第五章:天国モードとゾーン狙い
「ハァ……ハァ……」
シャドウ・ウルフ3匹を倒すのに、なんと300G(300回の斬撃と回避)も費やしてしまった。
設定1の恐ろしさを身を以て知った俺は、息も絶え絶えに宿屋の床に突っ伏していた。
「勇者様、お疲れ様です……。
今日はなんだか、とても地味な戦いでしたね……」
「言うな。俺が一番傷ついてる」
だが、倒した狼からドロップした魔石を拾い集めていると、
俺の『スロット・マニアック』の解析眼が、ある情報を捉えた。
【シャドウ・ウルフ討伐数:3匹】
【現在、滞在モード:天国モード(128G以内に高確率で強力な魔物が乱入&撃破時報酬アップ)】
「……ん? 天国モードだと?」
パチスロにおける『天国モード』。
それは、特定のゲーム数(条件)に到達するまで、大当たりが約束される夢のような状態のことだ!
「聖女ちゃん! この町で今、一番厄介な事件や魔物はいないか!?」
「え? えっと、町の外れにある廃坑に、強力な『ロック・ゴーレム』が棲み着いていて、
誰も手が出せないと冒険者ギルドで……」
「それだ!! 行くぞ聖女ちゃん!」
「ええっ!? さっきまであんなに疲れていたのに!?」
俺は立ち上がり、猛ダッシュで宿屋を飛び出した。
設定が1だろうが関係ない。
システム上『天国モード』に滞在している今なら、
浅いゲーム数(戦闘開始直後)で必ず大当たり(必殺技)が引けるはずだ。
これがパチスロで生き抜いてきた男の戦い方。
期待値のある場所だけをピンポイントで刈り取る、『ハイエナ』の極意だ。
廃坑に到着すると、そこには岩山のように巨大なゴーレムが鎮座していた。
「ゴォォォォ……!」
「デカいな……だが、お前はすでに『ゾーン内』だ!」
俺はゴーレムに向かってダッシュし、空中のレバーを力強く叩き下ろした。
天国モードの恩恵により、リールがぬるりと滑る。
ズルンッ!
左リールに『スイカ』が停止。
「きたぜ、レア役! しかも天国滞在中だ!」
タタンッ!
『ピキーン! 契機:スイカ揃い(天国モード中)』
『恩恵:ビッグボーナス(大爆発魔法)確定!』
空中に巨大な魔法陣が展開され、極大の炎がロック・ゴーレムを包み込んだ。
「ゴ、ゴァァァァァッ!?」
「よっしゃあ! これが期待値稼働の力だ!」
炎の海の中でゴーレムは崩れ去り、大量の純度の高い魔石がゴロゴロと転がり落ちてきた。
「すごい……! さっきまでの苦戦が嘘みたいです!」
「ふふん。パチスロってのはな、設定がなくても『知識と立ち回り』で勝てるんだよ」
俺はドヤ顔で魔石を拾い集めた。
よし、この調子でゾーンや天井だけを狙い撃ちしていけば、魔石を貯めて再び『設定6』を掴み取れる日も近い!
魔王討伐への道は、まだまだ長い。




