犯人は誰だっ!?
予想外に話が長くなっちった。そして、終わりが見えない。
気が付いたら私の身体はフワフワと宙に浮いていた。辺りは臼ぼんやりとしていて、よく見えない。
脚を動かすが空を切るばかりで、進むこともままならないのだ。
浮いている体勢でしばし考えてみると、直ぐにある考えにたどり着いた。……これは夢であると。
その答えに辿り着くと、落ち着いて居られるから不思議なものだ。
私は辺りが見えづらい事をいいことに、そのまま居眠りをする体勢に入った。夢の中でも寝る…。最高の贅沢である。
私がウトウトし始めると、遠くから「ちょっと!ちよっと~!」と、呼ぶ声が聞こえて来るが、眠いので…パス!!そのまま無視をしていると、今度は直ぐ側から「この子はっ!何故無視するのかねぇ?ヤダヤダ…こんな子に育てた覚えは無いよっ!!」という怒った声が聞こえて来る。それでも無視をしていると、頭を叩かれた。
「あたっ…痛たたっ…………」
結構な力で叩かれたので、流石の私も無視できなくなり目を開けてしまったのだが、私の眼前に居たのは亡くなった祖母であり、ランペイジ子爵家の女傑と恐れられたエミリア・ボルト・ランペイジその人だったのです!
「ひっ…ひょえええ~!!おば…お婆ちゃんっ!!
えっ?これ、私の夢だよね?なん…何で…?」
「何でもくそも無いよっ!!全くあんたときたら、何度も呼んでるのに無視してっ!とんだ孫だよっ!私が呼んでやらなかったら、今頃あんたは完全に死んでたんだよ?」
「へっ?し…死んでたって、どういう事なの?」
「どういう事って……あんた、今半分棺桶に片足突っ込んでる様な状況なのよ?」
なっ……?突然現れたかと思ったら、何を戯言を仰いますのやら?亡くなったにも関わらず、ボケ始めたのではなかろうか?若干心配になって来た。
「………お婆ちゃん、私の夢の中までわざわざ来てくれてありがとう……でも、ボケてしまったんだね?今のタイゾーじいちゃんと良いコンビになると思うよ、きっと………。あれっ?両方ともボケって大丈夫かな?駄目な予感しかしないんだけど……」
「いや、あんたの夢の中じゃないから。ここは死んだ人が集まる世界…死後の世界と、現世の境目だから……本当にアホな発言してる場合じゃ無いのよ?あんたは現世に戻らなきゃならないのよ?」
死後の世界と現世の境目!?えっ?本当に?私の夢の中じゃないとすると、死んだから浮かんでるって事?
「私……死んだの?ええっ!?いつの間にっ??まだ今年の魅惑のモロコシOVを食べて無いのにっ!それにアルビオレと王子の恋模様を、盗み見るという崇高な野望がっ!これからが良い時なのにっ!!」
「ちょっとは落ち着きなさいっ!あんたはまだ完全には死んで無いって、言ってるでしょうがっ!全く冷静に物事を考えなさいと、教えた筈なのに……ライゼンの悪いところが濃く出てるわね……。あの子は本当にねぇ…全く情報を自分が有利になる為に使うんじゃなくて、楽しむ為に使うからね…。ある意味質は悪いのよね…はあ…………」
おうっ…父よ、すまねぇ…そっちに祖母の不満が飛び火した様だ。だけどそのお陰で、私は少し冷静になれた。多少は父に感謝しよう、多少は…ね。
「ゴホンッ…。お婆ちゃんっ!!続きを聞きたいけど、良いかな?」
「んっ…?あ、ああ、良いよ。あんたも少しは落ち着いた様だね?私も話を元に戻すとするかね」
「脱線してたって認識はあったんだ…」
「まあね。で、続きを聞きたいんだろ?」
「うん。まあ、でもさっきお婆ちゃんが教えてくれた事を纏めると、私は完全には死んで無いけど、死にかかってる……って事でここまでは大丈夫?」
「そうだね…聞いてないと思いきや、結構聞いていたんだねぇ?」
「うん、まあね。って、そもそも私は何で死にかかってるのかしら?はっ…まさか侯爵家に恨みを持つ刺客に、狙われたとか?それとも私の存在が疎ましい何者かの陰謀か…?う~ん…………」
私の存在が疎ましいと思ってる人物なんて、心当たりが無いのだけど……イや、待てよ?あっ!一人だけ居たわ。王子が………。という事は、東屋での事を疎んで私を亡きものにする為に?ヤバイッ!そこまで王子のアルビオレへの愛は深かったのか?見くびっていた…。
確かに私はお邪魔だったのでしょうけど、まさか亡きものにされる程に疎まれて居たとは……気づかなんだっ!!反省…いえ、猛反省せねば。
「ちょっとちょっと……長いこと考え込みながら頷くって、あんた自分が殺されかかる理由に思い当たりでもあったのかい?」
「ええ………。人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやらっていう奴です……」
「はあっ?いきなりなんだいそりゃ?」
「あれっ?お婆ちゃんは知らないの?タイゾーじいちゃんの故郷の言葉で、他人の恋路を邪魔する奴は馬にでも蹴られて死んでしまえ……だか、殺してやるだかって言葉があるって教えてもらったんだけど?」
「録な事を教えないね?あの人は………」
「お婆ちゃん……なんだか嬉しそうだね。タイゾーじいちゃんの話はやっぱり嬉しいの?」
「そりゃあ…まあねぇ………って、今はその話はどうでも良いのよっ!それよりもあんたを現世に戻さなきゃならないのよっ!」
「照れた~!照れて話を誤魔化す気だ~!痛っ!」
茶化してたら額に良い拳を一撃お見舞いされた。夢みたいな世界なのに、叩かれると痛いとはこれいかに?
痛む額をさすりながら話を聞く事になった私であった。
また妄想が暴走してます。犯人は………って、犯人と呼ぶのは可哀想かな……いや、本人悪気無いですしね?皆さん分かってますね?いや、分かってないのはツェリだけですけども。
次で臨死体験は終わる筈です。筈ですよ?




