第29話〜チップの夢〜
「おーきーてー! ゴマくん! それー!!」
「うぎゃあっ!?」
気持ちよく寝ていたら、いきなり背中に何かが乗っかってきたので、思わず悲鳴を上げちまった。
「……チップ! テメエ!! そんニャ起こし方があるか!!」
「あはは、ごめんごめん。びっくりさせちゃった? もう朝ご飯の時間だよー! みんな揃ってるよ!」
もう朝か。ちょっと早くねえか? いつもならもう少し寝てる時間ニャんだが……。
ボクは目をこすりながら、ルナの奴を探した。ルナは先に起きて、朝飯作りの手伝いニャんかしてやがる。すっかり、ネズミどもと馴染んでやがった。
仕方ねえな。ボクも朝飯作りを手伝ってやるか。力合わせて生活するって話だからな。
「みんな揃ったね。いやあ、ゴマくんルナくんが手伝ってくれたおかげで早く朝ごはんの支度ができたね。じゃあ、いただきまーす!」
「いただきまーす!」
ネズミたちは、みんなとても早起きだった。
いつもならぐっすり気持ちよく寝てる時間だってのに、チップに叩き起こされ、朝っぱらから野道を歩いて近所のネズミのオッサンのとこへ木の実やら何やらを貰いに行かされ……それが終わってから、やっと朝飯にありつけるのかよ……。
だが、この世界の朝の空気は、めちゃくちゃ清々しくて気持ち良かった。
「冬も近いし、今日は山まで食べ物たくさん取りに行かない?」
「いいわね。みんなで行く?」
「さんせーい!」
……ネズミどもが何か決めてやがる。これ、絶対ボクらも行かされる流れじゃねえか。今日くらいゆっくり寝かせてくれよ……。ここ連日の事で疲れてんのに。
それに今日ボクらは、母ちゃんやメルさんたちと合流する日ニャんだ。順調にこっちに向かってれば、夕方には会えるはずだ。
ボクは青い青い空を見上げながら大きくあくびをして、秋の森の澄んだ空気を思いっ切り吸い込んだ。
「さあ、しゅっぱーつ!」
「しゅっぱーつ!!」
結局、昼から食い物集めについて行く事になっちまった。
長ったらしい山道を歩いて行くらしい。ミランダに、4足歩行にしといてもらったら良かったぜ……。
「たくさん運ぶから、手分けしようね、ゴマくん」
「おうよチップ……、しゃあねえニャア」
「えへへ、楽しみ」
「お前ら元気だな、ほんと」
「うん! 毎日がすっごく楽しいんだ」
「チッ、羨ましいぜ。こっちニャんか毎日苦労の日々だぜ」
「だって、みんなと暮らすのが嬉しいし。僕にはおっきな夢もあるし」
「夢だと? どんな夢ニャんだ」
「えへ、お父さんみたいに、今よりもっとおっきな家にたっくさんの家族で住むんだ。そして、マサシ兄ちゃんとまた会うの」
「ふぅーん。そりゃご大層な夢だな。そうだ、そのマサシとやらって、一体何者ニャんだ?」
ボクは、ずっと気になっていたマサシの正体について、聞いてみた。
何で、ニンゲンがこのネズミの世界にいたのか。何で、ネズミと同じサイズになってやがったのか。何で、ネズミたちと仲良さそうに馴染んでやがったのか。
「マサシ兄ちゃんはね、……大切な友達なんだ。一緒にご飯作ったり、“ヒミツキチ”で遊んだり、歌を歌ったり、【Chutopia2120】っていう都会へ出かけたりしたんだよ」
チップは、嬉しそうに答えやがる。
「ふうん、楽しそうだニャ。……って、ボクが聞きたいのはそうじゃねえよ。マサシが何者なのかが知りてえんだ。何のために何処から来たのか、とか」
「うーん、おじいちゃんが言うにはね、ニンゲンとしての本当の生き方を思い出すため……とかだった気がする」
ニンゲンとしての本当の生き方を思い出す? そのためにこのネズミの世界に? ちょっと意味が分からねえ。この事はまた後で、ネズミのじいちゃんに詳しく聞く事にするか。
そんでもう1つ、気になる事を聞いてみよう。
「お前、マサシとまた会うって言ったが、マサシはまたネズミの世界に来やがるのか?」




