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クロエ  作者: KAE


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24/63

〈24〉

サロンのソファに座り、テーブルにつまみを置き

そしてクロエは手にしたジョッキを掲げて

「お疲れ様」と言った。

マックスもジョッキを掲げて「お疲れ」と言ってエールを煽る。


クロエは「終わった…なんとも後味が悪い…首を落とされたからじゃない。彼らが処刑されたとしても、私の気持ちは…気持ちのやり場が…虚しい…。なんだか割り切れない」


マックスはクロエの隣に移動して背中を丸めて座るクロエの肩に手を置いた。


「マックス、ありがとう。今ひとりでなくてよかった」


「役に立ててよかったよ」

マックスはクロエの肩を抱き寄せた。

クロエもされるままにマックスにもたれかかった。


「マックス。明日両親の墓に行ってくる」


「俺もついて行っていいか?」


「うん、ありがとう」


しばらくそのままの姿勢でいたふたりだが、気がつたらクロエはマックスにもたれかかったまま眠っていた。


「クロエ?」


「……。」穏やかな寝息が聞こえてくる。


「ふふ、寝たのか…」


くすっと笑ったマックスは一度クロエをギュッと抱き締めそれからクロエをゆっくり抱き上げてクロエの私室に向かった。

「軽いな…」こんな華奢な体にいろんなものを背負って、凛と立ち続けているクロエがいじらしく思えた。

ベッドにそっと寝かせ、布団をかける。

「おやすみクロエ」と言って、すやすやと眠っているクロエの額にキスを落とした。

…………………………………


カーテンの隙間から朝日が差し込んできた。

クロエははっとして目が覚めた。


「あら?なんで?…覚えてない…」目が覚めたクロエはベッドの上に座り独り言を言った。


急いで着替えを済ませてダイニングに向かった。

ダイニングには既にマックスがいて「おはよう!クロエ、よく眠れたか?」と笑ってくれた。


「あ、おはようマックス。昨日は迷惑かけたかな?」


「いや、全然!ご両親のお墓に行くんだろ?さぁ、朝食だ!」


明るくクロエに話しかけてくれることがありがたかった。


…………………………


両親の墓に花を手向ける。マックスも同じように花を手向けてくれた。


祈りを捧げて、昨日の報告をした。


「お父様、お母様。またきますね」クロエは穏やかに両親の墓に語りかけていた。


マックスはクロエの真の姿を見たような感じがした。


そして、「さぁ!帰るぞ!」と振り返ってマックスを見たクロエは、いつものクロエに戻っていた。


……………………………


城に戻るとベックが帰ってきていた。


「両親の墓に行って花を手向けてきた」とクロエが報告すると


「そうですか…久しぶりに会えて喜ばれていたでしょう」と切なそうに笑っていた。


そして翌日、クロエとマックスは王都に向かった。

辺境の城を出てからしばらく走った。近くの小川でウイングとボイジャーの給水も兼ねて休憩をしている時

草地に座ったマックスが隣に座るクロエに「急ぐ旅じゃないから、帰りは少しゆっくり帰らないか?」と提案してきた。


「そうだな…急がなくてもいいんだから、たまにはゆっくり旅をしてもいいのかもな…そうしよう!」


「ふふ、決まりだな!楽しもう!俺、ゆっくり旅なんてしたことがないから…」


「そうか…マックスは都会っ子だからな…まぁそういう私もゆっくり旅をしたのは両親が生きていた頃に一度あったくらいだから偉そうなことは言えないが…ふふ。楽しもう!」


「今日は次の宿場町で宿を取ろう!」


「すぐだぞ?」


「ゆっくり旅をするんだから問題ないさ」


「そうだな…ふふ」


まだ陽が高い時間に宿場町に着いたふたりは宿を取り、宿の人に聞いた景色の良い湖に行った。


「わぁ!綺麗だな!こんなところがあったんだ…」

湖面は冬の陽射しが反射してキラキラ光っていた。


クロエは湖岸に近寄り湖に手を浸した。

「はは、冷たい!当たり前か…ふふふふ」楽しそうに笑っているクロエを見て


「綺麗だな…」とマックスの口から自然に呟きが漏れていた。


「本当だな。あんなに湖面がキラキラしてる!」

無邪気に笑うクロエもキラキラして眩しかった。



宿場町に戻り、宿に併設されているダイニングで食事をしている時、窓の外に稲妻がひかり、大粒の雨が降ってきた。


驚いて窓の外を見ると、薄暗くなった宿場町を行き交う人が雨宿りをしようと走っているのが見えた。


「早めに引き上げてきてよかったな…」とクロエは窓の外を見て言った。


「ああ、それにしても凄い降りだな…」


「ああ。止むかなぁ…」


そんな話をしていたら、雨宿りついでに食事をしようと思った旅人が次々に入ってきた。


「混んできたな…時間もまだ早いから、俺の部屋で飲み直さないか?」


「ふふ、いいね。そうしよう」


ダイニングを出たふたりは宿の受け付けにワインと軽食の手配を頼み部屋に戻って行った。


部屋で湯を浴びて、部屋着に着替えたクロエはマックスの部屋の扉をノックした。


扉が開き部屋着姿のマックスが顔を出す。

「よぉ…今、ちょうどルームサービスがきたところだ…どうぞ」


クロエは緊張を隠して「ああ…じゃ」と部屋に入っていった。


部屋の作りはクロエの部屋と一緒だった。

富裕層向けに作られた宿は、ゆったりとした空間にソファとテーブル、チェスト必要最低限の家具が配置され、小さなバルコニーもあった。暖炉には火がつけられ部屋の中は暖かい。

寝室は別になっていてその先にバスルームがついていた。


今はテーブルの脇にワインと軽食の乗ったワゴンが置いてある。


「同じだな…私の部屋と」とクロエの呟きが聞こえたのか

「どの宿もだいたい同じ作りじゃないかなぁ?」

とマックスが返した。


「そうか…急ぎの旅だと宿についても寝るだけだったから…宿で寛ぐなんて初めてかも…」


「俺もさ…4日で駆け抜ける旅にこんな宿は要らないからな…」笑いながらワインを注いだグラスをクロエに手渡してきた。


クロエはグラスを受け取り、テラスに向かってソファに座る。


マックスもクロエの隣に座り、「お疲れ」とグラスをクロエのグラスに軽く触れさせて口に持っていった。


クロエもグラスを口に運びワインをひとくち飲む。

「ふふ、美味しいな…」


マックスはワインを飲みながら軽食をテーブルに並べて「ああ、美味いな…。クロエに出逢ってから食べるものが美味いと感じられるようになったかもしれない…」と言った。


「それまでは、まずかったのか?」


「いや、そういうわけではない。…でもなんでだろうな…自然と〈美味い〉って言葉が出てくるようになったんだ」


「なんだそれ…ふふ」


「うーん。思い返せば〈ヤカンから水〉を飲ませてもらった時からかなぁ?…その後の〈粥〉のようなものも美味いと思った…」


「あー、あの時…。ふふ、あの時のマックスは酷かったな…。「生きてるのか?」って呆けた顔で言ってたな…ふふ」


「呆けた顔…って。まぁ、信じられなかったしな…」


「生還できてよかったな」


「ああ、感謝してるよ」


「それを言うならボイジャーに…だろ?」


「もちろん、あいつにも感謝してるよ。見つけてくれたクロエにも…」





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