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悪役転生  作者: こすもす
悪役
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悪役転生第52話 会談


「和睦について話す前に、

一つ聞かせてくれないか?」


会談を始めようとした矢先、

国王ニュートが唐突に尋ねてきた。


「何故君たちは、我々と戦ったんだ?」


何故って・・・


愚問に思えたが、彼の顔を見るに、

どうやら本当に不思議に思っているらしい。


一応答える。


「・・・“そちら”が、我々を滅ぼそうとするから、

ですよ?」


「ああ、いや。そうではなくてな。

私が言っているのはグラディオの件だ。」


グラディオ・スペリオス。

僕たちが倒した、人を鎧に変える白騎士。


「君たちは、彼を手紙で呼び出したうえで

倒している。」


「これは身を守るための迎撃ではない。

何故こんなことを?」


「約束、だったからです。」


「約束?」


「はい。仲間の一人が鎧計画に巻き込まれ、

故郷の家族や友人を大勢亡くしました。」


「彼女を仲間にする条件として、

鎧計画を止めただけですよ。」


「・・・そう、だったのか。」


数秒の沈黙。その後再び口を開く。


「済まなかった。と、言うべきなんだろうな。」


こう前置きしたうえで続けた。


「だが、謝罪はできん。国王として、

鎧計画の承認が、少なくとも間違いだったとは

思っていない。」


「戦争はいつ始まってもおかしくなかった。」


「元雷に対抗するうえで、

鎧という軍事力は必要だったんだ。」


「・・・犠牲者たちの墓前でも、

同じことが言えますか?」


「・・・個人的には、承認したくなかった。」


申し訳なさそうな顔で目を逸らす。


為政者としての発言。それは分かっている。


分かってはいるが―


上辺でもいいから、謝ってほしかったかな。


「鎧計画に限らず、国英は随分と身勝手ですよね。

僕が最初に戦った国英もそう。」


「ヒルデの街の破壊や、

ヴァンプによる市民の吸血。

何故許していたんです?」


これはずっと気になっていた。


どちらが悪役か分からない程の、

横暴を超えた暴挙。


王室はどう思っていたのか。


「元は黒金が、魔族の組織だった頃の名残だ。」


「激しい戦闘になれば、

建物などの損壊は避けられない。」


「“人の犠牲”も、

やらなければより多くの犠牲が出る、

という考えの元で許されていた。」


「魔族との戦禍の中で、

そういう法律ができたんだよ。」


「ですが、魔族は疾うに絶滅しています。」


「黒金も、先代魔王が討たれてからは

一気に弱体化した筈。」


「その法律をなくさなかったのは―」


「アルヴァ―ドだ。」


その一言だけで、なんとなく分かってしまった。


「彼の提案なんだ。国英を軍事力にする以上、

彼らにも蜜が必要だと。」


「そうして戦時中のみの特例は、いつの間にか、

武力ある者の特権へと変わり果ててしまった。」


天井を眺め、ニュートは自嘲するように語る。

だがそもそも―


「あなたは反対しなかったんですか? 

国王陛下。」


そう尋ねると、彼は笑い、首を横に振った。


「出来なかった。“元雷から国を守るため”。

彼はそう言って、国英も貴族も丸め込んだ。」


「私の懸念など、

あってないようなものだったよ。」


「それにね」と付け加え、

ニュートはさらに続ける。


「ああいう事は初めてではなかった。」


「主要都市と地方の格差。それを是正する政策も

一度考えたが、軍事優先と一蹴されたよ。」


「それ以降かな。政務もやる気がなくなってね。

アルヴァ―ドは庶子だが、

私にはない武勇と魅力があった。」


「・・・私は、相応しくなかったのかな。」


無力さに打ちひしがれ、

苦しんでいるようにも見える。


“学習性無力感”という言葉を聞いたことがあるが、

もしかするとそれかもしれない。


「もう疲れた。」


溜息交じりにそう呟いた後、

ニュートの様子が変わった。


「私は、普通の人間だ。王になる器ではない。」


「だから・・・だから・・・

君に会えて良かった。」


突然玉座から体を乗り出し、

救いを求めるような目で僕を見つめた。


「君は魔王だが、野蛮な国英や元雷の連中すらも

殺してはいない。それどころか魔獣を討伐し、

今や地方の秩序となっている。」


「その話を聞いた時からずっと、私は、

君たちがただの悪人だとは思えなかったんだ。」


「・・・もういっそ、

この国を乗っ取ってくれないか?

君の方が王に相応しい。」


「それに、ノエラ―あの不義の子がいるだろう。

彼女を、女王として擁立してはどうかな?」


「そうして君が実権を握れば―」


「止めて下さい。」


流石に度が過ぎる。


国を支配しろと言う王を、魔王が止める。


前代未聞だ。


気の毒だが、この人を救いに来たわけではない。


「陛下。王宮中から蔑ろにされて、

辛い気持ちは分かります。」


「でも、困るんですよ。

僕の仲間を、好奇の目に晒したくはない。」


乱心した王を宥めるよう、ゆっくりと話す。


ニュートも我に返ったのか、

深呼吸をして平静を取り戻す。


しばらくすると落ち着いたのか、

乱れた呼吸も元に戻った。


「済まない。取り乱した。

・・・だが、時々そう思うんだ。」


今度は真剣な目でこちらを見ている。


「彼女が正式な王女だったら、とね。」


「あのセイレンを倒すほどの女傑だ。

アルヴァ―ドにも怯まなかっただろう。」


「それに、彼女の魔法は空間転移。

異世界転生が可能だ。」


「君を魔王ではなく、

勇者として召喚できていれば、

犠牲がなくとも改革することが―」


「違いますよ。」


唐突な否定にニュートも戸惑う。


「魔王にしかできないこともあります。」


僕は説明を続けた。


「転生した勇者は基本、

外患しか解決できません。」


「所詮余所者。力があるからと言って、

内憂、政治に口を出しても疎まれるだけ。

政争でアルヴァ―ドに勝てたとは思えない。」


「鎧計画とかも同じです。

犯罪ならまだしも、一応は国策ですし。」


「でも」と加えて、 

より腹に力を込めて言葉を続けた。


「魔王は違う。悪役だからこそ、

世界の正義に縛られずに動ける。

法も政治も無視できる。」


「だからこそ、

“力”でアルヴァ―ドを倒すことが出来たんです。」


ニュートは目を見開き、

じっと僕の話を聞いていた。


その後は頬を緩め、

感心するような素振りで僕に尋ねた。


「面白い考えだな。だが一理ある。」


「・・・聞きたいんだが、

君は、転生前もそういう、

指導者のような立場だったのか?」


「いえいえ。ただの学生でした。」


「フッ、成程。やはり人の上に立つ資質、

少なくとも血筋はあったわけか。」


・・・ん? 


一瞬意味が分からなかった。


血筋? 特にないが・・・学生―


ああ成程。


「陛下。僕に血筋なんてないですよ。」


「単に、全ての子供が教育を受ける世界、

だったってだけです。」


「全て!?」


「はい。もっと言えば、親は子に、

教育を受けさせる義務があります。」


「義務!?」


「無論、国からの支援もありますが。」


「・・・やるべき、かな?」


「まあ陛下の自由ですが・・・

税金を費やす価値はあるかと。」


ニュートはうなだれ、真剣に考え込んでいる。


だが話がそれてしまった。

いい加減、本題に入らなければ。


「陛下。教育については後日ということで。

今は、元雷との和睦を考えましょう。」


「ああ、そうだったな。私はどうすればいい?」


「それなんですが。元雷との和睦、だけではなく、

王国と黒金の将来を考えたうえで、

一つ提案したいことがあります。」


「何だ、それは。」


一呼吸間を置き、ニュートの目を見て伝えた。


「国英を使って、

黒金を攻めていただけませんか?」


「勿論、表向きは、です。」

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