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クロエ  作者: KAE


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23/27

〈23〉

斬首のシーンがあります。

ご注意ください。

「クロエ様。お疲れ様です!お待ちしてました!」砦に入り、ジル達に迎えられた。


「マックス!…いや、公爵様。お待ちしておりました」ジル達はマックスにも挨拶をする。


「勘弁してくださいよー。今まで通りでお願いしますよー」


「いや、しかしそう言うわけには…」


クロエがそこで助け船を出した「いいじゃないか。私も「閣下」呼びは却下された。今まで通りで「マックス」と呼んでいる。敬語も無しだ。その方が閣下は居心地がいいらしい…ふふ」


マックスも「そういう訳なんで、よろしくお願いします」


ジルは「じゃあ、マックスも我々にも は敬語は無しだ!」


「お、…おぅ。じゃ、そういうことで…よろしくな」とマックスはニカッと笑った。


「これから説明するが、もしかしたら国の文官が辺境にくるかもしれない。その時は「閣下」で頼むな!」とクロエは釘をさすのも忘れなかった。


そして「ジル。急いで、ムーンベルク陣営に〈私が到着した〉と伝えに行ってほしい」と言って用意してあった書簡をジルに渡した。


そしてその日の日暮れ頃にはムーンベルク陣営から書簡に対する返信が返ってきた。


〈明日朝、国境線でお待ちしております〉と端的な文面だった。


返信に目を通したクロエは「ジル。明日朝、小隊は国境線に向かう。準備を…」


「はいっ」ジルがクロエのいる会議室から出ていった。

ベックも「私も、様子を見てきましょう」とジルの後を追って部屋から出て行き、クロエとマックスが残された。


クロエはチラリと会議机の上に置かれたムーンベルクからの書簡を見てから、窓際に立ち大きく息をはいて陽が落ちて暗くなった窓の外を見ていた。


クロエは自分に言い聞かす(落ち着け…大丈夫だ…見届けるだけだ)と。


その時、マックスがすっとクロエの隣に立った。

「どうした?大丈夫か?」

マックスは心配そうにクロエを覗き込んだ。


クロエはいきなり目の前に現れた金色の瞳をじっと見たあと「ふふ、ありがとう。大丈夫なような気がしてきた」とマックスを見て言った。


「マックス」


「うん?」


「5年前、両親を襲った盗賊を雇ったのは…ムーンベルク王国の王弟だった…」


「え?…それって」マックスは言葉を失っていた。


「どうやら国王の失脚を目論んでいたらしい…」


「そんな…〈政争の巻き添え…〉」そうだったのかとマックスは思った。


「ムーンベルクからの慰謝料も破格だった。口止め料も入っていたのだろうな…。事件から一年後慰謝料が支払われた時に黒幕は王弟だったと知らされた。そして生涯幽閉になった…と」


「……。」マックスは黙ってクロエの話の続きを聞いていた。


「明日、〈けじめ〉をつけるそうだ…私の目の前で」


「それって…」


「ああ、多分な」


マックスは隣に立つ華奢なクロエを見つめるしかできなかった。


「…まったく。ムーンベルクも先に進みたいのはわかるが…重いな」窓の外の闇を見つめてクロエは呟いた。


よく見るとクロエは拳を握りしめていた。


マックスはクロエの握り拳を大きな手で包んだ。

クロエの拳は冷たかった。


はっとしたクロエはマックスを見上げた。金色の瞳がクロエを見ていた。


「ふっ、ありがとう。大丈夫だ…でも少しの間だけこうしておいてくれるか?」


「いいよ!ずっとこうしておいてやる」と笑った。


そしてふたりは並んで窓の外の暗闇を見ていた。


………………………………………


翌朝、クロエ達ジル小隊は国境線に向かった。


国境線といっても簡素な石垣で区切ってあるだけだった。

振り向けば、第一砦が小さく見える。


国境線の手前で小隊は止まった。


石垣の向こうには、既にムーンベルク国王軍が待機していた。

その国王軍の前に小さな木の台があった。


クロエ、マックス、ベックを乗せた三騎を先頭に小隊が止まると、ムーンベルク国王軍の中から二騎が前に出てきた。

若い金髪の男性と壮年の銀髪男性が騎乗している。


そして若い男性が馬から降りた。それに倣って王国軍の全員が馬から降りる。


(おそらく、彼が王太子なのだろう)とクロエは思った。


クロエも馬から降りた。そしてアルシェッタ軍全員が馬から降りる。


それを見た若い男性は右手を挙げた。

その後方から後ろ手に縄に拘束された金髪の痩せた男と赤毛の痩せた男が騎士に引き摺り出されてきた、そして木の台に押し上げられる。そして騎士がふたり台に上がった。

彼らは跪かされて下をむかされた。


金髪の男と赤毛の男の脇に立った騎士は剣を振り上げ、まっすぐ振り下ろした。

頭が体から離れ木の台の下に転がり落ちていった。


そして金髪の若い男性と銀髪の壮年の男性はクロエの方に深く一礼をして馬に乗り去って行った。


クロエは身じろぎもせず、目も逸らさず、一連のムーンベルクの動きを見ていた。


ムーンベルク国王軍が去って、何もない草地に戻っていてもクロエはムーンベルク国王軍のいたところを睨んでいた。


「…エ…。クロエ…」マックスの声が聞こえてクロエははっと我にかえった。


「あ、…ふっ」マックスの心配そうな顔が目に入り、思わず小さく笑った。


「さぁ!ムーンベルクの〈けじめ〉は見届けさせてもらった!帰還する!」クロエはひときわ大きく号令して、馬首をかえし砦に向かった。


砦に着いたクロエとマックスはこのまま城に戻ることにした。

ベックは、小隊と一晩過ごして帰還することにしたらしい。


城への帰還途中、クロエの口数は少なかった。マックスも敢えて無駄に話しかけることもしなかった。


次の日の夕方にふたりは城に帰還した。


湯を浴びてからダイニングに入ったふたりに会話はなかった。

出された食事を黙々と口に運んだ。


食後、クロエは執務室に入った。特に何をすることもなく執務机の椅子に座る。


そこに扉をノックする音がしてマックスがエールの入ったジョッキを2つ持って入ってきた。


「お疲れ!飲もう!」


「マックス…ふふ、いいな!飲もう!」


ふたりはソファに向かい合って座り、エールを口にする。


「ふふ、美味しいな…」


「ああ、うまいな…」


「マックス」


「うん?」


「出逢ってくれてありがとう」


「なんだよ…照れるな。ふふふふふふ」


「ふふふふふふ、なにかつまみが欲しいな…取りに行ってくる」


「じゃあ、俺も行く!」


クロエは食糧庫から干し肉とドライフルーツを出しジョッキにエールを継ぎ足しふたりは執務室ではなくサロンに向かった。















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