第17話〜秘技・「屁が出る」〜
合体必殺技は空振りに終わった。
ソールさんたちも、もう動けねえ。
ボクも、スピカに捕まっちまった。もっかい“転身”しようと思ったが、どうにも力が出てこねえ。
力づくで振り払おうと思えばできそうだが、動くとボクが撃たれちまう。
「……うああ……兄ちゃん……」
「シッ! ルナ、動いちゃダメよ……!」
声がした方を見る。木陰にメルさんたちの姿があった。無事だったんだ。メルさんもルナも、今にも泣きそうな目でこっちを見ている。じゅじゅさんは呑気に眠りこけてやがるが。
「ほな元気でなあー、あっはっは」
そのままスピカはボクを捕らえたまま、“ワームホール”の方へ走り出した。
だが、ボクにはまだ奥の手がある。このまま連れ去られてたまるかってんだよ。ボクを舐めんじゃねえぞ。
「あ! やべえ! 屁が出る!!」
わざとらしく言うと、スピカが足を止めてパッとボクをホールドしてた前足を離した。
「は、はぁ!? やめえ汚い! 向こう行ってしてきいや!」
ボクは受け身を取ると、すぐにスピカの後ろに回り込んだ。バカめ。作戦成功だ。
「ウソだよ、バーカ!」
「はっ!? しもうた!」
「喰らえ、クソアマ!」
ボクは、振り向いたスピカの顔面を狙って、力いっぱい後ろ足を使って土を掘りまくった。
スピカの白いツヤツヤの顔面と、身につけてる銀色の鎧が、土まみれになっていく。
「うわ! やめてや、せっかく手入れした毛並みが……」
その時再び、ソールさんたちが動いた。
「今だ! みんな動けるか? スピカを捕らえるんだ!」
「おうっ!」
ボクの横を、ソールさんたち5匹が風のように駆け抜けて、土まみれになったスピカを取り囲んだ。
マーズさんがスピカを押し倒し、ロープでスピカの体をグルグル巻きにしていく。
「や、やめて! いやあっ!」
「よし、捕縛完了だぜ」
「よくやった、マーズ。さあ、ひとまず林へ!」
さっきの合体必殺技は、放ってからちょっと時間が経てば、動けるようになるみてえだ。
グルグル巻きにされたスピカは、大きくため息をついた。
「はあー、ウチがこんなヘマやらかすなんて……」
「デネブとリゲルはどうした?」
「“ワームホール”を通って逃げたで。残念やったなあ。ウチとタイタンだけ捕まえても、しゃあないで。それにまだ、【ライム】さんが、もうちょいしたらここに帰って来はるさかいなあ」
デネブとリゲルは、やっぱり逃げちまったか。あの時、もう一発カマして潰しておくんだったぜ。
それよりも、ライムがここに来ているだと?
母ちゃんの話によれば、ライムは、メルさん、じゅじゅさんと一緒に三つ子で生まれた、ボクらの姉貴だ。小っちぇえ時に地底世界に転落して、そこでネコだけの都市“ニャンバラ”を築いたって話だったニャ。
そして今は――。
ニャンバラ軍の総長として、ネズミの世界の侵略の首謀者になってるっていうんだ。
出て来い、ライム。
家族だろうが、関係ねえ。もう一度“暁闇の勇者・ゴマ”に“転身”して、テメエの野望を、ブチ壊してやる。




