第24話〜泣き崩れるネズミの家族〜
すでに夜は明けて、草叢の隙間からは青空が見えていた。鳥の声が聞こえてきた。もうすぐお日様ものぼってくるだろう。
ソールさん、マーズさん、マーキュリーさん、ヴィーナスさんとは、一旦ここでお別れだ。
「ゴマくん! 君はよく戦った! 次はさらに厳しい戦いになるだろう。必ずニャンバラ軍に打ち勝ち、ネズミさんの世界を守ろう!」
「ああ、ソールさん! 絶対ニャンバラの馬鹿野郎どもをブチのめしてやろうぜ!」
ソールさんが前足を振りながら、ボクらを見送ってくれた。
ニャンバラ軍が帰ったから、避難してたネズミたちの姿が見える。遠くに見える大通りには、あの宙に浮かびながら自動で動く円盤形のタクシーが走っているのが見えた。
スピカは口をへの字にしながら、ボクらと一緒に歩いている。ボクはスピカが怪しい動きをしねえか、ずっと見張り続けた。
「せやからもー、大丈夫やて、イケメン。逃げたりせえへんさかい」
「スピカ、テメェ許した訳じゃねえからな。それにボクはイケメンじゃねえ。ゴマだ」
チップたちは、無事ニャんだろうか。あんな辺鄙な所まで、ニャンバラの奴らは攻め寄せたりはしねえだろうが……。置いてきたユキとポコも気がかりだった。
大通りに出ると、母ちゃんが前足を上げて、タクシーを止めた。
「どうぞ、後部座席へ。……って、ネコさん!? まさか、ニャンバラ軍がまだ……」
「いいえ。私は星光団のムーンです。ご安心ください」
タクシーから降りてきた制服姿のネズミに案内されて、ボクらは乗り込む。
やっぱり、前に1つだけある画面に映った地図の、目的地にポンと触るだけで、タクシーは勝手にスィーっと動き始めた。
「ほえー。自分で運転せんでええんや。ほな、そこのネズミさんは何のためにいるん?」
「私たちタクシーの乗務員は、お客さんと会話したりして楽しませるのがお仕事なんです」
「へぇー。実際こうして来てみたけど、やっぱ凄いねんな、ネズミさんの世界って。伝説の理想郷とか言われるだけあるわぁ」
ルナは疲れたのか、じゅじゅさんの腹の上に頭を乗せて、すっかり寝っこけてやがる。じゅじゅさんも寝てるが。
メルさんは、所々煙が上がる街中の景色を見ながら、制服ネズミに尋ねた。
「ネズミさんたちは、みんな無事なんですか?」
「はい。少しずつ避難先にいたネズミは街に戻って来ていますが、今までこんな事はありませんでしたから、住民たちに不安が広がっています。あの住宅地も、めちゃくちゃにされてますね……。お気の毒に……」
制服ネズミが指差した先を見ると。
崩れ落ちた建物の前で、座り込んで泣いているネズミの家族がいた――。
それを見たスピカはすっかり黙って、下を向いてしまった。
スピカは、ボクらを襲った敵だ。それも、元敵軍の精鋭。本当に連れて来て大丈夫ニャんだろうか。今はただ、母ちゃんの判断を信じるしかなかった。




