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クロエ  作者: KAE


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19/27

〈19〉

いち早く我に帰ったエリオットが目の前の主人に

「旦那様、おかえりなさいませ」と目を潤ませて告げた。それに倣い使用人達も「おかえりなさいませ」と唱和する。


「ああ、ただいま…帰った」とマックスもエリオットに微笑んで告げていた。


エリオットの後ろからは「兄上!おかえりなさいませ!おかえりをお待ちしてました!」とレオナールの元気な声が聞こえてきた。


マックスは「レオナール!元気にしてたか?帰りが遅くなってすまなかった」と金色の目を細めて弟に語りかけている。


そんな様子を、マックスにエスコートの手を取られたままのクロエは(マックスが家族に会えてよかった)と思いながら笑顔で見守っていた。


そんなクロエに気がついたレオナールは、兄に視線を一旦戻した。


「紹介しよう。こちらは私の命の恩人であるアルシェッタ辺境伯代理のクロエ・アルシェッタ殿だ。暫く滞在していただく」


クロエはレオナールに「クロエ・アルシェッタです。どうぞよろしくお願いします」と浅くカーテシーをした。マックスが手を離さないので、それ以上は無理だった。


「弟のレオナール・ドミトスです。よろしくお願いします。兄上の命の恩人がこんなに美しい方だったなんてびっくりしました」とマックスと同じ色の髪と瞳を持つ青年がクロエに笑った。


「ふふ、とても素敵な弟さんですね。どうぞクロエとお呼びください」


「ありがとうございます。では僕のこともレオと呼んでくださいクロエ様」


「ありがとう存じます。レオ様」


挨拶は和やかに交わされた。


「クロエ、紹介しよう。ドミトス公爵家執事のエリオットだ」


「エリオットと申します。ようこそおいでくださりました。辺境伯代理様には大変お世話になったと主人より聞いております。心より感謝申し上げます」エリオットは深々と頭を下げて礼を言った。


「ご丁寧に恐れ入ります。クロエ・アルシェッタです。お話はうかがっております。あなたの忠誠があってこその今だと思っております。どうぞよろしくお願いします」とクロエは微笑んだ


「立ち話もなんだから、屋敷に入ろう!」マックスはそのままクロエをエスコートして屋敷に入って行った。


クロエはマックスにエスコートされてサロンに入った。

ゆったりと家具が配置された、素敵な空間だった。

大きな窓の外はきっとテラスが設えられ、その先は庭園になっているのだろう。


ソファを勧められて腰かける。隣にマックスが座った。そして向かいにはレオナールがいた。


レオナールは目の前のクロエに興味津々である。


暫くはマックスとレオナールのお互いを案じていた話に興じていた。


「でも、本当によかったよ…急にいなくなって〈領地で療養〉だなんて…本当に驚いたんだから…」


「ふふ、悪かったな…」


そこにティーセットをワゴンに乗せてエリオットが入ってきた。


テーブルに茶器を並べながら「お荷物はまもなくお部屋に運び終わります」とふたりに告げた。


「じゃあ、少し休んだら話をする前に着替えようか?」とクロエに聞くと


「ええ、その方がありがたいわ。ドレスはなかなか慣れないわね」とクロエは苦笑いしている。


レオナールもエリオットも(ドレスが慣れない?)と素朴な疑問を持った。


お茶を一杯飲んで、ふたりは着替えることにした。


エリオットは「旦那様、お手伝いいたします。辺境伯代理様には侍女がお手伝いのため待機しております。お部屋にご案内します」とふたりを先導して部屋を出ていった。


残されたレオナールは「すっごい美人!びっくりしたぁー!…よかった…ほんとに…」と少し俯き加減に独り言を言っていた。


クロエに用意された客間はマックスの部屋の二つ隣りだった。


「マックス?」と戸惑うクロエに


「打ち合わせし易いだろう?」とイタズラが成功したような顔で笑っていた。


マックスは久しぶりに私室に入った。懐かしい匂いがした。


「2年ぶりか…」


「はい、よくご無事で…」


「エリオット、ありがとう」


「とんでもございません、しかし辺境まで行かれていたとは…。それに、辺境伯代理様があんなに若いご令嬢だったとは…驚きました」


「ふふ、私も最初はびっくりしたよ。辺境伯領まではボイジャーが頑張ってくれた…エリオットがボイジャーを連れてきてくれたおかげだ」


話しながら着替えを進める。


「ボイジャーは?」


「元気だよ。王都の辺境伯邸に世話になっている。今はまるで軍馬のようになってるよ」


「そうですか、ボイジャーもお世話になったのですね」


「ああ、毒矢にやられてね…見事な処置だった」


そして、ブラウスシャツを脱いだマックスの背中を見てエリオットは短く驚きの声をあげた。

「だ、旦那様!」


「あ?ああ…びっくりしたろ?エリオットに助けられる前に…ね」


「そんな…」


「それも含めて信頼のおける者にだけ情報を共有しようと思う」


「…かしこまりました。お願いいたします」


エリオットから手渡されたシャツの袖に腕を通そうとして途中でマックスの動きが止まった。


「エリオット、ウチに残っている服はもう着られないと思う…辺境伯邸から持って帰ってきたものを出してくれるか?」


困ったように言う主人を見てエリオットは「身も心も大きくなって帰ってこられたのですね…辺境伯代理様にはなんとお礼を申し上げて良いのやら…」と涙ぐみ始めた。


「ふふ、良い出逢いだったと思うよ…。クロエの侍女には誰を?」


「はい、古参の…ドミトス公爵家で雇っております侍女2人をつけさせていただきました」


「そうか、よかった」


何かを感じたエリオットは「旦那様。お話をうかがう場所は、どこが良いでしょうか?」


「そうだな…ここにしよう」マックスは今いる私室を指定した。


「かしこまりました。レオナール様は?」


「あいつももう大人だ、聞いてもらおう」


「承知いたしました」



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