第3話〜森の奥にあった、光のドーム〜
また、雪が降ったらしい。
雪道に足跡をつけながら、ボクとルナはプレアデスの後をついて行く。
寒みぃー……。
真冬の夜の空気が、体に突き刺さってきやがる。
「やっぱり慣れないなあ、この格好」
覚束ない足取りで、プレアデスは先頭を4本足で歩いて行く。
「そりゃそうだろうよ。プレアデス、お前は地上来るの初めてなんだよな?」
「うん。思ってた世界と全然違った。建物、すっごく大きいんだね」
「そりゃデカいさ。ニンゲンが住んでるんだからな」
「ニンゲン……見かけたよ。服を着て2本足で歩く……言い伝え通りの姿とはちょっと違った。何か言いながら近付いてきたから、思わず逃げちゃったよ。ニンゲンは野蛮な生物だと思っていたけど、僕たちと同じように文明を築いていたんだね」
「言ってる事がよく分かんねえが、ボクらの飼い主のアイミ姉ちゃんは、優しいニンゲンだ。いずれ紹介してやる」
話しながら歩いてると、いつも散歩する時に行く神社のそばを通りがかった。
広場の隅にある祠が視界に入る。
祠の裏の地面には――。
(あった。“ニャンバラ”へつながってる、大穴だ)
大穴は、相変わらずデッカく口を開けていた。
周りが暗いから、昼間見た時よりも余計に不気味だ。
「プレアデスよ、見てみろ。あの祠の後ろに、でっけえ穴があるだろ? あそこからボクらは、地底の街“ニャンバラ”とやらに転がり落ちたんだよ」
そう言った時、プレアデスは穴の方へと駆けて行った。
「おい待て! 危ねえぞ!」
ボクらは後を追いかける。
プレアデスめ、ちょっと4本足で歩き慣れたかと思ったら、意外と足が速え。
「……こんな所に、入り口があったんだね」
プレアデスは穴のギリギリ端っこに座り込み、中を覗き始めやがる。危ねえってのに。
「ルナ、お前は後ろにいとけ」
「わかってるよ……。ちょっとトラウマだよ、この穴」
「プレアデスも、その辺にしとけ」
聞こえてねえのか。座り込んだまま「うーん、この穴……」とか言いながら、じっと真っ暗闇の穴を覗き込んでやがる。
「おい、聞いてんのか! お前、結構間抜けなんだからよ、せっかく苦労して地上へ来たのに落ちたらどうすんだ」
そこまで言うと、プレアデスはムッとした顔をしながら立ち上がった。
ようやく穴から離れやがったぜ。ったく。
「……間抜けは余計だよ。それにしても、どうして、こんな所に入り口が……。ゴマくん、ルナくん、穴の中はどうなってたんだい?」
色々知ってそうなプレアデスも、この穴の事は知らねえのか。
まだ少し寝ぼけた頭で、穴に落ちた時の事を思い出してみる。
「必死だったからあまり覚えてねえが、多分氷で出来た長え滑り台を滑って行ったんだよな。で、気付いたら“ニャンバラ”の空き地にいたんだよ」
「なるほど……。地上と地底を繋ぐ入り口は、誰にも分からないように隠されているはずなんだけどね。後でプルートに報告しよう。さあ、早く“伝説の理想郷”のある場所へ行かなきゃ。こっちの森の中だよ」
「あ、おい待て!」
走れるようになったのをいいことに、今度は風のように4本足で森の方へ駆けて行っちまう。
プレアデスめ、アイツなかなか周りを振り回すタイプのネコだな、全く……。
プレアデスに追いついたボクらは、神社の奥にある真っ暗な森の奥へと、草をかき分けひたすらに進んだ。
積もった雪の冷たさが手足に刺さる。寒みい。痛え。早く暖けえ所で丸くなりてえ。
しばらく歩いていると、木立ちの隙間から、白い光が漏れているのが見えてきた。
「……兄ちゃん、あれがもしかして?」
開けた場所に出た。
そこで目に入ったのは――。
何と、ボクらより何倍もデカい、ぼんやりと白く輝く光のドームがあったんだ。
信じられねえ光景に、ボクは何も言えなくなっちまった。




