第30話〜山で食いモン集め〜
「……うんん。おじいちゃんが言うには、マサシ兄ちゃんはもう二度と、こっちの世界に来れなくなっちゃったみたい」
何だと?
あれっきり、マサシとはもう会えねえってのか……?
泣いてるマサシとチップたちを見たルナが、チラッとそういう事を言ってたが……まさかホントにそうだったニャンて。
確かにマサシもチップもお互い1番の友達だとか、別れ際に言ってたよな。なのに何でだ……。そんなのって、悲しすぎるじゃねえかよ。
「……だからあんなに泣きべそかいてたのか」
「ゴマくん見てたの!? ……でもね。また会う約束したんだ。大丈夫、マサシ兄ちゃんはきっと会いに来てくれる」
「……そうか。ま、どっかで会えるとイイよな」
「こっちに来れないなら、僕らがマサシ兄ちゃんに会いに行けばいいんだ。きっと何か方法があるはずさ!」
……そうやって何かを信じる奴の瞳って、すげえキラキラ輝いてんだ。ボクはチップのその瞳を見て、ちょっとだけ心を打たれちまった。
そういえば、ミランダの奴、確か魔法で“ワープゲート”を使えるように練習してるとか言ってたな。もしかしたら、マサシに会いたいというチップの願い、叶うんじゃねえのか……?
そんニャ事を考えているうちに、目的地に着いちまったようだ。
ネズミの父ちゃんが仕切る。
「さあ、着いた着いた。まずは松の実チームと、きのこチームに分かれよう。いい具合に集まったら、みんなここに集合でいいかい?」
「さんせーーい!!」
松の実チームはネズミの父ちゃんと、きのこチームはネズミの母ちゃんと一緒に行くみてえだ。ボクはどっちに行こうかニャ。
それにしても、ネズミの父ちゃん母ちゃんも、じいちゃんもばあちゃんも、チップたちに負けねえぐらい元気だ。それにみんな、素直というか単純というか……言い方は悪りいが、悩みニャんか無さそうだ。
「ルナくん、きのこ組なのね。一緒に行きましょ」
「はい! たくさん集めましょう、モモさん」
「じゃあボクは松の実組だ。よろしくだぜ、トム」
「ゴマくん、よろしくね!」
「みんな、たくさん集めようね! じゃあしゅっぱーつ!」
「おー!」
ボクらは、山の中をうろつきながら、松の実の他にも色々な山の食い物を、カゴにたくさん集めて回った。
……ふん、こんだけ集めりゃ上出来だろ。
「すごいねゴマくん。よくこんなに集めたね」
長男のトーマス――トムが話しかける。
「ゴマでいいぜ。このぐらい余裕だ。匂いで松の実の場所もわかるからニャ。トムも、なかなかやるじゃねえか」
「トムって呼んでくれて嬉しいな! いやあ、運ぶのが大変だよ」
「本名もちゃんと覚えたぜ。でもトムって呼んで欲しいんだったニャ。……ってかトムお前、持ちすぎニャんだよ、少し分けろ。さ、早く集合場所へ戻るぜ」
ボクも、少しずつ馴染めてきたっぽいぞ。こんな賑やかな家族も、悪かねえ。
「ありがとう。ゴマくんルナくんのおかげでずいぶん助かったよ」
カゴいっぱいの松の実ときのこ、他にもでっけえ栗の実や色んな木の実を持って、ボクらは再び集合した。冬を越すために、毎年こんだけ集めるんだそうだ。
「よくこれだけ集めてくれたわねえ。ほっほ、ゴマくんにルナくんや、みんなとも仲良くなったようね。ありがとうね」
ネズミのばあちゃんは、水筒のお茶を飲みながら、笑いかけてきた。いっぱい歩き回ったはずニャのに、疲れひとつ見せねえ、元気なばあちゃんだ。
「ふん、ボクらにかかりゃあこんぐらい余裕だぜ」
「はい、とても楽しかったですよ。こんな体験ができるなんて」
正直言って、めちゃくちゃ楽しかったんだ。
普段のネコ生活じゃあ、こんニャ体験は絶対に出来ねえ。それに、ネズミサイズで見る景色は、とても新鮮だった。普段見慣れている草花や虫やなんかが、何倍もデケえ。ボクよりもデカかったりする。見てるだけで面白え。
「さあ、日が暮れる前に帰ろうー!」
またみんなで、険しい道を歩いて山を下りていく。チップたちは相変わらず、元気にはしゃぎ回ってやがった。
林を出て、ネズミたちの家が見えてきた。
その時だった。
庭の方から、何だか聞き覚えのある声がする――。




