アルビオレ思考停止
お待たせしました。アルビオレ視点です。
間を空けすぎて、作者自身も混乱しています。
変なところは見て見ぬふりがマナーです。
驚いた。心底驚いた。余りの驚きに一瞬思考停止状態に陥ってしまった。
意識が戻らなかったツェリが目を覚ました。
ツェリが意識が無い時に何度も…何度も名前を呼んだ。手も握った。
何故俺はこんなにも彼女を心配するのだろうか?
目を覚まさないとマオカが俺を呼びに来てどれ程の時間が過ぎただろうか。
一向に目を覚まさないツェリを間近で見ているのは辛かった。
段々顔色が青から真っ白になってゆくツェリに、俺はろくに眠らずに付き添っていた。
マオカやリグレット、ラハグローなどがそんな俺も心配げに見守っていた。
刻々と時は過ぎ去り、ツェリが意識を失ってそろそろ3日経とうとしていた。
医師が言うには今夜が峠だと言っていた。もう3日もツェリは何も食べていないのだ。
命の危険がある。
俺は必死に今までは信じていなかった神にまで祈った。ツェリを連れて行かないでくれと。
彼女の両手を必死で握りしめた。
そして俺も意識を手放した。
ここ数日寝てないのだから当たり前だが、限界が来た様だ。
意識を失う間際も俺はツェリの両手だけは離さなかった。
****
懐かしい夢を見た。
幼い頃の俺は父上のいう通りに過ごしてきた。
父上が恐ろしかった。自分の身分が恐ろしかった。父上の築き上げた物を俺が壊して仕舞うのでは無いかと、何時も誰かの顔色を窺っていた。
まあそんな事、誰も気付いて居なかったようだがな。
貴族学院に入学すると、周りの期待の目が更に大きくなった。
流石は武門の名家の血筋と言われ、俺の影の努力は無かったものにされた。
期待以上に嫉妬もされた。
だが何ともない風を装って蹴散らしてやった。
貴族学院でこの国の王子と仲良くなった。ナイアスとはなぜか性格は反対なのに馬は合った。
ナイアスに振り回されるは、実はそんなに嫌いじゃない。
ナイアスのお陰でルルに…初めて愛しいと思った女性に出会ったからだ。
ルルを連れて邸に帰ったら、父上はどの様な反応をなさるのか。確かめてみたかった。
それに初めて自分で選んだ。誰の命令でも無く、自分でだ。
だから…ルルを、彼女を離れの邸に連れ帰った。
結果は父上の大激怒と、周りの者達からの苦言の嵐だったのだが。あそこまで怒った父上は見たことが無かった。
それから少しして、父上が病に倒れた。療養するために領地に向かう事となった。
蒼白な顔色の父上が別れ際に言ったのも、ルルへの否定的な言葉であった。
父上は俺が初めて自分で選んだ事に全く取り合ってはくれず、怒ったり否定されたりして、更に俺は頑なになった。
俺は更にルルにのめり込んだ。
もちろんルルの我が儘も分かってはいた。
いたのだが、その我が儘振りも幼い頃から、何も自分の意見を言えずに居た俺には、眩しく写った。
ただ……それは間違いであったのかもしれない。
俺の周りからは一人、また一人と人が居なくなった。
幼い頃抱いていた恐怖が実現したのだ。
父上の築き上げた物を壊してしまったのだと。
それからは後に引けなかった。俺は本当に駄目な奴なんだ。何か大きな変わる切っ掛けが無いと。変われない。
その切っ掛けは何時も冷静な家令のラハグローがもたらした。
ツェツィーリア……。ツェリだ。
初めて会った時は彼女の清廉な美貌に見惚れた。
単純に美しかった。
その後口を開いたツェリは変わっていた。俺に……結婚した相手の俺に愛妾が居ても構わないと言う。
何故だ?
初めて見た時は清廉な美貌と思ったが、口を開けば意味不明な事ばかり言うツェリから段々目が離せなくなっている。
俺にはルルという愛しい人が居るのに。
だがふと、本当に俺はルルが愛しいのだろうかと自問した。
愛しい…愛しい筈だ…。
!!!
筈だとは、何だ?
混乱する。分からない。どうすればいいのだ?分からない!!
頭を抱え込んで微動だに出来なってしまった俺の耳に妙な音が聞こえてくる。
ぐうぎょるるるる~。って、一体何の音だ。獣のうなり声か何かか?
その音の出所が気になり、探ってみる。その奇妙な音は、上の方から聞こえて来るようだ。
ゆっくりと動き出した俺は上に向かった。
***
フッと辺りが軽くなる。ボソボソと人の話し声が聞こえて来る。どうやら夢から目覚めたみたいだ。
マオカと……ツェリが会話しているらしい。ツェリ…無事に意識を取り戻せたのか。
本当に良かった。心配していた。とか直ぐにでも言い出したかったが、二人の話す話の内容がやけに重い。
話の深刻さから、俺が自分の覚醒を告げられない間にも、二人の会話は続く。
どうやらマオカが罪の意識から、ラグネイル監獄砦に行くとツェリに言っているみたいだ。
ツェリは言葉を話すのが辛いようだが、必死にマオカの説得をしている。危うく自分が死にかけたのに、マオカの心配をしている。
本当に凄い女……というよりも、変な女だ。
「それでも…行くと言うのならば………………私を……倒して行きなさい………………」
はあっ?倒して行けって…アホか?マオカは戦いのエキスパートだぞ?ツェリなんか瞬殺だぞ?
俺が驚いていると、オロオロしたツェリの気配が漂ってくる。
どうやら言い間違えただけのようだが………。
ははっ。何を言い間違えたらそうなるんだよ。くくくっ。
つい堪えきれずに俺は笑い声を上げてしまったのであった。
それと、俺が夢の中で聞いた妙な音の正体はツェリの腹の音だった事が判明した。
そしてまた俺は笑ったのであった。
マオカにツェリの食事を取りに向かわせた後、突然ルルが部屋に入って来て、病み上がりのツェリに向かって金切り声で叫んだのである。
「このっ!泥棒猫っ!!!」
と。
驚いた。心底驚いた。俺はまたもや一瞬思考停止状態に陥って止まってしまったのであった。
間が空きました。お久しぶりです。
他の話を書いたり、積みゲー消化したりと忙しくて……(言い訳)
申し訳御座いませんでしたぁぁぁ~Orz