第七章:四天王・水棲のディーバ現る。魅了魔法と『押し順ミス』の罠
俺が引き裂かれたアリアちゃんの服を上着で隠したその時、近くの湖の水面が激しく爆発した。
ザッパーーーン!!
現れたのは、下半身が巨大な蛇、上半身が妖艶な美女の姿をした魔物。
魔王軍四天王の一角、『水棲のディーバ』だった。
先ほどのアシッド・バルチャーは、こいつのペットだったらしい。
「ウフフ、よくぞ我がナワバリへ来たわね、人間の勇者。
私がたっぷり『可愛がって』あげるわ」
ディーバが妖しく腰をくねらせると、彼女の瞳がピンク色に怪しく光った。
「喰らいなさい! 『魅惑の狂詩曲』!」
脳を直接とろけさせるような、甘い歌声が響く。
視界がピンク色に染まり、俺の身体が勝手にディーバの方へと歩き出しそうになる。
身体が熱い。彼女の蛇の胴体に巻き付かれ、そのまま骨の髄まで愛撫されながら溶かされたいという衝動が襲う。
「くっ……これが、魅了魔法……!」
『敵の急襲を確認。バトルAT「四天王決戦」に突入。投資:魔力10枚』
『ナビゲーション発生:【左・中・右】の順番にボタンを押してください』
脳内にシステム音が響く。だが、魅了のせいで手元が狂う!
「あ、頭がぼーっとする……! ええい、真ん中からだッ!」
俺は朦朧とする意識の中、パチスロの基本である「押し順ナビ」を無視して、直感で真ん中のボタンを押してしまった。
『デレレレレン!!!(激しい警告音)』
『警告:押し順ミス! ペナルティが発生します。
3ターンの間、攻撃力・防御力が大幅に低下し、ベース魔力が没収されます』
「しまっ……! ペナルティだと!?」
パチスロにおいて、ナビを無視する「ペナルティ」は致命傷だ。
その瞬間、俺の身体から力が完全に抜けた。
「あら、自分から私の胸に飛び込んできてくれるのね? 嬉しいわぁ」
ディーバの太い蛇胴が、俺の身体にギリギリと巻き付いた。
みし、みし、と肋骨が悲鳴を上げる。
肉が潰れ、口からどろりとした鮮血が溢れた。
「ガハッ……!」
「ウフフ、いい声。そのまま私の胃袋の中で、ドロドロに溶けて一体になりましょう?」
ディーバの割れた口から、長い舌が俺の頬を舐めあげる。
ペナルティのせいでスキルも発動しない。
完全に詰んだ、かのように思えた——。




