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自称近衛の尻揉み魔は、実は……って嘘だろ?

遅くなり申した。

 無精髭男が、ご機嫌に私を抱きかかえて歩きながら、お尻を揉んでくる。


 ぐはっ……。「放せっ!このスケベ!!」と言って頬を殴り飛ばしたい衝動に駆られるが、弱み握られてしまっているので、現時点では手も足も出ない状況だ。


 しかも、前方にはラハグローさんが居るので大きな声も出せない。


 何この、前門の虎後門の狼……的な状況は?


 はぁ……。私は一体何をやっているのかしら?


 こんな事になるなら、大人しく部屋で寝てれば良かった。

 後悔は先に立たずって、本当ね。


 気を抜くと、常時私のお尻を揉んでくる無精髭男の手を、つねったり叩いたりしていると、ラハグローが立ち止まる。

 どうやら目的地に着いた様だ。


 ラハグローさんは、無駄に豪華な扉をコンコンとノックをした。


「アルビオレ様?フラクタル様がお見えで御座います……」


「おお、そうかっ!いらっしゃったのか!速く入って頂け!」


「では、失礼します……」


 ラハグローさんが一礼して扉を開けると、満面の笑みでアルビオレが無精髭男……改め、フラクタルを出迎える。


 おい、そんな憧れの人に会えたみたいな、嬉しそうな表情をするな!

 お前も尻を揉まれるぞっ!?って、それ良い!ナイスなプレイ!

 くふふふ腐腐腐♪


 ああっ!でも、フラクタルは男の尻は揉まないとか何とか言ってたっけか?

 チッ…揉めよそこはっ!揉みしだいとけよっ!

 尻の伝道師の名が廃るぞっ!


 ……………まぁ、尻の伝道師って、何だよ?って話だが。


「おう、アルビオレ!久し振りだなぁ~。元気だったか?」


「はい!騎士団長っ!私は元気でしたっ!」


 おっ?アルビオレの奴……いっちょまえに『私』なんて一人称使ってやがる……。ぷぷぷ………って………ん?おい、いま何か凄い偉い肩書きがアルビオレの口から出なかったか?


 騎士団長とかなんとか?まさか…ね?この尻揉み魔の事じゃ無い…よね?だって女性の尻を揉むんだよ?変態だよ?ただの近衛の平団員だって言われても、あり得ないと思った奴ですよ?


 きっと私の空耳だよ。うん。

 アルビオレはキモい団長、略して(?)キモ団長と、言ったんだよ。きっと。


 ああっ!ダ…ダメだ……結局団長って言っちゃってるしっ!


 待て待て…冷静になれっ!私は1度冷静になるため、この国の騎士団の内訳とかを語ってみる。



わっ…我が国では、騎士団と呼ばれるのものが、大まかに分けてみっつあります。


 ひとつは国境騎士団……読んで字のごとく、国境の警備を任されている。屈強な兵士が揃い踏み。マッチョ好きには堪らない騎士団。えふえふえふ腐腐………。


 ふたつめは王立騎士団……。一番人数が多くてメッチャ沢山居る。主に王都以外の町の警備を担当している。

 ガリからポチャまで選り取りみどり!年齢層は青年から中年、果ては老年まで何でもゴザレ!貴方の好みの年齢層や体格のカップリングが、きっと見付かる筈。でゅふでゅふでゅふ腐腐……。


 みっつめは近衛騎士団……。これも直ぐに分かるわよね?王族の警護と王都の警備を行っている。人数が他の団よりは少なくて、入団しているのは貴族の子弟が殆んどの割合を占めてる。

 高貴な高飛車萌えの人以外には…あんまり好かれて無いわね。


 王都の警備をしていると言っても、貴族の住んでるエリアしか巡回しないからね。

 平民が住むエリアとか、スラムエリアは自警団に丸投げなんだよね……。だから他の団より圧倒的に人気は無い。

 まあ構成している奴等がぼぼ貴族だからね~。

 平民の安全とか知るかっ!て事でしょ?ケッ!




 ……この品位の欠片も無い変態は、自分で近衛だと言っていたから、近衛騎士団長だと思う。

 しかし近衛とはいえ、こんなのが団長なのか。世も末だな。近衛の腐敗ここに極まれりって感じだ。



 私が落ち着きを取り戻しながら、そんな事を思いゲンナリしていると、フラクタルが余計な事をアルビオレに言っていた。


「なぁなぁ、アルビオレ~。俺様さぁ~ここに来るまでに、面白い奴をひろっちゃってさぁ……」


「面白い…奴……ですか?」


 私はマントに隠れたフラクタルの腕の中で、ビクッと震えてしまった。


 おい。まさかな?私の事じゃ無いよね?


「ああ……この侯爵家で投身自殺をしようとしていた、面白い奴だぜぇ~」


「ええっ?そんな不届き者が、当家に?」


 うっぎゃ~~~~~。まさに私の事だった!フラクタル~堪忍してぇっ!もう尻揉み魔なんて言わないから、な?


「ほれっ!コイツだぜぇ~ヒャハハハハ!」


 フラクタルは愉快そうに、マントの合わせを開いた。



 その瞬間、私は電光石火の勢いでマントの中を横に移動して、フラクタルの背後に回り込んだ。

タイゾーじいちゃんの故郷の言葉で、火事場の馬鹿力というやつだ。


「あのっ……団長……誰も居ませんが?」


 私は怪訝そうなアルビオレの言葉で、何とかバレずに逃げるのに成功したのだと確信した。


 はぁ…ふぅ…ひぃ…ふぅ……。だがしかし…この体勢、超キツイ!!


 病み上がりで死にかけた私は、体力がほぼ0に近いのに、自分の腕の力だけでフラクタルにしがみ付くのは、直ぐに無謀だったと理解した。


 だって腕がっ……腕がもう限界……。プルプルなんて可愛らしいもんじゃない……ガクガクしてるっ!


「んっ?何を恥ずかしがってんだぁ?そんなに怯えなくても、俺様がアルビオレに言って取り成してやるぜぇ~。首にしないでくれって………よっとぉっ!!」


 フラクタルは優しげにそう言うと、必死に背中に張り付いている私を、有無を言わせずに引き剥がすと、アルビオレの眼前にストンと下ろしたのであった。




 驚きと驚愕に両目をこれでもかっ!と見開いたアルビオレに、私が言える言葉は、ただひとつだけであった。




「……………やっ……やっほーー………………」







人はもう本当にどうしようも無くなると、何かどうでも良い挨拶とかしませんか?


小生はそんな時はいつも挨拶で誤魔化していました。1種の現実逃避ですかね?


皆さんはどうですか?どうしようも無くなる事なんかねぇよ。という方は、コレまで生きてきて、とても素晴らしい人生だったのですね。

羨ましいです。(ハンカチを噛む程度には)



ノロノロ更新ですが、まだ続くので生暖かい目でご覧下さると、有り難いです。


ブクマや、評価して下さる方有り難う御座います!

いつも執筆の励みになっております。









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