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クロエ  作者: KAE


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22/27

〈22〉

翌日の早朝、空が白みはじめた頃。


クロエとマックスは、ウイングとボイジャーに手慣れた様子で荷物を括り付けている。


見送りに出てきた、レオナールとエリオットはその様子を食い入るように見ていた。


準備ができたクロエは、レオナール、エリオット、バート、アンナに「じゃあ、行ってくる。見送りありがとう」と言って馬に跨った。


マックスも同じように礼を言って、そして「あとは、頼む」と付け加え馬に跨った。


レオナールは「兄上のお戻りをお待ちしてます。それまで僕のできることを頑張ります。行ってらっしゃい」と告げていた。


エリオット、バート、アンナは「かしこまりました。お気をつけて」と笑って見送ってくれている。


ふたりは太陽が登りはじめた頃、辺境領に向かって駆け出して行った。


レオナールは殆ど見えなくなったふたりの方を見ながら「辺境領へはどのくらいかかるんだろう…」と誰へともなく問いかけた。


「ボイジャー達なら4日でしょうか…」バートが答える。


「え?そんなに近いの?」


「いえいえ、馬車なら10日ほどかかります。馬なら普通7日ほどかかりますが、ボイジャー達みたいな軍馬なら4日で駆け抜けられるでしょう」アンナがニコニコして説明してくれた。


レオナールは脱力して「はぁ…みなさん凄いです。ご令嬢なのに共もなく、馬車でなく馬で旅をしてさらに4日…。兄上も楽しそうだったしなぁ…」


「レオナール様もあなたらしく力をつけてくださいませ」とエリオットは優しくレオナールに語りかける。


「そうだね。バート、アンナ。よろしく頼む」


「ふふふ、かしこまりました。お任せください」とバートがニヤリと笑った。


「その笑顔、なんか怖いなぁ…」とレオナールも苦笑いしながら、皆で屋敷に入っていった。


………………………………


コンコン。「失礼いたします」エリオットは一礼してアンジェラの部屋に入っていった。


「旦那様が今朝出発されました」とアンジェラに報告する


「そう…」アンジェラはマックスが帰還してから今日まで一度も部屋から出なかった。

義息子の顔を見るのが怖かった。

マックスの方から会いにくることもなかった。


アンジェラからはその後に続く言葉はなかった。

少しの沈黙が続いたあと、


「奥様。差し出がましいことを申し上げますが、旦那様は奥様の立場を理解してくださっております」


「え?どう言うこと?」


「それ以上は申し訳ございません…レオナール様とお話しされてはいかがでしょう…」


「そうね…」アンジェラはそれ以上は何も言わなかった。

エリオットは静かに一礼してアンジェラの部屋を辞した。


……………………………………


クロエとマックスの旅は順調だった。


初日の夜がやってきて、たどり着いた宿場町で宿を取って、食堂にやってきた。


注文を済ませたあと、寛いだ様子でマックスに話しかけた「ふふ、お疲れ様…結構進んだな!」


すると「だな!ボイジャーも力強くなったしな…」とマックスがしみじみ言うので


「半年前は死にそうだったのにな!マックスもボイジャーも…」クロエはカラカラと笑いながら頼んだエールをひとくち飲んだ。


「確かに!クロエに拾ってもらわなきゃ今ここでエールは飲めなかったなぁ」


「ふふ、感謝してくれ…ふふふ」


「感謝してるよ…お陰様でいろんな世界があることを知れた…王都にいるだけでは知ることは叶わなかったよ。生きていてよかった」


「そうだな…私も今回王都に行っていろんなことを知れた。人との交流は大事だな…」

クロエは社交で出逢った令嬢達のことを思い出していた。彼女達も自分の立ち位置でできることを模索していた。


「どうした?」マックスがクロエを覗き込んでくる。


「いや、お人形のような令嬢でも、いろいろ人生のことを考えているんだな…って思って」


「ふふ、でもきっとクロエほどではないと思うよ…」


「え?私?」


「ああ…クロエはいろんなものを背負っている…」


「それを言うならマックスもだな…」


「まぁ…そうとも言えるかもな…」


「私もマックスには感謝している。こんなに気負わずにいろいろ話せる相手に巡り逢えて…なんだか楽なんだ」


「それは光栄だな…どんどん感謝してくれ!」


「その言い方なんだかムカつくな…ふふ」


「でも本当に感謝してるんだ。クロエ、巡り逢ってくれてありがとう。俺を見つけてくれてありがとう」マックスは真剣な顔でクロエを見つめた。


「それは…こちらこそだ。マックス、巡り逢ってくれてありがとう。よく辺境まできてくれた」クロエもマックスの目を見て気持ちを告げた。


「ふふふ、乾杯!」マックスは飲みかけのエールのジョッキを掲げた


「ふふ、乾杯!」クロエもマックスに倣ってジョッキを掲げて、それからふたりは同時にエールを飲み干した。


「ぷはぁ!ふふ、なんだか楽しいな!」


「ああ!楽しい!さぁ飲もう!食おう!明日も頑張らなきゃな!」


「そうだな!」


楽しい夜は更けていった。


それから3日後、クロエとマックスは無事に辺境伯領の城へと帰還した。


ふたりはベックに迎えられ、国境の様子を聞いた。


「どうやら、陛下からの連絡が届いたようで、今はただ野営を続けているようです」


「そうか…ジルの小隊は砦にいるのか?」


「はい。ムーンベルクが砦前に陣を敷いているので、ジル達はそのまま砦でクロエ様をお待ちしてます」


「わかった。明日早朝に第一砦に向かう。それからベック、ムーンベルクは〈けじめ〉をつけたいそうだ。そのあとは友好国として交易路を開きたいと言ってきた。明日はベックも一緒に砦に行こう」そう言ってムーンベルクからの書簡を渡す。


ベックはその書簡を受け取り目を通して「そうですか…」とひとこと言ってしばらく黙ったベックは「かしこまりました。お供します」とクロエの目を見て告げた。


「マックス。疲れているところ笑いが、もう少し付き合ってくれ」


「もちろん!そのつもりで、ついてきた」


「おふたりとも、ダイニングに食事を用意してあります。まずは腹を満たして、今夜はゆっくり休んでください」


「ああ、ありがとう。マックス行こう!お腹空いた」


「ああ!俺も!」


一晩、城で休んだふたりは翌日早朝、ベックと共に国境の砦に向かって駆けた。


そして翌日の午後には砦に到着した。





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