第2話〜新しい冒険へ〜
夢で見た、ボクの母ちゃん。
名前は確か、“ムーン”だった。
あの5匹のネコ――“星光団”の一員で、妙な格好をしていた。
もしあれも正夢だったら、母ちゃんと一緒にボクも変身して戦うんだろうか。最初に見た夢では――紫色の光に包まれて変身したボクが、地面にウジャウジャ群がる泥人形に向けて大技を出して地面をブチ割って、一気に倒したんだ。
あれは最高の気分だったニャア――。
「兄ちゃんてば!」
「……あ、悪りい」
ルナの声で我に返った。
もう朝かと思ったが、周りはまだ真っ暗だ。
「何だよ、こんな時間に起こしやがって……ん?」
段ボールから顔を出すと、見覚えのあるキジトラのネコの姿があった。
「にぃあおおお!」
そのキジトラ野郎は、ニンゲンみたくピシッとした黒い服を着せられながら、ニャーニャー言ってやがる。何だその服は? 飼い主の趣味か? ……いや違う。コイツは……。
「兄ちゃん、プレアデスさんだよ」
「げ、生きてやがったのか」
プレアデスは鳴くのを止め、突然言葉を喋り出した。
「ふう、やっと見つけた。ここがゴマくんたちの家かい?」
「……てっきり死んだと思ったぜ」
プレアデス。
服着て2足歩行で歩くネコだけが暮らす地底都市“ニャンバラ”で出会った、キジトラ野郎だ。
だが何故か、ボクらと同じように4足歩行でフラフラと、ボクの方へ寄ってきやがる。黒い服を着たまま。
ああ、そうだ。2足歩行になれるのは地底世界だけだって、言ってやがったな。
「プレアデスお前、服着たままその辺うろつくと、ヘンに見えるぞ」
「だって、さすがに服も着ずに外を歩くのは抵抗あるよ……。それにプルートの言う通り、地上だとこの歩き方になっちゃうんだね。全然慣れないよ……。あ、それより!」
プレアデスはぎこちなく、その場に座った。
「君たちに頼んでた事、覚えてるよね?」
「ネズミさんの住む“伝説の理想郷”へ、プレアデスさんと一緒に行くんですよね。“ニャイフォン”を使って、ネズミさんたちがどんな暮らしをしているかを調べてくるんでしたっけ。あ、でも“ニャイフォン”失くしちゃったよ……」
ルナが、申し訳なさそうにうつむいた。
「覚えててくれてありがとう、ルナくん。“ニャイフォン”はまた用意したから、心配いらないよ。さあ、ゴマくん、ルナくん。急いで“伝説の理想郷”のある場所へ行こう」
「あ? もうテメエらに付き合わされるのは懲り懲りなんだよ。せっかく、無事に帰って来れたのによ」
こっちは死にかけたんだ。まだそんなお願いできるたあ、図太い神経してやがる。
「お願い。僕らの住む地底世界を救うため、君たちの力が必要なんだ」
「兄ちゃん、プレアデスさんすごく困ってるみたい。それに、頼まれた事を終わらせてから棲家へ帰る約束だったじゃん。行こう?」
ルナもルナで、おネコ好しが過ぎるぜ。あんだけ怖がってやがったのは誰だよ。
資源が無くなって戦争状態になっちまった地底の街“ニャンバラ”のネコどもが、地上のどっかにあるネズミの住むリソーキョーに移住するとか言う話だったな。そこのネズミどもは、これまたニンゲンみたく服着て喋るんだとか。
最新技術とか何とかで、ネズミと同じサイズになって、一緒に暮らすとか言ってたっけ。
バカかっつうの。ネズミはネコのエサだぜ。一緒に暮らせるわけねえだろ。
そもそも、今から行くったって、そんなに近くにあるもんなのか?
プレアデスの奴は、地面に頭をくっつけてやがった。
「お願い! 君たちの力が必要なんだ。無理はしなくていい。でも、今は時間がないんだ。……お願い!」
アイミ姉ちゃんから教えてもらったよ。それ“ごめん寝”のポーズだ。
「兄ちゃん!」
「……ったく、仕方ねえな!」
さすがに、ここまで頭下げられて無視するのは、後味が悪りい。
それに、全く知らねえ世界への冒険ができると思うと、ちょっとワクワクしちまってるボクがいる。
もう危険な目に遭うのはこりごりだが、あの“ニャンバラ”へ行くわけじゃねえんだ。
服着て喋るネズミの住む世界。面白えじゃねえか。腹が減ったら捕まえて食えばイイし、メシにも困らねえ。
「分かった。案内しろ、プレアデス」
「ゴマくん、ルナくん! ありがとう! じゃあ、行こう。ついてきて」
静かに雪が降る、夜明け前。
ボクらはそーっと、出発する。
「メルさん悪りい。謹慎中だが、ボクはまた出かける。全てが終わったら、プレアデスの奴をボコボコにしてやっていいからよ」
丸くなって寝ているメルさんに向かってボクは小声で言ってから、棲家のガレージを後にした。




