒声や悲鳴、剣戟の音があちこちから聞こえてきた。

護衛に扮した近衛兵とクロエとマックスを相手に野盗に扮した何者かは次第に劣勢を強いられるようになった。


突然、リーダーと思われる者が「撤収!」と号令をかけた。

まだ立っている数人が踵をかえし、馬に乗って逃走を始めた。


「クロエ!」  「マックス!」お互い声を掛け合ってから相棒を呼ぶ。


「ウイング!」  「ボイジャー!」

走り寄ってきた相棒にふたりは飛び乗り、マックスは「我らが追う!残った者は賊を捕縛せよ!」と言い残して、逃げた賊を追った。


雑木林の中をウイングとボイジャーは疾走していた。

普段から鍛えている軍馬は逃げる賊の姿を捉えた。


逃走者は4人。

ふたりは一気に速度をあげて賊に追いついた。


賊は馬から降りて応戦体制になった。

クロエとマックスも馬から降りて、攻撃体制に入る。


雑木林の中に剣戟の音が響いた。


ガチーン!ガッ!キーン!「うわぁ!」「がぁっ!」


暫く響いていた剣戟の音が止んだ。


クロエ達は受けた傷を押さえて蹲る賊を拘束した。


拘束されて地べたに座る4人に

「お前達は何者だ?」とクロエは聞いた。


「……」


「聞こえないのか?何者か…と聞いている」


「……」


「どうやら聞こえないようだな…」マックスがクロエの隣にしゃがみ言った。


「そうか…そんな役に立たない耳は要らないな…」そう言ってクロエは腰に刺した短剣を抜いて賊の耳に当てる。


「ヒッ…」賊は怯えて体を強張らせる。


「もう一度聞く。お前達は何者だ?ただの野盗ではないことは最初からわかっているんだ…嘘は通用しない」


「早く言った方がいいぞ…女だと思って甘く見ない方がいい」とマックスも賊に忠告する。


「ぐっ…」賊の耳の付け根に短剣が少し食い込んだ。血が流れ出てくる。


「ふふ、我慢強いな…」クロエはもう少しだけ短剣を食い込ませる。

マックスもそれを止めない。むしろ「どこまで我慢できるのか見せてもらおうか?」とクロエを煽る。


「ぐっ…わ、わかった。やめてくれ!」賊は落ちた。


「なんだ、ちゃんと聞こえるんじゃないか…」とクロエは賊の血で汚れた短剣を賊の服で拭って腰に戻し立ち上がった。


マックスは拘束した4人を引き連れて、クロエは4頭の馬を引っ張って歩き出した。


「ウイング!ボイジャー!帰るぞ!」クロエの声にウイングとボイジャーは後ろからついてきた。


…………………………


商隊(キャラバン)の周りは騒然となっていた。


十数人の賊が護衛に拘束されて地べたに座らされている。

エリックをはじめ諸侯は安全を確認してから馬車から降りてきていた。


エリックが「ドミトスとアルシェッタは?」と護衛のひとりに聞いた。


護衛は「はっ、逃げた賊を追って雑木林の奥に行かれました」とクロエとマックスが駆けていった方を見る。


「そうか」と言ったエリックは拘束された賊を見る。

「随分身なりのいい野盗だな…」と呟いた。


雑木林の奥から人影が出てきた。

クロエとマックスだった。


クロエは賊達の馬が繋がれているところに引っ張ってきた馬を連れていき、マックスは拘束した4人の賊を仲間の元に連れてきた。

ウイングとボイジャーは馬車の両脇に自分達で戻る。


それを黙って見ていたエリックは「たいしたもんだな…」と呟いた。


クロエが一行の元に戻ったのを確認して、エリックが拘束されている賊の前に立った。


「さて、自己紹介をしてもらおうか?」エリックの冷ややかな目が賊を捉えた。王者の目がそこにあった。

今まで同行していた諸侯も姿勢を正すほどのオーラがエリックから出ていた。


賊は黙って俯いている。

エリックは耳から血を流している賊の前に立ち

「先ずはお前からだ…どこの所属だ?主人に頼まれたのか?」


耳から血を流している賊はエリックを見上げて怯えている。


エリックの後ろに控えるガイナ伯爵にマックスが囁いた。

「この雑木林の先は領境ですか?」と賊が逃げた方とは反対の雑木林の奥を指差す。


「あ、ええ…そうです。ハング伯爵領です」


それを聞いたマックスは「でん…商隊長!」


それを聞いていたエリックはマックスとガイナ伯爵に向かって頷いた。






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