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悪役転生  作者: こすもす
国家戦争
51/53

悪役転生第51話 未知


「君にも見せてあげよう。

国を、世界を滅ぼせるほどの、僕の切り札を。」


「滅ぼせる」という、

ハッタリとは思えない言葉の重み。


そして、その切り札への確信が籠った目。


サルジャの薄ら笑いを掻き消すには、

十分すぎるほどの理由だった。


そんなサルジャを尻目に、

僕はノエラに頼み事をした。


「転送、ですか?  魔王様を、私のもとに?」


「そう。どうしても魔力を節約したくてね。

手間をかけて申し訳ないが、お願いできるかな?」


「い、いえ。分かりました。」


ノエラが承諾した直後、

僕とサルジャの目の前に魔法陣が出現。


僕はサルジャを抱えてノエラと合流。


遠目にだが、元雷によって踏み荒らされた、

国境付近の街を眺めた。


国英による巻き添えとは違う。

敵意の矛先を向けたうえでの、意図的な破壊。


その実情を、改めて理解させられた。


そして今、

五十メートルを超える巨大な土人形によって、

壊れた街が無残にも踏み荒らされている。


破壊を上書きするような過剰な蹂躙。


放置すれば国中に広がり、

いずれは自分たちにも矛先が向く。


“切り札”を使う。


「サルジャ、と言ったか。

あなたに一つ聞きたいんだが―」


強大な力を使う。

その前に、大事な確認をする。


「あの土人形、無人なんだよね?」


「? え、ええ。

命令さえあれば自律的に動ける。」


「・・・あなたが戦った、

等身大の土人形と同じよ?」


何故そんなことを聞くのか?

と言わんばかりの顔を向けるサルジャ。


だが構わずに続ける。


「ノエラ。流石にもう、

この辺に人はいないよね?」


「はい。勿論です。元雷が国境に迫った段階で、

既に避難勧告が出ていましたから。」


「なら良かった。」


気兼ねなくできる。


正直、まともに戦って勝つのも不可能じゃない。


でもそれでは足りない。


恐怖が、足りない。


元雷の侵攻を、これで最後にさせる。


そのためには、

二度とヴァロマ王国には近づきたくないと、

元雷に強く思わせる必要がある。


それには恐怖が要る。


そして人間は、ただ大きく強いものより、

“分からない”、“得体の知れない”ものを恐れる。


少なくとも、僕のいた世界ではそうだった。


ノエラとサルジャを遠ざけ、

魔力を極限まで増幅する。


マントのオーラも完全に解放。


宿る力を両手に集め、それを一点に凝縮する。


変身状態のマントは飾りではない。


重力。


厳密には重力を操る力が集約し、

そして形を成したもの。


その力を最大限利用し、重力を圧縮する。


完成した重力の塊。

空へ放ち、解放する。


フェーズ3の「変身」

その神髄は、飛躍的な能力値の向上ではない。


“これ”を放てることにある。


「ブラックホール」



上空を覆う黒い物体。


それが全てを飲み込んでいる。


瓦礫も、戦闘の残骸も、

そして土人形も―


動きを止めた直後にがたつき、

次の瞬間には引き裂かれている。


その残骸は物体に近づくほどに分解され、

最後には塵ですらなくなる。


数百体の土の巨兵は、

数分で跡形もなく消え去った。




全てが片付き、ブラックホールを解除する。


サルジャも、ノエラも、

遠くにいたヴァロマ王国や元雷の者たちもそう。


未知の現象に目を奪われ、

息をすることも忘れていた。


そしてそれが消えた後も、

渦を巻き、果てしなく昇る土煙から、

いつまでも目を離せないでいた。


再度周囲を確認する。


敵はいない。戦いは終わった。


それを実感した直後、今度は温もりが、

感じたことのない程の多幸感が全身を包んだ。


改めて自分の体を見る。

全身を覆う黄金色の鱗に、尖った指や足の先。


紛れもない“怪人”だ。


特撮のヒーローと戦いたい。

そう思い、何年も頭の中で練り上げた姿。


そしてその願いは叶い、

思い描いた怪人に変身することができた。


更にその姿で実際に戦い、目を疑うほどの力で、

英雄や軍の兵器までも倒すことができた。


これが魔王。


僕の夢見た、悪役の完成形。


「フフッ、ハハハハハハ。」


思わず笑みが零れる。


叶う訳がないと諦めた夢。

叶える努力さえできなかった夢。


それが実現した。


僕が― 違うな。

僕たちの戦いが積み重なって、叶った夢。


飛び跳ねたいほどの喜びと、

これまでの歩みへの、感慨深い想いが重なる。


それを噛みしめながら、僕は仲間と帰路に就いた。


だがこれで終わりじゃない。


僕は、かつて憧れた悪役―朽木崩が、

世界に立ち向かう姿に感動した。


僕は力を手にしたが、まだ世界を変えてはいない。




■ あの日、世界は“魔王”を知った。


元雷の侵攻が終わってから、早くも一ヶ月が経過。


街の復興はまだ途中だが、

何十年と続いた元雷による攻撃はなくなり、

特に国境付近の街は平和を享受していた。


一部元雷に乗じようとした国もあったようだが、

“未知の力”に慄いたのか、

軍は踵を返して退がったと聞く。


そして、ヴァロマ王国の元雷への対応。


サルジャとオルガイ。

魔法を吸収した二人は王国に渡したが、

それで解決する問題ではない。


問題は和睦交渉。


一応ヴァロマが戦勝国だが、

軍同士での衝突はあまりなく、

元雷軍を退けたのは、悪の組織である黒金。


介入した真意も不明であり、

今後王国の味方となるのか、

それとも以前敵なのかも定かではない。


黒金の出方が分からなければ、

迂闊に交渉を始めることは難しいだろう。


そこで―




深夜。とある城の、とある一室。


自分で生成した椅子に腰掛け、

僕は人を待っていた。


しばらくして扉が開く。

椅子から立ち上がり、相手を出迎え礼も述べる。


「ありがとうございます。会談に応じていただき、

感謝の言葉もございません。

お体の調子はいかがですか?」


「・・・ああ、問題ない。

仮眠は取ったし、今は仕事も落ち着いている。」


「最も、“仕事が進められない”と言った方が

正確ではあるがな。」


「和睦交渉、ですね?」


「ああ。そのために場を設けた訳だが、

本当にこんな時間じゃなきゃ駄目だったのか?」


眠たい目をこすりながら、

その人物は玉座に座った。


「時間に関してはお詫び致します。」


「ですがこうでもしないと、二人きりで話すなど

できないと思いまして。」


「・・・それもそうだな。」


今度は一転して、

会話を楽しむような笑みを浮かべる。


アルヴァ―ドから聞いていた通り、

確かによく分からない人物だ。


「では、早速始めよう。一応仕事だ。」


「はい。元雷への対応。延いては、

ヴァロマ王国と黒金。」


「双方の今後について、

じっくりと話し合いましょう。」


「ニュート・スペリア国王陛下。」


国王と魔王。


世界を懸けた、話し合いが始まる。

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