第11話〜ワームホールの破壊〜
空がだんだんと白んでくる。
街から、黒煙がいくつも上がっているのが見えてきた。
「いいか? ここに帰ってきたニャンバラ軍を全員食い止め、捕縛する。郊外にある星光団の【仮説基地】は速やかに閉鎖、撤収。我々は捕縛したニャンバラ軍の者たちを連れ、“ワームホール”を通り、ネズミさんの世界から脱出。その後、“ワームホール”は破壊する。これでニャンバラ軍は、ネズミさんの世界へ入ることはできなくなるはずだ」
ソールさんの説明を聞いてて、1つの疑問が浮かんだ。
“ワームホール”を破壊する……?
ネズミたちの世界から外に出てから、“ワームホール”をブチ壊すニャんて事しちまうと――。
もう、チップたちには会えねえんじゃねえのか……?
母ちゃんはメルさんたちに、今後の行動について話している。
「メルたちは、ソールたちと一緒に“ワームホール”を出て、先にアイミ姉さんの所に帰っていてくださいね。私はお世話になったネズミさんの所にいるユキとポコを迎えに行き、後から帰ります」
「わかった、母さん! 気をつけてね」
ボクは母ちゃんに、さっき抱いた疑問をぶつけた。
「なあ母ちゃん、もし“ワームホール”をブチ壊したら、もうボクらは、ネズミたちの世界には行けなくなるのか……?」
「はい。そういう事です」
母ちゃんは、あっさりとそう返した。そんニャ……!
「それじゃあ、アイツら……、チップたちの家族とは、もう会えねえのかよ!」
「仕方ありませんが、そういう事です。でも、皆さんの安全が第一です。どうか受け入れてください、ゴマ。代わりに私が、ちゃんと挨拶しておきますから」
そりゃねえぜ。
このまま、もう二度と会えなくなっちまうのかよ……。
あの時、涙を流して森の中へ消えて行った、ニンゲン――マサシの姿が頭の中に浮かんだ。
アイツも、もう二度とネズミたちの世界には来れねえと聞いた。だが、チップの奴は――また会えると信じてやがるんだ。
ボクもルナも、チップたちと仲良くなれたんだ。ニャのにもう、会えなくなるニャんて。しかも二度と会えねえニャんて……。またチップとナナに、おんなじ思いをさせちまうじゃねえかよ! また泣きべそかいちまうじゃねえかよ!
「そんなの、無えよ!!」
思わず叫んぢまった。ソールさんたちやメルさんたちがびっくりして、ボクを見た。構わず、ボクは思いを母ちゃんにぶつけ続けた。
「ネズミのみんなはいい奴らだった。また会いてえ。もう一度あいつらと、冒険してえ。あそこは、ボクの居場所ニャんだ。その作戦、反対だ!」
母ちゃんは何も言い返さず、困った顔してうつむいてしまった。無理もねえ、ボクの勝手なワガママだ。
案の定、メルさんがボクを叱りつけてきた。
「ゴマ! 勝手なこと言っちゃダメ! またいつニャンバラ軍が攻めてくるかわからないのよ!? ここでちゃんとトンネルを壊しておかないと、またニャンバラ軍がネズミさんの街に攻めてきて、あのネズミさんの家族も……殺されちゃうかもしれないのよ!?」
「そんなの分かんねえじゃんか、メルさん! もっとマシな作戦ねえのかよ!? ボクも戦うから! アイツら攻めてきたら、ぶっ潰せばいいだけだろ? そうだろ!?」
「ちょっとゴマ、落ち着きなさい!」
うっかり、声をデカくしてしまった。落ち着けボク。ルナも悲しそうな顔してる。
何か、何か手段があるはずだ。
……そうだ、ミランダだ。
ミランダは、“ワープゲート”を使えるように練習してるとか、言ってたんだ。“ワープゲート”を使えば、またこのネズミたちの世界と、行き来できるかもしれねえ。
帰る前に、ミランダに会っておこう。
「声が大きいな。やはりいたか、星光団」
しまった。
ボクのデカい声のせいで、敵に気付かれていたらしい。
茂みの中から、3匹の武装したネコが、姿を現す。




