第25話〜あったかい歓迎〜
森のような草叢を抜けた場所でタクシーを降りた後は、昼間なのにどこも閉まっている商店街を通って行く。草原沿いの道を過ぎると、“ヒミツキチ”とか呼ばれてた、ミランダがいる洞窟が見えた。
そしてちょっと進むと、チップたち9匹のネズミたちの住むデッカい木が見えてきた。
ようやく、帰ってきたぜ。ここは無事のようだ。良かった。
「あ! ゴマくん、おかえり! 大丈夫だった?」
「皆さん、無事だったんですね。さあさ、早く中へ」
玄関のドアが開くと、チップと、ネズミの父ちゃんのピーターが出迎えてくれた。
そして……中に入ると、ユキとポコが駆けつけてくる。
「メル姉ちゃん、みんな! 無事だったのね!」
「あわわ、帰ってきてくれて良かったよぉ……。僕、ずっと不安だったんだよ? 誰かが死んじゃったらどうしようって……」
ユキもポコも、元気そうだった。ルナが「良かった……。ユキ、お腹の赤ちゃんも大丈夫そう?」と聞くと、ユキはコクリとうなずいた。
9匹のネズミの家族もみんなケガもなく、無事だった。やっぱりニャンバラの奴らは、ここまでは攻めては来なかったみてえだ。
「みんニャ、心配かけてすまねえな。まあ、危機はボクの母ちゃんたちが食い止めてくれたぜ。それと……。おい、スピカ。早く中に入って挨拶しやがれ!」
「……は、はじめまして、で、ええんか……?」
ボクの後ろで遠慮がちにスピカが挨拶すると、母ちゃんが前に出て、いつものように深く頭を下げた。
「ネズミの皆さん。この方にも、皆さんとの生活を体験させてあげて欲しいのです」
「あらあら、新しいお友達? うちは大歓迎よ」
ネズミの母ちゃんのマリナは、少しも警戒せずにスピカを迎え入れようとしている。大丈夫なのか? 敵だったんだぞ、コイツ。
「わあい、またネコさんのお友達だー!」
「うふふ、女の子のネコさんのお友達、嬉しい」
「またお友達増えて、うれしいなっ!」
「やったあー! いっぱいナナと遊ぼ! あ、あたしのことは“ナッちゃん”って呼んでね!」
「ネコのおねえちゃんだー!」
そんニャ事も知らず、ネズミのキョーダイ――トム、モモ、チップ、ナナ、ミライ――は、目を輝かせてはしゃぎ出す。敵意ってやつを知らねえ純粋なネズミのガキどもの様子に、スピカはポカンと口を開け、目をまん丸くしている。
「……何なんやこの子ら。めっちゃフレンドリーやん?」
「ねえねネコのお姉ちゃん、名前なんていうのー?」
「ウチの名前は、スピカやで。なんやようわからへんけど、ウチ、ここであんたらと暮らすんか?」
チップとナナが、嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねてやがる。
「スピカ姉ちゃん! よろしくね!」
「いっぱい遊ぼうねっ!」
「……スピカ姉ちゃんって、なんやそれ。アハハ」
スピカの奴、案外すんなりネズミのガキどもと打ち解けやがった。緊張が解けたみてえで、笑い声すら上げてやがる。
ボクとルナが初めてネズミの奴らと触れ合った時も――。ネズミたちの優しさと無邪気さに、肩の力がスッと抜けたのを覚えている。スピカもきっと、似たような気持ちニャんだろう。
「さ、とりあえずお茶にしようよ。ね、お父さん!」
「そうしよう。さ、スピカさんも皆さんも、ゆっくりなさって下さいね」
こうして、ボクらはスピカを迎え入れて、また9匹のネズミたちと過ごすことになった。




