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クロエ  作者: KAE


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3/27

〈3〉

長机が並べられただけの大きな部屋は、食堂にも会議室にも救護所にもなる。

今は部屋の壁側に並べられた大鍋や大皿から好きなだけ肉料理や野菜、スープ、パンを取り分けあいているテーブルに持っていき皆で朝食を摂っていた。


アルシェッタ辺境伯領の私兵は3大隊に分かれていた。そしてさらに1大隊を3小隊に分けていた。

1小隊で30から50人。統括者も含めて約500人の専属私軍を持ち領民も場合によっては軍属できる体制を取っていた。

今はその小隊のうちの35人が一斉に食事を始めたので、静かだった部屋は一気に賑やかになった。

クロエもマックスもその中にいた。


「しかし、マックスも随分体力がついてきたじゃないか!最初はなんだかやつれて見えたけど、随分しっかりしてきたよなぁ!」と小隊長のジルが隣に座るマックスの背中を叩いて大声で笑っていた。


「ゴホッ!ゴホッ!あ、ありがとうございます。これもみなさんのあっつぅ〜いご声援と訓練の賜物です。感謝してますよー!」とマックスもむせながら大声で笑って答えている。


「マックスはさ、型は綺麗なんだよな!だけど、大振りなんだよ!まあ、それは実戦経験積まないといけないけどな!克服したら隊長も夢じゃないぜ!頑張れよ!」とまたマックスの背中をバンバン叩いて笑う。


「そんな大それた夢なんて持ってませんよー。やめてください!」マックスはむせながらも大声で笑っていた。


その様子を見てクロエは安堵していた。


•••••••••••••••


10日程前、マックスがクロエに「軍の鍛錬に参加させて欲しい」と言ってきた。


クロエは「剣を扱ったことはあるのか?」と以前のマクシミリアンを思い出して聞いてみた。


「ある」と答えた。(そうだろうな…とクロエは思った)


「ここの剣は殺し合いの剣だぞ、大丈夫か?」と聞いたら


「大丈夫だ」と答えた。(いや、きっと無理だろう…とクロエは思った)


クロエは少し考えたが「承知した」とマックスに答え翌日、小隊長のジルに預けた。


ジルはマックスの力量を見るためにマックスと手合わせをした。

結果は散々だった。マックスの完敗だった。

悔しそうにしているマックスを見ながら、

ジルは「型や基本はできているが、これでは誰にも勝てない…やめてもいいぞ」と伝えた。


しかしマックスは食い下がった「やめない。このまま続けたい」とジルに薙ぎ払われて尻餅をついた状態で告げた。


ジルは、その様子を見ていたクロエに視線を向け、

クロエが頷くのを確認して「わかった、明日から朝の鍛錬が始まる前に鍛錬場を…10周走り込んでおけ」

と指示を出した。その日から彼は日々鍛錬に明け暮れた。


今では、朝の鍛錬前に15周は走り込めるようになっているようだ。

全員が集まってさらに走り込みを続け、基礎的な筋力トレーニングにもついてこられるようになった。


ひたむきな彼を見て最初は遠巻きに見ていた他の者がマックスに声をかけるようになって、彼も馴染めるように努力していた。


マックスも城の客間から宿舎に移り、それが彼等の仲間意識を形成するのにも役に立ったのかもしれない。

仲間として環境に馴染んでいるマックスを見てクロエはそう感じた。


そして今朝、「クロエ様、一度マックスと手合わせをお願いできませんか?かなり腕をあげたので、見てやって欲しいのです」とジルが言ってきた。


「勝率は?」


「女性兵士だと7割、男性兵士で5割。といったところでしょうか…」


「そうか、早かったな。いいだろう…」

••••••••••


確かにマックスは腕をあげていた。まだまだ実戦向きではないが、王都で暮らす者には実戦向きの剣術は必要ない。(いったい彼は何を目指しているのだろう?)

大声で笑いながら仲間と談笑し食事を進めるマックスを横目に見ながらクロエは思っていた。


食事が済めば、皆はそれぞれの任務に向かっていく。

マックスは軍属ではないので、今はクロエの執務室でベックの仕事の雑務を手伝ってもらっている。


マックスの仕事の処理能力は高かった。


「ベックさん、これで全部です。他に何かあればお手伝いできますが…」


「おや、もうできたのかい?早いね!マックスが手伝ってくれるから、ものすごく捗るよ!…うーん、私の手持ち分で手伝ってもらえるものは…ないな!

クロエ様、マックスの手があきました。何かお手伝いできるものはありますか?」


「じゃあ、この処理済みの書類を仕分けて日付順にファイリングして欲しい」クロエは手を休めず、書類に目を落としながら告げた。


「わかりました。この山全部持っていっていいんですか?」とサイドデスクに山積みになっている書類を指差す。


「ああ、頼む」


「承知しましたっ」と山積みの書類をよっこらしょっと担ぎ、自分の机に持っていき、早速、仕分けを始めていた。


クロエはふと執務室を見回す。

マックスが手伝い始めてまだ5日ほどしか経っていないのに、それ以前とは違い執務室はきちっと整理整頓されていた。

(マックスは執務経験があるのだろう)…日々共に過ごすうちにマックスの人物像が見えてきていたクロエだった。







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