〈10〉
クロエ達は4日で王都に着いた。
夕方、王都にある辺境伯の屋敷に着いたクロエ達は。ウイングやボイジャー達を褒めた。
「凄いなお前達は…4日で駆け抜けるなんて。さすがだよ!」と首を叩いて褒めるとウイングやボイジャー達は興奮気味に「ブルル」と立て髪を揺らして自慢気だった。
屋敷の執事イーサンや使用人達に迎えられてアルシェッタ辺境伯邸に入る。
クロエは屋敷の者にマックスのことを「私の護衛兼参謀だ。よろしく頼む」と紹介して部屋は同じ階に用意した。
マックスが戸惑っていると「同じ階の方が打ち合わせし易いからな」と笑って告げた。
マックスにはクロエが気遣ってくれていることが多少心苦しかったがその気遣いに甘えることにした。
執事や使用人への挨拶を済ませ自室に向かいながら
「マックスもボイジャーも見違えたよ。実を言えば4日では無理かと思った」
「ボイジャーも俺も鎧が無い分消耗が少なかったですしね。クロエ様の思惑通りだったってことですよね!」
「ふふ、なんだそれ」
「否定しないんだから、当たってますよね。ふふ、ありがとうございます」
「ふふ、明日衣装室を呼ぶことになっている。マックスにも必要な物を準備するから今日は部屋に用意してあるのもので我慢してくれ」
「いえ、街に買いに行ってきますよ…そこまでしていただくわけには…」
「ふふ、遠慮するな。マックスだけじゃないんだ。個々に上限はあるが年2回必要な物を支給することになっている。衣装室と雑貨屋がくる。それにその顔で街に出たらすぐに敵に見つかるぞ。街に出るにはローブも必要だな…」
「個々に上限…ですか?」
「ああ、勤務状況とか勤続年数とか忠誠度とか…ルールがあって」
「なるほど…使用人も頑張れますね…」
クロエの私室があるフロアーについた。
軽くフロアーの案内をしてもらいマックスに用意された部屋の前まできた。
「この部屋を使ってくれ。私の部屋はあっちだ」とふたつ先の扉を指した。
「ありがとうございます」
「夕飯までゆっくり休んでくれ。食事は一緒に摂ろう」
「え?護衛がご一緒して良いのですか?」
「言ったろ?護衛兼参謀だって。ここではマックスは使用人ではない。参謀…私の側近だからな…自由に動いてくれ。公爵邸の様子も気になるだろう?」
「自由に動いていたらクロエ様の護衛の任務が…」
「ふふ、私に護衛が必要かなぁ?」
「あ、…ですね。失礼しました」
「必要だと思ったら言うから…」
「かしこまりました。ありがとうございます」
「じゃ、使用人が呼びにくるまでゆっくり旅の汚れを落としてくれ…あとでな」
と言ってクロエは自室に向かった。
マックスは用意された部屋に入った。
部屋は無駄な装飾はないが必要な調度品は揃っている居心地の良さそうなマックスが好む部屋だった。
居室には小さいが執務机もあった。寝室にクローゼットにバスルーム。ここでもクロエの気遣いを感じた。
「ありがたい」マックスはひとこと呟いてバスルームに向かった。
クロエも自室に入りバスルームに向かう。
とにかく今は埃っぽい体を洗いたかった。
さっぱりしてクローゼットに向かう。
ふと、淡い黄色のドレスが目に入った。
「まだあったんだ…」そっとドレスを撫でてみた。
なにも知らなかった5年前の自分を思い出した。
両親が揃っていて、社交界にデビューしたばかりで浮かれていた気がする。両親も「そろそろクロエの婿も探さなきゃいけないな」と笑っていた。
「それにしても、随分可愛らしいデザインだったんだな…」オフショルダーの襟周りにはフリルがあしらわれて逞しい肩や腕を隠すために苦心したことを思い出した。
「ふふ…」とクロエはひとり笑いながら、何か今の自分に合うものはないか…と物色した。
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使用人に〈夕食の用意ができました〉と伝えられダイニングに向かった。
マックスもちょうどダイニングに入って行くところだった。
「マックス、少しは休めたか?」と声をかける。
マックスが振り返った。
ふたりは向き合ったまま目を見開いていた。
イーサンが「マックス殿、申し訳ありません。やはり少し窮屈そうですね。明日、衣装室が参りますので体に合ったものを用意いたします」と言ってきた。
マックスは白いドレスシャツと黒いパンツ姿なのだが、ドレスシャツのボタン上3つは胸板が邪魔して止められない。肩も窮屈そうだ。黒いパンツも腿の辺りが窮屈そうだった。
「体が大きくなったみたいだな…領地にいる時には感じなかったが…」とクロエが苦笑いしながら言うと
マックスはハッとしたように我にかえってから「以前は同じサイズの物を着ていたと思うんですが…」と照れ笑いをしていた。
そして「クロエ様のデイドレス姿は初めてですね」
敢えてデイドレスと言ったのは過去に夜会用のドレス姿を見たからなのだろう…。
「あ、ああ…久しぶりに着たよ。私も明日は動き易い物を何着か頼もう…」
「なるほど、昔は普段そのような姿だったのですね!」とマックスはクロエを揶揄うように微笑みながら言った。
「まぁ、昔はな…さぁ食事にしよう!お腹が空いた!」少し頬を染めてクロエは照れ隠しをするように元気に言った。
「ふふ、はい」マックスも微笑んで
ふたりはダイニングに入っていった。
食後、ふたりはクロエの執務室に向かった。
「ここにいる者はマックスの正体を知っているから、困ったことがあったら相談してくれ」と改めて3人を紹介した。
旅を共にしたバートとアンナ夫妻。そして屋敷の執事のイーサンだった。
「閣下に改めてご挨拶申し上げます。微力ながらお力添えをさせていただきたく存じます。なんなりとご用命くださいませ」とマックスに礼をした。
後ろではバートとアンナも礼をしている。
「ありがとうございます。もう十分していただいております。アルシェッタ辺境伯家には感謝の念が絶えません。もうしばらくご助力いただけるとありがたいです。よろしくお願いします」とマックスも礼をかえしていた。




