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悪役転生  作者: こすもす
国家戦争
49/53

悪役転生第49話 反撃


「奪いに来たよ。君たちの力を。」


魔王が来た。


これはサルジャ達にとって想定外だった。


黒金。ヴァロマ王国に古くから存在する悪の組織。


無論元雷も把握していたが、

この侵攻に便乗こそすれ、

邪魔立てをするとは考えていなかった。


「何しに来たの? 

私たちの目的はヴァロマ王国の制圧。

黒金を攻める予定は―」


「今はない、だよね?」


サルジャは閉口、オルガイも目を逸らす。

やはり図星か。


「セイオルを落としたら、その次は僕たちだろ?」


「滅ぼすか、少なくとも支配はするよね?

到底放置するとは思えない。」


まあそうなった段階で戦う、でも良かったのだが、

こちらもこちらで“やりたい事”がある。


それを考えると、やはり今戦っておいた方がいい。


向こうにも戦意が伝わったようで、

まずは姉が動いた。


挙げた左手から蟲を生み出し、八方に散らせる。


蟲からは害意を感じない。

周囲の土人形を集める狙いだろう。


そして、


「オルガイ、あなたは先遣隊を呼び戻して!

ヴァロマの前にまずはコイツよ。」


「了解です! 姉上。」


姉の体から離れ、弟は文字通り迅速に動いた。


魔法による高速移動。

目にも止まらぬ速さで駆け抜ける。


襲雷(しゅうらい)

速射の雷がかすりもしなかった。


だが、やはり警戒すべきは―


黒扇(くろおぎ)


蟲を操る姉の方だ。


これだけでも軍となる上、

魔法の練度もやはり高い。


蟲が彼女を中心に扇状に広がり、

押し込むように向かってくる。


右手をかざし炎で迎撃。

まずは正面を焼き払う。


すると扇の両端が進路を変え、

僕を四方から覆い尽くすように動いた。


包囲前提の攻撃。


「まあ想定はしてた。」


左手と、背中から出した二匹の蛇。


それぞれを側面と背後に向け、

十字のように炎を放って蟲を焼く。


予見していれば大したことはない。

それに、魔法の相性もいい。


トトトトッ―


胸や腹に何かが当たる。嫌な感触。


見ると、蜂の形をした蟲が数匹、

僕の体に張り付き、そして食い破ろうとしていた。


慌てて焼くと、

体こそ無事だが服には穴が空いていた。


これは恐らく即死技の類。


銃弾のように打ち込まれた蟲が、

敵の血肉を喰らいながら増殖。


一気に内側から相手を侵食する。


ダイヤモンドの硬度がなければ危うかった。


敵の方を見ると、サルジャは笑っていた。


一瞬でも焦った僕を嘲たのか―


「!? ウッ!!」


今度は背後からの衝撃。

大きさは先程の比ではない。


そうだ。


敵は将軍だけではなかった。


数十体の土人形が、

サルジャと挟み込むように僕を取り囲んでいる。


その内二体は筒を構えており、

僕を撃ったと一目で分かる。


魔法弾。

本来なら、火傷や骨折は避けられない代物。


体の硬度があるとはいえ、

体内への衝撃はダメージになる。


集中砲火を受けると面倒。


それに加えてサルジャの猛攻。


地黒の枷(じごくのかせ)


地中から百足のような無数の蟲が現れ、

一瞬で足を覆い尽くす。


連動した土人形の砲撃に加え、

上からは滝のような蟲の群れ。


逃げ場がない。


魔空の壁(まくうのかべ)


空気を操り、ドーム状の防御壁をつくる。


魔力を流して強度を上げ、

砲撃と上からの蟲を防ぐ。


その間に纏わりついた蟲を焼き、

そして地中にも蛇を介して炎を通す。


だが壁は蟲で覆われ、視界を遮られてしまう。


今更だがこの魔法を相手に、

後手に回ったのは悪手だった。


彼女は強い。

認めた上で、魔王としての本気で戦う。


「そろそろ、かしら?」


蟲に飲まれる相手を見ながら、

サルジャは不敵な笑みを浮かべる。


蟲の群れは当然として、

土人形も攻撃の手は緩めていない。


指示がない限り、

蟲ごと敵を攻撃するよう命令している。


蟲は土人形と同じく、いやそれ以上に代替が可能。


しかも土人形とは違い、“補給”も容易。


魔王と聞いた時は驚いたが、

それでも今は優勢を保っている。


蟲だけでは難しくとも、

土人形の軍勢も使えば押し切れる。


このまま包囲殲め―


ドォォォォォォォ―


とても重く、そして低い。


腹の底に響くような音と共に、

周囲に高く土煙が上がる。


逃げる者も戦う者も、皆一様に静まり返った。


その場の当事者も例外ではない。


「・・・は?」


気が付くと、サルジャは地に伏せていた。


何の前触れもなく地面に叩きつけられ、

胸や腹部に受けた衝撃が、

全身に広がるようなダメージを負う。


サルジャは、この攻撃を理解できなかった。

そもそもできる筈がなかった。


何故なら彼女も含め、この世界の人間が、

まだよく知らないものだからだ。


「重力操作」

蛇石京の魔法「八岐大蛇」七つ目の能力にして、

フェーズ3になって解禁された能力の一つ。


「・・・届いたか。」


周囲の見えぬ壁の中、僕は策の成功を感じ取る。


重力操作によって、

サルジャと土人形を同時に攻撃する。


命中するか定かではなかったが、

確かに今砲撃は止み、蟲の攻撃も緩んでいる。


統率が乱れたのだろう。


その隙を逃がしはしない。


悪炎美頭(あぽぴす)


炎の蛇を空に突き上げ、

天に昇る勢いで蟲を喰らわせる。


こぼした蟲も焼き払い、

黒い猛攻は完全に振り払う。


土人形はと言うと、

重力波で捻じれて潰れ、どの個体も沈黙していた。


こちらは無事済んだようだ。


「―っ!?」


気配を感じ、振り向きざまに炎を放つ。


蟲の銃弾が焦げて落ちる。もう慌てない。


来ると分かっていれば怖いものではない。


「フゥ、フゥ・・・何をした?」


「重力だよ。って言っても分かるかな?」


僕の言葉に腹を立てたのか、

サルジャの目が再び怒りと恨みで満ちる。


その一方、今は肩で息をしており、

その眼力も含め弱っているように見える。


重力波は確かに効いている。


だが油断はしない。土人形の増援もある。


完全に勝つまで、攻撃の手は緩めない。


「元雷の英雄よ。あなたは外道のようだが、

まあ僕も言えた立場ではない。」


「そして一戦士、将としても優れている。

その点には敬意を払おう。」


「・・・いきなり何を―」


「敬意を払い、魔王の全霊を以って、君を倒す。」


膨大な魔力の起こりに、サルジャは背筋が凍った。


空気の、空間そのものの歪みを錯覚するほどの、

異質にして異常な量の魔力。


遥か遠くの兵士たちにも、

思わず顔を振り向かせる。


天を見上げた魔王の体が、

眩しく、そして黄金のように艶やかな光を放つ。


魔王の、最後の力が解き放たれる。


「八岐大蛇」最強の能力にして、

フェーズ3の神髄。


八つ目の能力 「変身」

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