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悪役転生  作者: こすもす
白と黒
43/53

悪役転生第43話 別格


「レオナは無事だよな?」


黒金城にて、唐突にレンが口を開く。

思わず言葉が零れてしまった。


「どういう意味だ? レン。」


ゼインが反応し、息切れした声で問う。


今回、ゼインには城内のまとめ役の他、

戦う三人を強化するという役割もある。


魔力増減の魔法により、

蛇石達の魔力を限界まで高める。


相手が壊れない程度とは言え

三人分の強化の反動。


現在進行形でかかる負荷により、

彼自身もまた消耗していた。


「いえ、単に気がかりなだけです。」


そう前置きし、外を眺めて話を続けた。


「結界が壊れていない以上、

ノエラ様の無事は分かります。」


「魔王様もです。眷属である俺やゼイン様に、

現状何も起きていませんから。」


「ですがレオナは―」


「無事を確認する術がない、と?」


「そうです。」


この場の全員が俯く。


レンの言い分も理解できるからだ。

一人を除いて―


「それが何なの?」


メイだった。意外な相手にレンも目を丸くする。


「レン君は、レオナちゃんが

負けると思ってるの?」


「いや。それが分からないと―」


レンに詰め寄る姿は最早、

レオナの影に隠れていた少女ではなかった。


「覚えてる? 小さい頃、

私が隣の村の子にいじめられた時、

レオナちゃんが大暴れしたこと。」


当然憶えている。大勢の男子を殴り飛ばし、

一回り大きな相手も顎を蹴って失神させた。


同い年とは思えない力に、

子供ながら恐怖も覚えた。


「レオナちゃん、

私に何かあると本気で怒るでしょ。」


「今は多分、あの竜の人と戦ってる筈。

レオナちゃんに庇わせるために私を狙った人。

レオナちゃんは絶対許さない。」


「それに今のレオナちゃんには、

ゼイン様や魔王様の力もある。」


「レン君。もう一回聞くけど、

レオナちゃんが負ける思う?」


レンは無言で首を横に振り、

この場の全員も納得した。


他の誰でもない。


メイだからこその説得力、

言葉の重みというものがあった。




■ そしてメイの言う通り、

レオナには火が付いていた。


熱気だけで木々が焦げる程の戦場。


獣の女王―レオナと、白騎士セリア。


二人の戦いは、ノエラ達のような

技の読み合いではなく、

純粋な力の衝突、殴り合いになっていた。


バキッ、ドスッ、バゴッ、ボコッ―


鈍い音が響くも、両者一歩も退く気はない。


この殴り合いはレオナが始めたもの。


相手に翼がある以上、空中戦は不利になる。


空を飛ばぬよう接近戦に持ち込み、

執拗に“殴る”ことで殴り合いにも誘い込んだ。


これにも狙いがある。


相手の女は皮膚が鱗のようになっており、

爪の刃が通りにくい。


だが「拳火」による衝撃は違う。


鱗にもヒビが入り、相手の顔も痛みで歪む。


そしてもう一つ、これは幸運と言うべきだが―


「アンタ、喧嘩慣れしてないでしょ?」


「は―」


答える間もなく拳が入る。


「図星ね! 道理でぎこちないと思った!

今まで上からしか攻めてなかったんでしょ?」


実際その通りであり、

セリアに肉弾戦の経験はあまりない。


現に、手数でレオナに押されている。


「喧嘩の一つも出来ないなんて、

情けない白騎士ね!」


殴られながらも、セリアの目が本気になる。

頭にきた彼女は言葉を返した。


「こっちの台詞よ! 

アンタが庇ったみすぼらしい子もそうでしょ?」


「アンタの後で潰してあげるわ!」


メイに言及され、レオナは一瞬固まる。


その隙を見逃さず、セリアは反撃を始めた。


顔や腹を、やり返すように殴る。

鱗に覆われた硬い拳で。


レオナは防御するも押され、

そしてセリアはレオナの腕を掴み、

空いた頭に頭突きを食らわせた。


額から出血。


セリアは勝利を確信、笑みを浮かべ―


ガンッ!!


唐突なレオナの頭突き。しかも、


ガンッ!! ガンッ!!


連続で鼻に当たる。

鼻血が止まらないセリアの顔を拳で振り抜く。


大きく後ろへよろめくセリア。

レオナはそんな彼女の首を押さえ、


ボグッ、ドゴッ、ボゴッ―


次は膝蹴り。


何度も腹を攻撃して体力を削る。


ようやく解放したかと思えば、今度は前蹴り。


強烈な一撃に背中から倒れ込む。


口から涎を吐き、うずくまるセリア。

そんな彼女をレオナは掴み、木に叩きつける。


胸倉を掴まれ、木に押し付けられる。


セリアは、レオナを怒らせすぎたと思った。


だが、彼女の見たレオナの顔は違った。


捕食者の目。


額と口から血を流すも、

レオナは獲物を見るような目でセリアに微笑んだ。


「アンタ、軽いのね。」


困惑するセリアの顔を楽しむように、

レオナは話を続ける。


「体も軽いし拳も軽い。

硬いだけで、重くはなかった。」


「・・・アンタ自身も?」


「は?」


睨みつけるも意味はなく、

より強く押し付けられるだけ。


「好きな男とか―もしかしてアルヴァ―ド?

あんなおらついてるだけの品のない男が? 

まあ―」


「軽い女にはお似合いね。」


最後の言葉は耳元で囁くように言った。

セリアの目に殺意が籠る。


全力でレオナの腹を蹴る。


それに合わせてレオナも跳ぶ。

後ろへ下がって衝撃を逃がす。


続けてセリアの追撃。


今まで感じたことのない程の力を籠め、

拳で相手にぶつける。


「食らえ!クソア―」


だが拳は空を切り、代わりにレオナの蹴りが炸裂。


前のめりになったセリアの顎へ、

カウンターのフラッシュキック。


垂直に宙を舞い、頭から地面に落下する。


ダメージは大きいが、

それでもセリアは立ち上がる。


当然これは、言葉で誘導したうえでの攻撃。


セリアもそれは理解し、その上で言った。


「アンタのこと、

立ち上がれなくなるまで潰してあげる!」


レオナと同じ目をして笑うセリア。

そしてレオナも笑い返す。


「当然。最初からそのつもりよ!」


そのまま二人は再び激突。


一層激しい殴り合い―否、

獣同士の喰い合いになる。


どちらも目をぎらつかせ、

笑顔を絶やさず拳を交える。


そして両者、相手の後頭部を掴み―


唇を交わらせた。情熱的なキス、ではない。


互いの頭を掴み、竜の熱線と獣の咆哮を、

両者を口内で衝突させている。


相手の背中にも腕を回し、

抱き合って逃がさないようにもしている。


命懸けの異常な衝突。結果は―


引き分け。

熱線と咆哮は拮抗、互いに爆ぜた。


爆発の直前に口を放したとはいえ、

流石に二人への負担も大きい。


だが、どちらの闘志も消えてはいない。


「まだまだよ。」


「そうね。でも・・・決着はすぐそこよ。」


「え―」


困惑するセリアを、

レオナは目にも止まらぬ速さで殴り飛ばした。


セリアの脳と思考が揺れる。


全く対応できなかった。


速さも重さもまるで違う。


「アンタ、思ってたよりやるわね。

今の私相手に、伸されないだけ大したもんよ。」


「でも、ここからは別。

悪いけど、アンタとは格が違うの。」


レオナが炎を、力の全てを解禁する。


魔力も熱気も、段違いに上昇している。


セリアの闘志も消えてはいない。


だがレオナの、

最早獣とすら呼べないほどの存在感に、

セリアは畏怖すら感じつつあった。

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