表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役転生  作者: こすもす
白と黒
39/53

悪役転生第39話 王弟


「み、三日後、ですか!?」


王宮の一室。


白騎士たちが軍議を行う部屋の中で、

その驚きの声は響いた。


声の主は、セリア・ドラグニル。


白騎士であり、魔法は「竜人化(ドラゴニュート)」。

文字通り、自身を竜人化させる魔法。


しかしそんな彼女も、今は驚きを隠せずにいる。


黒金の襲撃を、

アルヴァ―ドが三日後と決めてしまったからだ。


「早すぎません?」


「私も、そう思います。」


もう一人の白騎士、セイレン・ヴァイスも答える。

が、


「いや、これでも遅いと俺は思ってる。」


アルヴァ―ドは譲らなかった。


謁見の疲れが残っているのか、

溜息交じりに説明を始めた。


「まず、あの戦いから既に三日経ってる。

残党狩りに捕虜への尋問、謁見。

いろいろあったからな。」


「一週間もあれば、

流石に向こうも体勢を立て直す。」


「仮に“あの女”の件で、

内部がごたついたとしてもな。」


セリアは納得しつつも首を傾げる。


話の意味は理解できる。


が、彼女はこの中で唯一、

ノエラの正体を知らない。


それを見かねて、セイレンが一つ提案した。


「アルヴァ―ド様。この際、

セリアには話してもいいんじゃないでしょうか? 」


「あの女の正体を。」


セリアを見つめ、アルヴァ―ドしばしの沈黙。

そして、


「そうだな。セリア、後で教えてやろう。」


「はい!」


セリアは朗らかに答えた。


アルヴァ―ドを慕う彼女にとって、

秘密の共有は信頼の証。


気分が高揚、どこか上の空になる。


そんなセリアを尻目に、

セイレンは作戦をまとめ始める。


「グラディオの件。

外に漏れるのは時間の問題でしょう。

迂闊に前線の鎧は動かせません。」


「王都やその周辺から集める必要があります。

一千が限度ですね。」


「ただ黒金側とて、六日で失った兵を補充するのは

不可能なはず。我々で魔王や側近たちを抑えれば―」


説明が進むにつれ、

セイレンの目に確信が籠っていく。


「勝てますね、この戦い。」


アルヴァ―ドも同じだった。


「ああ。こちらには蒼大もいるしな。

だが念のため、一つダメ押しをする。」


「セリア。おい、セリア! 聞いてんのか?」


浮かれるセリアに喝を入れ、一つの命令を出した。


「赤竜を連れてこい。」


セリアも、セイレンも目を丸くした。


赤竜―セリアが、厳密には

ドラグニル家が飼育する魔獣の一体。


対ゴーレムも想定した生体兵器であり、

ドラグニル家が重用される理由の一つでもある。


「えっ!? で、でも―」


「落ち着け。お前の家には俺が話を通しておく。

元雷が攻めてきたとて、他の魔獣で対処できる。」


「セリア。お前だから頼んでいるんだぞ。」


「ハ、ハイィィ!!」


顔が紅潮する。


敬愛する相手からの、ある種の特別扱い。


横で冷笑するセイレンなど、

今の彼女の眼中にはなかった。


興奮するセリアを尻目に、

今度はセイレンに命令を下す。


「セイレン。お前にも大役を任せる。」


「何なりとお申し付けを。」


「魔王は俺がやる。お前は“あの女”を仕留めろ。」


セイレンが目を見開く。

そして同時に低く笑った。


「有難く。私も望んでいた所です。」


アルヴァ―ドも笑みを浮かべる。


二人の間には、セリアとは異なる信頼関係があった。


「お前ならそう言うと思ったよ、セイレン。」


「“今度”は逃がすなよ。確実にやれ。いいな!」


「ハハ!」


号令と共に散会。


セイレンは鎧の招集。

セリアとアルヴァ―ドは情報共有。


黒金城急襲に向け、

白騎士各々が動き始めた。


そうして、三日が経過した。




■ 「見えたぞ、あれが黒金城だ。」


アルヴァ―ド率いる、黒金討伐の軍勢。


王都から進軍した一行は、

遂に目的地を肉眼で捉えるに至った。


「大きい城!」


「あんなの、よく今まで

見つからなかったものですね。」


「まあ、こんな山奥だしな。」


敵の本拠地にいながら、

アルヴァ―ドたちに一切の不安はなかった。


兵力もあり、そして修羅場にも慣れている。


この場にいる白騎士たちは皆、

旧黒金の幹部格以上を倒している。


今更恐れるものはなかった。


「アルヴァ―ド様!」


赤竜に乗るセリアが、手を振って声をかけてきた。


「私が先行して攻撃します。

黒金城をぶっ潰すんで、見てて下さい!」


ニッコリと笑って宣言した後、

早速赤竜の速度を上げた。


あっと言う間に黒金城の上を取り、

竜の火球が城を襲った。


「よろしいんですか? アルヴァ―ド様。」


セイレンは呆れつつも、その様子を観察している。


「ああ。あれで城内が混乱すれば、

嫌でも幹部が前に出て混乱を収めようとする。」


「俺たちはそこを仕留めればいい。」


アルヴァ―ドとセイレン。


蒼大の肩に乗る二人は、

セリアより遥かに落ち着いている。


魔王と不義の子。


それぞれ失敗できない相手がいるとは言え、

どちらも失敗はないと確信しているからだ。


ディルナスの森での行動からして、

あの二人が仲間を見捨てる可能性は低い。


仮に城内にいなかったとしても、

セリアの攻撃で炙り出すことはできる。


勝てる。


そう思っていた。


皇雷(こうらい)


セイレンの表情が変わった。


耳が、聞き覚えのある声を捉えたからだ。


「超音波」


この魔法で彼の聴力は人の域を超え、

遥か先の会話すら聞き取れるようになっていた。


直後、周囲が不穏な空気に包まれる。


森がざわめき、空も曇り出す。


アルヴァ―ドもこの空気を察知し、

不安を抑えながら周囲を見回す。


この突然の空気の変わりようは、

確実に白騎士たちの心を蝕んでいた。


そしてアルヴァ―ドは、

曇り出した空に大きな光を、不穏の正体を見つけた。


風が止み、森のざわめきが嘘のように消えた。


「避けろセリア!!!!!」


セリアが振り向いたのも束の間、

光の柱が、収束した雷が赤竜に降り注ぐ。


天が下したかのような一撃。


ちょうど赤竜の体を覆う程の大きさで、

過分なく、そして濃密な雷となっている。


ただ落ちるのではない。

一点に絞られた、鋭い雷撃だった。


息絶え、竜が堕ちるまで光は降り注いだ。


そして雷が止んだとき、

空は晴れ、城の頂上に人影を見た。


整った服装に黒の外套。


黄金の仮面の下から、こちらへの視線を覗かせる。


アルヴァ―ドも視線を返しつつ、

一つの事実を理解した。


先代魔王(まえ)とは違う”


その意識のもと、体に力と魔力を籠めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ