表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロエ  作者: KAE


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/27

〈20〉

数刻の後、マックスの私室に、クロエ、レオナール、エリオットが集まっていた。


「クロエ、デイドレスじゃないか…」


「ふふ、一応持ってきた」クロエは空色に緑の蔦の刺繍のデイドレスを着ていた。


レオナールとエリオットは(それは普通のことではないのか?)とふたりの会話に疑問符がついていた。


「それよりも義母上はどうした?姿を見なかったが…」


「はい、今日は体調が優れない…と。明日、ご挨拶にうかがう…とおっしゃっておりました」


「そうか」


それを聞いていたレオナールが握る拳に力を入れたのをクロエは見逃さなかった。


そして、テーブルに用意されたお茶を一口飲んでマックスが話し出した。


「私は、外出からの帰宅途中に騎士団を名乗る男達に拉致された。気がついたら石造りの半地下の部屋に繋がれて〈前公爵を殺害したのはお前だろう〉と尋問された。否認したら〈そんなはずはない、白状しろ〉と痛い目に遭わされたよ。来る日も来る日も…ね。

だけど身に覚えのないものは否定し続けた。

いつの間にか気を失っていたらしく、気がついたらベッドに寝かされていた。誰かが助けてくれたと思ったことを覚えている。空腹だったから出された食事を食べた。最初は感じなかったんだけど、どうやらゆっくり体調を崩していたようだった。もうどれだけの時間朦朧としていたのかわからない。ある日エリオットがボイジャーを連れて起こしにきてくれた。どこをどう動いてボイジャーに乗ったのか覚えていない。ボイジャーは走ってくれた…とにかく走ってくれた。自分が毒矢に当たって苦しくても走ってくれたおかげで、クロエに見つけてもらえたんだ。ひと月後くらいにボイジャーも助けてもらった」


レオナールもエリオットも息を殺してマックスの話を聞いていた。


「クロエが僕に何が起きたのか調べてくれた…結果、僕に〈殺人容疑〉がかけられてはいなかった。〈騎士団が捕縛に動いた〉形跡もなく、僕は逃亡者でなく〈領地で療養〉していることになっていた。そして…」

マックスが話し続けようとした時クロエの手がマックスの腿に触れた。

マックスは話すのをやめてクロエの方を見る。

クロエはマックスが自分の方を見たことを確認してからレオナールの方に視線を移した。


「レオ様。私の勘違いだったらごめんなさい。何か気に病むことがあるのではありませんか?責めているのではありません。お兄様がレオ様の同席を望まれたのはあなたを信用しているからです。そしてひとりの男性と認めているからだと思います。なにより家族だからです。悩まれていることがあるのならばお兄様に相談してはいかがでしょう?お二人で話したいと言うのなら私は席を外しますよ」


マックスがレオナールの方を見た。

レオナールは口を真一文字に閉じていたが少し震え出していた。


クロエは「私は一旦部屋に戻りますね」と席を立とうとした。


「クロエ様、待ってください…一緒に聞いてください」


そう言うレオナールにクロエは頷いて静かにソファに座り直した。


暫くの間沈黙が続いたが、ひと筋の涙がレオナールの頬を伝わった時レオナールは兄の方を見て話し出した。


「兄上…僕は母上の言葉を信じたかった。母上は「お兄様は体調を崩して領地に療養に行った」って僕に説明していたんだ「元気になったら帰ってくる」って…でもお祖母様と母上が兄上のことを話しているのを聞いてしまったんだ。途切れ途切れにしか聞こえなかったけど、断片的に聞こえてきた単語が〈薬で弱らせ〉とか〈今はまだ〉とか〈大丈夫、ゆっくり死んで〉とか兄上にとってはよくない単語がいっぱい出てきていて…不安になったから母上に何度も確認した。母上の答えはいつも「元気になったら帰ってくる」だった。でも今日、兄上が元気で帰ってきてくれたのに母上は部屋から出てこない…そして兄上の話はお祖母様が言っていた事と合致する…なんで…なんで母上は…」


マックスは立ち上がりレオナールの前にひざまづきレオナールを抱きしめた。


「辛かったな…よく話してくれた。大丈夫だ…」話しながら、レオナールの背中を撫で続けた。

レオナールは肩を震わせながら声をあげずにマックスの腕の中で泣き続けた。


クロエとエリオットはレオナールが落ち着くのを待っていた。


レオナールが落ち着いたのを見計らってマックスがまた話し出した。レオナールは今度は落ち着いてマックスの話を聞いていた。


すべてを聞き終えたレオナールは「もしかしたら、父上は母上に殺されたのではないでしょうか…」


その疑問にマックスは「決まったわけではない…が、もしそうだったらレオナールはどうする?」


また暫く沈黙が続いた。

そして「そうでない事を祈ります。しかしもしそうだったならば…告発すべきなのではないでしょうか…」


「そうか…わかった。辛い事を言わせてしまってすまない」


「大丈夫です。もしかしたらその方が母上はお祖母様から解放されるのかもしれません」


「そうなのかもな…」


「兄上はご存知なのですね」


「まぁな」ひと呼吸置いて「俺は陛下からある仕事を拝命した。明後日、辺境領に向かう。だからレオナール。この家と義母上を守ってくれ」


「兄上?」


「義母上が領地の税収を増やしたいのはロベリア夫人の要求に応えるためだろう…しかしそれは認められない。なぜだかわかるだろう?」


レオナールは黙って頷く。


「ロベリア夫人はかなりの負債を義母上に肩替わりさせようとしてくるだろう。それをできる限り阻止してほしい。公爵家の資産を好きにしてもらっては困るからな」


「わかりました、兄上。お祖母様の好きにはさせません」


「頼んだよ…」とマックスはレオナールに微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ