第四章:新装開店の魔法は解けた! 恐怖の『設定1』と通常営業
「ふぁぁ……よく寝た」
翌朝。俺は宿屋の硬いベッドで目を覚ました。
昨日のミノタウロス将軍討伐の報酬で、聖女ちゃんと一緒にまともな宿に泊まることができたのだ。
「さて、今日の『設定』はどうするかな」
俺は固有スキル『スロット・マニアック』のウィンドウを開く。
このスキルは1日1回、自分の運気と出力を設定1〜6に書き換えられるチート能力だ。
当然、今日も『設定6』を選んで無双するつもりだった。
「よし、設定6をポチッとな……」
『ピガッ! エラー:魔石が不足しています。』
「……はい?」
『システム通知:昨日の設定6は「異世界転生特典(新装開店)」による無料サービスでした。
本日から設定6への変更には「魔石10,000個」が必要です。
現在所持:500個。』
「ふざけんなぁぁぁ!!
パチンコ屋の『新装開店の翌日は露骨にガッツリ回収してくる』
あの悪習を異世界でまで再現すんな!!」
俺の絶叫を聞きつけ、隣の部屋から聖女ちゃんが慌てて飛び込んできた。
「勇者様!? どうしたのですか、敵の襲撃ですか!?」
「いや、もっと恐ろしい目に遭ってる……!
ボッタクリ店(異世界)の通常営業だ!」
『魔石不足のため、本日の設定は強制的に
「設定1(ベース:極低)」に移行します』
空中に浮かぶ俺のステータス画面が、まばゆい虹色から、
どんよりとした青色に変わった。
設定1。
それはパチスロにおいて最も恐ろしい数字。
初当たりは重く、何百回とレバーを叩いても何も起きない地獄のモードである。
「ゆ、勇者様、なんだか顔色が悪いですが……」
「聖女ちゃん、今日は絶対に強い魔物と戦っちゃダメだ。
俺、今日はマジで『引き』が死んでるから」
その時だった。
宿屋の窓枠をぶち破り、素早い動きで3匹の『シャドウ・ウルフ』が
飛び込んできた。魔王軍の残党だ!
「グルルルルッ!」
「キャァァァ! 勇者様!」
「くそっ、やるしかないか! バトルAT突入!」
俺は空中のレバーを叩いた。
カチャッ。(リール回転)
タン、タン、タン!
『バラケ目』
俺の剣は空を切り、狼に避けられる。
「も、もう一丁!」
カチャッ! タン、タン、タン!
『リプレイ(再行動)』
俺はただステップを踏んで元の位置に戻っただけだった。
「勇者様! 昨日のような圧倒的な光の剣はどうしたのですか!?」
「設定1を舐めんな! 何も起きねぇんだよ!! オラァァ!(レバー強打)」
カチャッ! タン、タン、タン!
『ベル揃い:払い出し(小回復)』
チャリン、と俺の頭上に小さなポーションが落ちてきて、
すかさずそれを飲んで狼の爪によるかすり傷を治す。
「これ、ジリ貧じゃねーか!!」
俺とシャドウ・ウルフの、果てしなく泥沼な『通常時』の攻防が始まった。




