第1話〜ボクの母ちゃん〜
……ん?
どこだ、ここは。
周りは、真っ暗だ。
「みんな行くぞ! “転身”だ!」
「「「「応ッ!!」」」」
「「「「「聖なる星の光よ、我に愛の力を!」」」」」
うわッ、何だ……?
ボクの近くで、5匹のネコが何か叫んで、光に包まれていきやがる。
目を凝らして見ると――白ネコ、白黒柄のネコ、茶トラネコ、サバトラネコ、三毛ネコの5匹みてえだ。
「天光の騎士……【ソール】!」
「望月の魔導士……【ムーン】!」
「灼焔の戦士……【マーズ】!」
「六華の忍び……【マーキュリー】!」
「啓明の癒し手……【ヴィーナス】!」
「「「「「もふネコ戦隊! 【星光団】!!」」」」」
5匹のネコどもは光に包まれながら、一瞬にして鎧やら刃物やら、丈の長え服やら杖やら、他にも訳の分からねえ衣装に着替えた。
そしてみんな、後ろ足だけで立ってやがる――。
思い出したぞ。
夢で会ったネコども――“星光団”だ。
リーダーは白ネコの、ソールとかいう名前のヤツだったな。
ん? ボクも、後ろ足だけで立てる。
ネコが2足歩行できる世界……って事は、ここはまたあの地底世界――“ニャンバラ”か?
5匹のネコどもを包んでいた光が治まると、空の様子が見えた。
星1つねえ、真っ黒い空。
間違いねえ、やっぱり、“ニャンバラ”だ。
そうだ。夢ではボク、“暁闇の勇者・ゴマ”として、“星光団”と一緒に戦ったんだ。最強の力で、敵をブッ倒したんだった。あれが正夢だとしたら――。
「……ゴマ!」
考えようとした時、誰かがボクの名前を呼んだ。
「ゴマ、やっと会えましたね。あなたも一緒に戦いに……来たんですね」
話しかけてきたのは、目の前にいる5匹のうちの1匹――ボクと同じ柄の白黒ネコだった。
とんがった紫色の帽子をかぶり、キラキラした丈の長え紫色の服を着て、木の杖を持っている。
このネコ、どっかで見覚えがあるぞ……?
「大きくなりましたね、ゴマ。これからは私たちと一緒に、世界の平和のため、戦いましょう」
「……母ちゃん?」
無意識に、口に出してしまった。
言われずとも分かる。このネコ……! ボクの母ちゃんだ!
「私の大切な息子、ゴマ……! あなたのお世話をメルに任せっきりにしてしまい、ごめんなさいね。本当はもっとゴマと一緒に過ごしたかったのですが、“星光団”での活動を休むことが許されなかったのです」
「母ちゃん! “星光団”って、一体何なんだ!? やっぱりボクも、変身できるのか!?」
「“星光団”とは、世界の平和を脅かす者たちと戦う団体です。私は“星光団”のサブリーダー、望月の魔導士“ムーン”です。“ムーン”という名は、ニンゲンのアイミさんに拾われ、名付けられました」
じゃあ、母ちゃんも、アイミ姉ちゃんに育てられてたって事か。
そうだ……思い出した。母ちゃんは、“ムーン”って名前だった。時々メルさんが、話に出してたんだ。
何か言おうとしても言葉にならず、「うう……」と唸る事しかできねえ。
顔も知らねえ母ちゃんに会えたんだ。
思わずボクは、母ちゃんに抱きついた。
「本当に大きくなりましたね……」
「母ちゃん、ボク……」
あれ……。
だんだん意識が遠のいていく……。
母ちゃんの声が、頭ん中に響きながら、消えていく――。
「……ちゃん、兄ちゃん! 起きて!」
「ん……ルナ、もう朝か……?」
ボクは、段ボールの中で目を覚ました。
前足でボフボフ背中を叩いていたのは、ルナだ。
周りはまだ暗い。真冬の風が吹きつけてくる。
ここは、アイミ姉ちゃんの家のガレージ――ボクらの棲家だ。
見回してみたが、母ちゃんの姿はどこにもない。
やっぱり、夢だったか……。




