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もふもふにゃんこ ゴマくんの冒険記  作者: 戸田 猫丸
第3部〜ニャンバリアンの侵略編〜
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第21話〜母ちゃんの思い〜


「喰らえライム!! “ダークブレイク”!!」


 地面に、“暗黒剣・ニャインライヴ”をブッ刺した。嵐みてえな風とともに、衝撃波が周りに広がる。


「……ぐっ!?」


 ライムの苦しそうな声が聞こえた。

 見ると、さすがの巨体のライムも、巻き起こった衝撃波と暴風にあおられて、体4つぶんぐらいの距離まで吹っ飛ばされている。

 すかさず、顔を歪めているライムの方へ駆け寄った。


「思い知ったかライム。今度はボクの渾身のネコパンチをお見舞いして、テメエを懲らしめてやる」

「ゴマ、やめてください!」

「……母ちゃん!?」


 途端に、体が動かなくなった。紫色の光が、オタマジャクシみたいな形になって、体から離れていく――。

 あれ? “暗黒剣・ニャインライヴ”が無え。

 あ! また、“転身”が、解けてしまっている!


「クソ、動けねえ!」

 

 ……顔だけは動かせるみてえだ。振り向くと、追ってきた母ちゃんが険しい顔して、杖をかざしていた。杖が怪しく赤紫色に光っていて、その光がボクの体にまとわりついている。


「母ちゃん、(ニャン)で……」

「ライムを傷つけないで、ゴマ……! 私はライムと……話がしたいのです」


 母ちゃんの声が震えていた。

 必死に体を動かそうとしても、母ちゃんの魔力には(かな)わなかった。ウダウダしてる間に、ライムがゆっくりと立ち上がって、こっちに近づいてくる――。


「少々効いたな。こんなガキも星光団になれるのか」


 ライムは鎧についた土を払いながら、舌打ちをした。

 

「ガキじゃねえ! ボクは“暁闇(ぎょうあん)の勇者・ゴマ”だ! ボクはメルさん、じゅじゅさんの弟だ。だからテメエの弟でもあるんだよ! 同じ家族として、目ぇ覚まさせてやるんだ!」

「貴様と家族になった覚えはねえよ。貴様のように、考え無しに力を振るうだけでは、私の望み……ネズミの世界の占領計画を止める事は、できねえな」

(ニャン)だと?」

「ゴマといったな。貴様には本当の“力”というものを、いずれ思い知らせてやる。偵察はこれで十分だ。私たちは帰らせてもらう。だが次に来る時は、我が軍隊を率いて総攻撃を加え、ネズミの世界を完全に我々ニャンバラが占領するのだ。そして豊かな資源を独占し、大量のネズミを捕獲して、ニャンバリアンの食糧とするのだ。その時に貴様を……そして星光団を、葬ってやろう」

「クソ! 待て、ライム!!」


 ライムが、“ワームホール”の方へと行っちまう……!

 振り向くと、母ちゃんが杖を構えたまま、もう片方の前足で顔を押さえている。「ライム……ライム……!」と、声を震わせている。

 すぐにでもライムを追いたかったが、母ちゃんの魔力のせいでやっぱり動けねえ。母ちゃんは、


「待て! “ワームホール”はどうするつもりだ?」


 ソールさんが“ワームホール”の前へ飛び出し、盾を構えて立ち塞がった。ライムはそのまま止まらずにドデカい剣を引き抜くと、ソールさんの盾にそっと剣の先を当てた。

 ギシギシと音がして、ソールさんが後ろに押されていく。


「邪魔すると、この場で貴様を殺すぞ」

「クッ……」

「ソール、やめろ! 退がれ!」


 マーズさんが叫ぶ。

 ソールさん1匹で敵うはずがねえ。ボクもまだ、母ちゃんの魔力のせいで動けねえ。

 ライムはデカい剣をしまう。ソールさんはうつむきながら盾を下ろして、悔しそうな顔をしながら道を開けた。

 ライムが、“ワームホール”へと向かいながら言い捨てる。


「総攻撃が始まるまで、貴様らはこの平和なネズミの世界でいい子に暮らしてるがいいさ。死ぬ前に穏やかな時間を過ごすのも、悪くはねえだろう」

「待ってや! ライムさん、ウチを助けてよ!」


 ロープに巻かれたままのスピカが、デケえ声を上げた。

 ライムは振り向かずに、足を止める。


「……ゴマは確かに厄介だ。だがスピカ。精鋭ともあろう者なら、デネブとリゲルのように、逃走するという判断ができたはずだ。油断するんじゃねえと何度も言ったのを忘れたか? スピカ」

「いや、ライムさん! ウチは……」

「スピカ。貴様もそこで、ネズミどもと仲良く暮らしてろ。貴様は」

「そんな……。嫌や! ライムさん……」


 スピカが声を上げて訴えかけたが、ライムはその言葉を遮る。


「今をもって、“ニャンバラ軍精鋭・ギャラクシー”ならびに、ニャンバラ軍を解雇する」


 ライムは再び地響きを立てて歩き出し、とうとう“ワームホール”をくぐって、行ってしまった。


 辺りが少しの間、嫌な静けさに包まれた。


「ウソやん……、ライムさん、今までずっと信じてついてきたのに……。ウソやん。そんなん無いわ……、ニャアアアアン!!」


 スピカの泣き声が、さっきまでの静けさを引き裂くみてえに響き渡った。

 ただでさえこの女は声がデケえのに……、耳がおかしくなっちまいそうだ。


「ああっ、“ワームホール”が……!」

「消えてしまいましたね……」


 ソールさんと母ちゃんの言葉を聞いて振り向くと、もうそこには“ワームホール”の影も形も無くなっていた。……って事は、ボクらはネズミの世界に取り残されちまったって事だ。

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