〈25〉
マックスが真剣な眼差しでクロエを見てきた。
クロエの鼓動がドキンと跳ねた。
「私もマックスには感謝してる。マックスがいなきゃあんな弱音吐けなかったかもしれない」
クロエは儚く笑って告げた。
「よかった。弱音が吐けて…クロエは頑張りすぎだ…」
「そうか?そんなことはないと思うけどな…」
「そんなことはあるよ。頼りない俺だけど弱音位は聞かせてくれよ」
「頼りなくなんかないよ、マックスに甘えてる自覚はあるんだ…ダメだな…」
「ダメなもんか!」
「ふふ、ありがとう。なんでだろうな?なんでマックスにはなんでも話せるんだろうな」
とクロエはコテンとマックスの肩に頭を預けた。
「ふふ、それは光栄だね!」
そしてふたりは夜が更けるまで、よく飲み、よく食べ、よく話し、よく笑った。時間が経つのが早かった。
…………………………
窓に雨がぶつかる音がする。いつの間にかふたりはソファで寝てしまったようだった。
「うんっ…」マックスが先に雨音に気づいた。
マックスの腕の中にはすやすや眠るクロエがいた。
クロエはマックスの肩に頭を預け、マックスはクロエの肩を抱いている。
マックスは眠るクロエの顔を見つめて、吸い寄せられるようにクロエの額にキスを落としていた。
クロエは額に熱く柔らかいものが優しく触れたことに気がついてゆっくり覚醒した。
瞼を上げるとマックスが驚いた顔でクロエを見ている。
「ふふ…マックス」
クロエはなんだか幸せな気持ちになってマックスに微笑んでいた。
「…クロエ…」その顔を見たマックスも幸せそうに微笑んで、今度はクロエの唇に口づけてきた。
少し驚いたクロエもマックスの口づけを受け止めていた。
「クロエが好きだ」マックスはクロエに気持ちを告げた。
「私も、マックスが好きだ」クロエもマックスに心のままに告げていた。
ふたりはその日、お互いの想いを通い合わせた。
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翌日は雨だった。ふたりはその宿場町で雨が止むのを待った。
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昨日の雨が止んで、今日は良い天気だった。
ふたりは預けておいたウイングとボイジャーを連れて街道を歩いていた。
クロエは今まで、ゆっくり街を見て歩いたことはなかった。
クロエとマックスは珍しそうに街の様子を見ながら歩いた。
馬で駆け抜ける時は、表の街道と並行に走った裏の街道を走る。
人通りの多いところは駆け抜けてはいけないルールになっていた。
そして領主の采配によって、各領地街道の整備も違っていた。
クロエは他の領主がどんな街道整備をしているのか興味津々で、あちこち見ていた。見習いたいところもたくさんあった。
「マックス、ゆっくりの旅もいいな!知らないことがいっぱいある…」
クロエは楽しそうにマックスに話しかけた。
マックスも同じだった。
「俺も…こうしてると、知らないことがいっぱいあることに気がついた」
「ふふ、楽しいな!」最近クロエはよく笑うようになっていた。
「ああ!」マックスも思わず笑って返していた。
暫く街道を散策して、裏の街道に入り、ウイングやボイジャーといくつかの宿場町を駆け抜ける。
そして、適当な宿場町で早めに宿を取り、宿場町を散策して夜は共に眠る。を繰り返していた。
そして最後の宿場町で宿を取ったふたりは、宿場町を散策し、旅人が時折り訪れる小高い丘に来ていた。
眺めが良く目の前には広く田園風景が広がっていた。遥か彼方には王都も小さく見える。
草地に座ったマックスの足の間にクロエはマックスに抱えられるように座ってふたりで周りの景色を楽しんでいた。
マックスにもたれかかって包まれている時間がクロエは好きだった。明日は王都…やらなければいけないことがたくさん待っている。
旅が終わるのが名残惜しかった。
「マックス…旅は楽しかった」
「ああ、俺も…クロエと一緒にいろんなものを見て、いろんなものを食べて、いろんなことを話して、それから…」
「それから?」
「ふふ…」マックスは意味深な笑いながらクロエを後ろからギュッと抱きしめた。
「マックスはあったかいな…いつまでもこうしていたい」と言ってクロエはマックスに抱きしめられたまま告げた。
「ああ、俺も…いつまでもクロエとこうしていたい…」
しかしクロエは、そんなことは不可能だと知っていた。お互いいろんなものを抱えている。それを放り出すことはクロエにもマックスにもできないことは明らかだった。
しばらくふたりは黙って遠くを見ながら寄り添っていた。
クロエの頭の上でマックスが「決めた…」と言うのが聞こえた。
「何を?」とクロエが聞いたが、マックスは「内緒!」と言って教えてくれなかった。
「ケチ!」
「ケチ?…ふふ、クロエがそんなこと言うなんて…ふふ可愛いな!」とマックスは言って、後ろから更にぎゅうぎゅう抱きしめてきた。
「うわぁ!やめろ!苦しい…!」
暫くふたりはその丘でふざけ合っていた。
「マックス…町で少し買い物がしたい」
「いいな!行こう」
ふたりは宿場町に戻っていろんな店を見て回った。
雑貨の店で、
「クロエ!これ、記念に買わないか?」
と緑の紐の中に金色の紐が一本織り込まれている美しい組紐を見つけたマックスはクロエに言った。
クロエも「わぁ、綺麗だな!買おう!ふふ、マックスと私の色だな…」と言って、お互いに相手の組紐を買って交換した。
「いい旅の記念になる。大事にするよ、ありがとう」とクロエは言い。
マックスも「いつか、一緒にこれで髪を結ぼう!」と言った。
ふたりは旅の最終日を心ゆくまで楽しんだ。




