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悪役転生  作者: こすもす
白と黒
40/53

悪役転生第40話 決戦


雷が止み、晴れゆく空。


しかし、白騎士たちの心は違った。


勝った気で進んでいた道が、

地獄の入り口に通じていたと気付いたからだ。


心は不安で青黒く染まる。


それは心拍の上昇や筋肉の緊張という形で、

彼らの体にも表れていた。


セリアの安否も気にすべきだが、

アルヴァ―ドもセイレンもそれどころではない。


赤竜を一撃で屠った魔王。


かなり遠いがそれでも強く、

彼の異質な気配を感じ取っていた。


先代魔王のような、野獣の如き暴力性ではない。


より黒く、より鋭い気配。


例えるなら、首に刃物を突き付けられ、

それがほんのわずかに刺さっているような、

そんな圧迫感がある。


故に目を離せなかった。


距離があるとはいえ、

一瞬たりとて気を抜けない。


そんな緊張感が、二人の行動を制限していた。


魔王の様子を伺いつつ、二人は頭を巡らせる。


魔王とは距離があるが、

どちらも遠距離攻撃が可能で、攻撃は届く。


だが、当たるとは思えない。


どころか、最悪魔王に隙を見せることにもなる。


魔王が消えた―



消えた!?


確かに魔王の姿がない。一瞬紫色の光を―


空間転移!


思考が追いついた時には、魔王が目の前にいた。


そしてその気配を感じ取るより、

魔王の攻撃は速かった。


紫牙(しが)


魔王の背中から二匹、黄金の蛇が牙をむく。


人一人容易に飲み込めるほどの大きさ。


そして牙はおろか、口内全てが紫に染まっている。


考えるより速く、白騎士二人は跳び上がる。


殺気を超えた殺意というべき気配に、

体が回避を命令していた。


だがその選択も、魔王の意向に沿うものだった。


大蛇二匹は、白騎士二人が逃げた直後、

目線を本命へと移す。


そして毒牙を蒼大に喰い込ませ、

紫毒で頭を喰らい尽くした。


力尽き倒れる蒼大を、二人は歯ぎしりの中見届ける。


「クッソ!あの野郎―」 「狙いはそっちか。」


冷や汗をかくほどの魔王の殺意に、

白騎士二人は誘導された。


回避させることで分断し、

本命の蒼大を一撃で仕留める。


踊らされた屈辱に身を焦がしながら、

二人は地面に着地する。


「ふざけやがってぇ!!」


「落ち着いて下さい、アルヴァ―ド様。」


宥めるセイレンの方も、顔に青筋を立てている。


二人で怒りを抑えていると、


「ハァ、ハァ、アルヴァ―ド様。」


セリアだった。


生きてこそいたが、目に見えて消耗している。


左半身を引きずっており、片翼は黒く焦げている。


いつ崩れてもおかしくない。


あの雷がかすったのだろう。

魔王とはいえ、信じ難い威力だ。


苛立ちを隠しセリアに近づく。

まず戦力を回復させる。


「修復」


そう唱えて翼に触れる。


焦げた黒から、赤へとゆっくり色が戻る。

体の痺れも消え、しぼんだ魔力も元に戻った。


「修復」 地方の没落貴族から買い取った魔法だが、

魔法進化(ギフトエボル)」と並ぶほどの有用性。


恐らくだが、魔王との戦いでも要になる。


「厄介な魔法だね。」


魔王だった。


声をかけられるまで気が付かなかった。

気配は消え、今はただの青年にしか見えない。


回復したセリアも含め、全員が臨戦態勢に入った。


「三対一なら、勝てると思った?」


見た目通りのおっとりした声。


油断ではない。


かつて魔王を倒したという、

その自負が口を開かせた。


「調子に乗るなよ。お前のようなガキ、

俺一人で十分だ。」


「ならそうしよう。」


背後から二つの影が落ちる。


次の瞬間、衝撃で地面が揺れた。


振り返ると、

立ち上がった筈のセリアが倒れていた。


魔力というより、純粋な膂力による一撃。

致命傷でこそないが、セリアの視界が白く弾ける。


女が、獣の如き気配の女が、

蹴りでセリアを地に叩きつけていた。


確か名はレオナ。

黒金に下った盗賊団の首領。


あの時は仲間を庇って落ちていた。


ここまでの力強さは感じなかった。


不意打ちとは言え、セリアが力負けするとは。


まさかと思い視線を移すと、

隣も同じ状況だった。


セイレンが、

あの不義の子供から攻撃を受けている。


槍の一撃。


強烈だが、こちらは辛うじて防いでいる。


眼前の光景にアルヴァ―ドは驚き、そして戸惑う。


両者の、異様に大きな魔力。


まるで増幅されているような―


「ノエラ! レオナ!」


後ろから魔王の声がした。

先程よりはっきりとした声。


見ると、余裕のある、

朗らかな笑みを浮かべていた。


「頼んだよ。」


「もちろんです。」 「任せて!」


魔王に答える二人。


その後、ノエラ―不義の子供は、

セイレンの手に触れ空間転移で移動。


レオナに至っては、なんとセリアの首根っこを掴み、

彼女を抱えて跳び去ってしまった。


そしてこの場には、

白騎士筆頭の王弟アルヴァ―ドと、

現黒金魔王の蛇石京。


この二人だけが残された。


「じゃあ始めようか。魔王を倒した、勇者様。」


魔王がじっとりとした笑みを浮かべ、

再び異質な気配も見せる。


気付けば一人。


そうした不安や焦りを押し殺し、

アルヴァ―ドは魔力を高めた。




■ 黒金城の一室。


魔王の玉座があるその部屋は、

一目で外を一望できる高みにあった。


生き残った黒金の構成員。

その殆どはここに集まり、外の様子を眺めていた。


「本当に来たのかよ!?

あの戦いからまだ一週間も経ってないってのに。」


「み、見て。鎧があんなにたくさん。」


皆口々に不安を漏らす。


巨大な竜に巨大な鎧。


魔王の説明があったとは言え、こうも早く

本格的な攻撃が始まるとは思っていなかったからだ。


不安は伝播し、大きくなる。

が、


「狼狽えるな!!」


ゼインが一喝。それを止めた。


黒金城内部の統制。

今回の彼の役割の一つだ。


「お前たちも見た筈だ。赤い竜と巨大な鎧。」


「この二つの敵の主力を、

魔王様自らが討ち取って下さった。」


「白騎士も魔王様たちが倒す。

残りの鎧は気にしなくていい。」


「気にしなくていいって、それは―」


ゼインは仲間を落ち着かせ、

一呼吸おいて説明を始めた。


「竜と巨大鎧が倒れた。明らかな異常事態にも

関わらず、鎧の足は止まっていない。」


「恐らくだが、白騎士からこの城へ向かえと

命令を下され、

それがまだ更新されていないのだろう。」


「だから救援にも向かわず、

ひたすらここを目指して行軍している。」


「ならば何も問題はない。

ここが落ちることはないからだ。」


「言い切れるんですか?」


ゼインは首を縦に振った。


「この城には、ノエラの張った結界がある。

魔王様のお力で覚醒した魔法だ。」


「決して壊れない。現に竜の火球を受けても、

城には揺れひとつなかっただろう。」


ようやく、全員の不安が和らぐ。


長く在籍するノエラへの信頼でもあるのだろう。


ゼインにとっても、一番付き合いの長い仲間。


彼女は今頃、母親の仇と戦っている。


どうか気を付けてくれ。

君は一人ではない。


仲間を信じつつも、ゼインは密かに胸元を握った。

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