第三章:天井を狙う魔王軍幹部
魔王軍の斥候をワンターンキル(1周期当選)した俺は、
聖女から「伝説のレバー使い」として崇められ、
そのまま魔王討伐の旅に出ることになった。
数日後。
俺たちは魔王軍の関所に辿り着いていた。
そこにいたのは、筋骨隆々の魔王軍幹部、ミノタウロス将軍。
「ふははは! 噂の勇者か! ここから先は通さん。我が斧の錆にしてくれるわ!」
将軍は凄まじい覇気を放っている。
レベルは明らかに俺より上。
普通に戦えば勝てない相手だ。
しかし、俺の『スロット・マニアック』の目が、
将軍の頭上に浮かぶ「ある数値」を捉えた。
【ミノタウロス将軍】
・現在ハマリゲーム数:890G
・天井:900G
「……おいおい、マジかよ」
俺は思わず口元を緩ませた。
「勇者様? 敵は強大です、お気をつけて!」
聖女が心配そうに声をかけるが、俺はにやりと笑って一歩前に出た。
「聖女ちゃん、心配ない。あのボス……『激熱の天井間際』だ」
「てん、じょう……?」
俺はミノタウロス将軍に向かって叫んだ。
「おい将軍! お前、あと10歩歩いたらどうなるか分かってんのか!?」
「ぬ? 何を愚かなことを。あと10歩で貴様の間合い……フンッ!」
ドシン、ドシン、と将軍が斧を構えて歩いてくる。
90G、91G……99G……。
「あと1歩だ……!」
将軍が力強く地面を踏みしめた瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
「ぬおっ!? な、なんだ、急に体が動かん……!?
体の底から、禍々しい魔力が勝手に溢れ出てくるぞ!?」
将軍の体が黒いオーラに包まれ、強制的に膝をついた。
『ターゲット:天井到達。
恩恵「強制発動:全設定1以下へ格下げ & 防御力ゼロ」が発動します』
「な、何が起きたのだ!?
我が魔力が、我が力が吸い取られていく……!?」
「パチスロの世界じゃなぁ、天井直前で拾われた奴は、
あとはむしり取られるだけなんだよ!」
俺はすかさずレバーを叩いた。
設定6の俺の引きは、今日も冴え渡っている。
「確定役、降臨」
ドガァァァン!!!
神の雷が関所ごとミノタウロス将軍を直撃した。
「そんな馬鹿なァァァ!
我は魔王軍四天王の一角だぞぉぉぉーーーッ!?」
大爆発を起こし、将軍は一撃で消え去った。
あとに残ったのは、大量の魔石だった。
エピローグ:そして伝説へ
「さすが勇者様です! まさか魔王軍の幹部を、
指先ひとつ(レバーオン)で葬り去るなんて!」
目を輝かせる聖女。
「まあね。でも、設定6の賞味期限は今日までだからさ。
明日は設定1かもしれないから、大人しく軍資金(魔石)を貯めないとね」
俺はジャラジャラと音を立てる魔石を袋に詰めながら、遥か彼方の魔王城を見据えた。
「待ってろよ魔王。お前の『期待値』、俺が全部ハイエナしてやるからな」
こうして、異世界でレバーを叩き続ける男の、
万枚(世界平和)を目指す旅が始まった。




