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第二話 新米冒険者、はじめてパーティーを組む


「お疲れ様でした!こちら、今回のクエスト報酬になります~!」

「ありがとうございます......!」


駆け出し冒険者のレン・アスターは、今日もクエストをこなしていた。

王都最大の教育機関、ログレス学園に籍を置く彼はDランク冒険者として日々研鑽を積んでいる。


「あ、そうだ、レンさん!」

「は、はいっ」

「レンさんはギルドに入ってから、Dランクの中でもお手伝いのようなクエストばかり受けてますけど、魔物退治とかは興味無いですか?」

「ええと......その」


レンがギルドに入ったのはひと月前。それから受けたクエストは年老いた老人のかわりの力仕事だったり、薬草の採取、子どもの世話など冒険者の仕事としては少し味気ないものだった。

その腰に差した学園からの入学祝いは、授業と鍛錬以外ではまだ一度も振ったことが無い。


「憧れはあるんですけど......どうしてもちょっと怖くて......はは」


まだ駆け出しのぺーぺーなのだ。実技の成績も中の下のレンにとって、魔物の知識こそあれどその姿はまだ遠目で見たことがある程度の存在だった。


「やっぱり初めては怖かったり緊張しますよね~、そういう時は!同じ志をもつ仲間を募ってみるのもいいですよ!」

「仲間......ですか」

「はい!自分と同じくらいの年齢の人とか、レンさんは学生なので同じクラスのお友達とか!冒険者として生きていくならこの先いろんな人と関わることが多いですし、今のうちにパーティーを組んでみるのは良い経験になると思います!」


一般的な常識として、難易度が高いクエストになるにつれ役割を分担した方が生存率が上がるため冒険者たちはクエスト毎にパーティーを組むことが前提になっていた。

もちろんレン一人前の冒険者を目指す身として仲間という響きに憧れはある。だが、やや内向的な彼の性格では、声を掛けるのは中々できずにいたのだ。

しかし、今回は明確な目的もあるし、なにより受付嬢の言葉が彼の背中を後押ししてくれている。


「た、確かに......わかりました!えっと、そのクエストって受注期間はいつまでですか?」

「あと......5日後ですね!クエストは保管しておくので、どうしても難しそうとかだったら教えてくださいね!」

「は、はいっ!」


───それから、4日が経過した。

クラスメイトに声を掛けようとした回数、4回。

ギルド内で声を掛けようとした回数、2回。

いずれも声を掛けるまでに至れず、レンの内気は受付嬢の想像を上回っていた。


「うーん......せっかくクエスト取っておいてもらってるのに、誰も誘えてない......」

「レンくん、頑張って......!」

「はい......」


数多の失敗(この場合は声を掛けるところまで発展していないので、失敗未遂ともいえる)は、すでにレンの心にヒビを入れそうになっていた。

辺りを見渡せども、レンの目に映るのは自分より年上で強面の男ばかり。

せめて同年代は居ないものか......と目が合わないように人を物色していたところ、窓際のテーブルに座っている見慣れない後ろ姿が目に付いた。


「あんな人......いたかな」


職業柄男が多い冒険者の中で、後ろで纏められたボリュームのある亜麻色の髪が目立って見えた。

椅子に立て掛けられた剣、何も置かれていないテーブル。

そして、彼女は窓の外を見ているのだろうか。

ただ座っているだけの光景が、ギルドの中を漂う喧噪の中でひと際異様な雰囲気を纏っていた。


「すみません、あの人って......」

「カリンさんね、彼女も冒険者よ!最近ギルドに来た、あなたと同じ駆け出しの冒険者なの」


駆け出し、新米。そういう言葉を待っていた。

しかも、受付嬢さんのこの言い方。もしかしたら自分の方が先輩なのでは無いだろうか。


「......ただ、まだ何の依頼も受けてないし、ほとんど話しているところを見たことが無いから、これ以上の情報は無いわね......」

「(もしかしたら、僕と同じで人見知りなのかな......)」

「わかったわ、頑張って......!」


深呼吸をして一歩、二歩と歩き出す。

彼女は窓の外を見ているようでこちらには気が付いていない。

激しく鳴る心臓の音を体全体で感じながら、彼女の横から声を掛ける。


「あ、あのっ......!」

「......何か?」


声を掛けると、カリンが振り向いて目が合う。

同年代か少し年上だろうか。整った顔、切れ長で凛々しい印象を与えるその目には、青い硝子玉のような瞳が入っている。

しかしその眼はくすんでいて、どこかこちらを見ていないような視線はレンの身体をこわばらせた。


「あ......えと......」

「......?」


両手を握りしめ、勇気を振り絞る。


「そ、その......ぼ、ぼぼ、ぼくと......ぱ、ぱ、パーティーを組んでもらえませんか!?」


言い切った。後は相手から返事をもらうだけ。

だが、カリンは返事をせずに再び、窓の外へと視線を向ける。

レンが張り裂けそうな程に強く鼓動している心臓の音を感じながら彼女の返事を待っていると、少ししてカリンがこちらを向いて口を開いた。


「......分かった。私で良ければ力になろう」

「ほ、ほんとですか......!」

「......ああ、何か同行してほしいクエストがあるんだろう?......とりあえず座ってくれ、話を聞こう」



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