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悪役転生  作者: こすもす
白と黒
37/53

悪役転生第37話 顛末


「以上が、黒金に加入する前の話です。」


ノエラの話にも区切りがつく。


イリーナ氏の存在と、その死。

国英、そして先代王の罪。


想像を超える過去に、この場の誰もが言葉を失う。


「そうか・・・じゃあ、黒金に入った理由は―」


「はい、復讐です。

他に方法が思いつかなくて・・・」


「戦闘員として加入した後、

先代魔王に気に入られて秘書に。

その時、魔法の口止めもお願いしました。」


「口止め? まあ意図は分かるけど・・・

大丈夫だった?」


「はい。何もなかったですよ。」


「この魔法は不用意に晒すべきではない、と。

戦略面で説明したら応じてくれました。」


「血筋のことは話してません。」


ホッと胸をなでおろす。

一瞬良からぬ想像をしたが、杞憂で済んだ。


嘘をついている様子はない。

本当に大丈夫だったのだろう。


「ゼイン。君は当時も黒金にいたよね?」


「はい。実際そういう命令がありました。

口外も詮索も禁じると。」


「ですのでノエラの魔法は、当時の黒金でも

ほとんど知られていませんでした。」


かなりの徹底ぶり。

そこまでいくとまるで―


「魔法を使いたくなかったの?」


唐突にレオナが尋ねる。

だがそれは僕も思った。


「それは・・・そうね。あの男の血に頼りたくない。

そういう気持ちはあったかもしれない。」


「きっと母もそう思って―」


「それは違うんじゃない?」


ノエラの眉間にしわが寄り、空気も少し険悪になる。


「ねえ、レオナ。あなたに母の何が分かるの?」


「分かるわよ。イリーナさんが、

アンタの魔法を嫌っていなかったてことは。」


ノエラの目を見て、レオナは続ける。


「先代王を思い出すこともあったでしょうけど、

それが嫌なら“二度と魔法を使うな”

って言えば済む話よね? 」


「でもそうは言わなかった。それどころか

魔法の練習もさせていた。どうして?」


ノエラが目を逸らす。


「その魔法が力になるからでしょ?

王族や国英を倒すための。現にそうなってる。」


「でも・・・それこそ魔王様に比べれば―」


「異世界転生」


空気が変わった。


ノエラも、そして僕も含め、

この場の全員が目を見開く。


そうだ。今の今まで何故忘れていた。


「そうだよ、ノエラ。

恐らく王宮内で知ったのだろうけど、

イリーナ氏が教えてくれたのだろう? 」


「異世界転生のことも、その方法も。」


つまりイリーナ氏は、

僕にとっても恩人だったということになる。


皆が驚きと感心に包まれるなか、

レオナはさらに続ける。


「イリーナさんは力を託した。

異世界転生の方法も、アンタの血もそう。」


「どういう意味? 何で先代王の―」


「そうじゃない。アンタの血は、

イリーナさんの血でもあるって言ってるの!」


レオナの言葉に、ノエラの涙腺が潤い始める。


「先代王の魔法は結界。守るだけ。」


「でもアンタはそれだけじゃない。仲間を助け、

戦うことも出来る。しかもただ強いわけじゃない。」


「槍の腕があってこそ真価を発揮する魔法。

きっとイリーナさんの血が入ってそうなったのよ。」


涙が頬を伝い、ノエラの手が震える。


そんな手を強く握って、最後にレオナが言った。


「その魔法と槍で、国英を倒すの。」


「アンタの力で、先代王を否定してやりなさい。」


ノエラは口を開きかけ、けれど声は出なかった。


胸の中の縛りが消え、しまっていたものが溢れ出す。


否定すべきは血ではない。

あの男だけだった。


肩を震わせる、涙の止まらぬ可憐な少女を、

レオナは優しく受け止めた。


ノエラの涙で胸を濡らしながら、

今度はメイを見て言った。


「そんな顔しないで、メイ。今日だけだから。」


見ると、メイが複雑そうな顔をしている。


レオナが他の女性を抱いているが、

この状況でヤキモチは焼けず、といったところか。


そんなメイをフォローするようにレオナは言った。


「今日は一緒に寝ましょう。」


「あの女を倒すためにも、

しっかり休まなきゃいけないし。」


「あの女って?」


「決まってるじゃない。

私とメイを叩き落としたあの白騎士女よ!」


レオナの怒りに、あの竜人めいた白騎士を思い出す。


「アイツ、私が庇うの分かっててメイを狙った。

この借りは絶対返すわ!」


強引にでもノエラを励まし、

胸を貸しながらメイの頭も優しく撫でる。


獣の女王、彼女がそう呼ばれる理由がここにある。


僕も負けてはいられない。


「レオナの言う通りだよ、皆。

次こそアルヴァ―ドたちを倒そう。」


「やはり、攻めてきますか?」


「間違いないと思うよ、ゼイン。」


「ノエラの存在が露見した以上、本気で

黒金を潰しに来るに違いない。」


「潜伏していたイリーナ氏も見つかったくらいだ。

黒金城が見つかるのも、多分時間の問題だと思う。」


「フフッ、返り討ちにすればいいだけでしょ?」


強気のレオナ。僕も同意見だ。


「ああ。だが、その前にやることがある。

黒金全員の強化だ。」


「強化?  吸収で、ってこと?」


「そうだよ、レオナ。

グラディオの置き土産をいただく。」


「置き土産・・・まさか、

残っていたんですか?  あの大量の―」


「ええ・・・たくさんあった。」


レオナに抱かれたままノエラが答える。

説明は僕が引き継ぐ。


「アルヴァ―ドの言葉を思い出してご覧。」


「たとえグラディオが死んでも鎧は消えない。

“指揮権を委譲しておけば”問題なく操れる。

そう言っていたよね?」


「あの鎧軍団はグラディオが直接操っていた。

そして、“指揮権を移す前に”本人が倒れた。」


「蒼大の一撃で掘り返された無傷の鎧も、

主不在で動けずにいる。」


「で、アルヴァ―ドたちにも放置された鎧たちを

ありがたくいただこう、というわけ。」


皆の目に光が戻る。


やるべきことがはっきりし、

現実的な勝算も見えてきたからだ。


次は勝つ。


その気持ちで、改めて全員が一つとなった。


だが、それは相手も同じことで―




■ 王都セイオル。

その中心、延いては国の中枢たる王宮。


その最上階にある謁見室にて、

ディルナスの森での一件が報告されていた。


「つまり、グラディオは部下を救うべく独断で戦い、

魔王に敗れたということか?」


「はい。白騎士にあるまじき失態。

お詫びの仕様もございません。」


国王に跪き、謝罪するアルヴァ―ド。


「死んだのか?」


「いえ。ただ、国英としては、もう・・・」


「そう、か。」


後ろで跪く白騎士たちも目を伏せ、

両脇に並ぶ上級貴族も言葉を失う。


悲しみや怒りではない。


鎧化計画が頓挫した。


その事実、延いてはその結果としての未来を、

この場の全員が憂いていた。


しかし、そんな大きな問題への答えが

すぐに出るわけがなく、

皆の思考は目先の問題へと移る。


黒金。


これ以上生かしておけば沽券に関わる。


よって、完全に滅ぼす。


一人を除き、全員が同じ結論に至った。


「黒金と、和睦するべきではないだろうか?」



は?



耳を疑う国王の言葉。


謁見の間の全員が、わずかに呼吸を忘れる。


王の従者は手にしていた書物を落とし、

乾いた音が床に響く。


貴族たちは目を皿にし、

アルヴァ―ドの顔には青筋が立った。

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