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第五話 元女勇者、入学を決意する


───レンが初めて魔物を討伐した日から、数日が経過した。

初めて魔物討伐に出た新米冒険者2人が大量の魔石を持って帰ってきたという話はギルドの間で話題になったが、幸か不幸か話題に欠かないギルドでは三日もすれば忘れられ始めていた。


もう少し話題になると思っていたレンは、自身の通っているログレス学園での授業を終えて今日も変わらずギルドへ出向く。

そんな中、一つだけレンの周りで変わったことがあった。


「───レン!」


レンがギルドに入った途端ボリュームのある亜麻色の髪を揺らしながら駆け寄ってくる彼女、カリンの存在だ。

レンはカリンとの実力差を感じていたし、元々即席だったためパーティーはそこで解散になるものだと思っていたが、まさかのカリンからのパーティー継続のお願いが来た。

無論、断られる側だと思っていたレンはこれを承諾。あらためて、レンとカリンはパーティーとなったのだ。


「(......それにしてもカリンさん。出会ったときと結構印象変わったなぁ......心を開いてくれたってことなのかな?)」


パーティを組み直してからというもの、カリンの様子は一変した。

端的にいうと、よく笑うようになったのだ。

それは彼女の心境の変化によるし、本来の性格はこっちなのだが、彼女の過去を知る由もないレンはカリンも自分と同じで引っ込み思案だったのかな、なんて勘違いをしていた。


「カリンさん!お疲れ様です!」

「お疲れ様。───ふふ、レン」


適当な席に着きながら、カリンが楽しそうに話し始めた。


「はい?」

「もう君と私の仲だ。いつまでもそうかしこまらないでいいんだぞ?友人みたいな距離感で接してくれていい」

「あ、あはは......でも僕、友達が居ないので距離感もあんまり......」


自虐気味にレンが話すが、カリンは驚くわけでも悲しむわけでもなくただ頷くだけだった。


「ふむ、君のような勇敢な人間を放っておくなんてもったいないな」

「いや、そんな......」

「───だが、生憎私も友人と呼べるような関係は持ち合わせていなくてな。どうかな?良ければ友人『みたいな』ではなく、友人関係を結ぶというのは」


友人関係を結ぶという、なんとも十余りの少年少女からは聞こえることのない言葉だが、これまで友人と呼べる関係を持ったことが無かったレンにとってはこれ以上なく嬉しい言葉だった。


「ゆ、友人......!いいんですか!?」

「もちろん。私も嬉しい限りだよ」

「えへへ......じゃ、じゃあ......カリン......」


家族以外でレンは初めて他人を呼び捨てで呼んだ。

いや、家族どころか彼の妹以外で呼び捨てで呼ばれたものはいなかった。

そんな彼の、勇気の一歩。


「───......っ!!」


だが、その一歩はカリンにとっては大きすぎた。

レンは歩み寄ったつもりが、カリンからすればタックルでもするのかと言わんばかりの一歩だった。


「なんて、いきなり呼び捨ては早かったですかね、へへ......───カリンさん?」

「───ふ、ふふふ......い、いきなり呼び捨てとは大胆だな」

「す、すみません......」

「いや、いいんだ。そのまま呼び捨てで頼む。敬語も無くていい」

「わ、わかっ、た......!」


あまりにもレンが敬語以外に慣れていないので変な話し方になっているが、これはすぐに慣れるだろう。


「ふふ」

「な、何かおかしかった?」

「いやなに、ふと考えてみたんだが、今まで私を呼び捨てで呼んだのは君で4人目だと思ってな」

「ええ!?そんな大事な人たちの中に僕が入っちゃっても......いいの?」

「ああ、もちろんだ。私はこんな口調だから少し委縮させてしまったかもしれないが、君にならなんと呼ばれても構わない」

「......あ、ありがとうカリン!」


そしてより仲が深まったところでカリンがふと、思い出したかのように話題を切り出した。


「ところでレン」

「どうかした?」

「君はいつも午後にギルドに来るが、午前は鍛錬しているのか?もしよかったら私も一緒に......」

「あれ、言ってなかったっけ?僕、学園に通ってるんだよ」

「学園?」


『学園』という言葉にカリンは首を傾げた。


「あれ、カリンほど強い人ならてっきり学園にも入ってると思ってたけど......違った?」

「いや、私は入学してないな。そもそも入学試験すらも受けていない」


カリンがタイムリープしたのは一週間ほど前。

ログレス学園の入学試験はそれよりももっと前に行われていたので、今のカリンは試験のことなんて知る由も無かった。


「ええーっ!?でも、カリンくらい強かったら学園に入らなくてもいいのかな......」

「どうだろうな。入らなかったことを後悔したことも無いが......レンはそのログレス学園?の生徒なんだろう?」

「うん、そうだよ」


レンの返事を聞いてカリンが考え込むが、それもほんの一瞬だった。


「......よし、決めた!───レン。私もログレス学園に入るぞ!」

「か、カリン、入学するの!?」


レンが驚いた反応を見せたのは、てっきり入る気が無いと思っていたからだ。

ログレス学園は来るもの拒まずの姿勢で未来の冒険者や学者、魔法使いなどを育てる場所だ。そのため、入学するだけなら試験などは必要ない。

だから、ログレス学園への編入というのは極めて珍しいことだった。


「ああ、君の見ている景色を私も見てみたくなった!それに私とレンは一つしか離れていないのだし、恐らく編入の条件は満たしているだろう?」

「う、うん、多分大丈夫だと思うんだけど......」

「なら早速、明日にでも手続きをしてこよう。───ははは!レンと同じ学園に通えるなんて、思ってもいなかったぞ!」

「(多分、学年は一緒じゃないと思うけど......まあ、いいのかな......)」

「それにしても......学生か。初めての響きだな......!」


これから始める学生生活に胸を躍らせるカリンと、これまた同じくカリンの強さがどれだけ学園で通用するのかとわくわくしているレンがいた。


「ところで、これまでカリンは午前中どう過ごしてたの?」

「ん?鍛錬をしてたぞ。その後はずっと君を待っていた」

「ええ......」

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