第四十章:魔王の玉座。世界のシステムを管理する巨大なサーバールーム
親衛隊長を突破した俺たちが辿り着いたのは、魔王城の最深部──。
しかし、そこに広がっていた光景は、ファンタジー小説にありがちな『薄暗い骸骨の玉座』などでは到底なかった。
「な、何ですか……ここは? 鉄の箱がたくさん並んでいて、青や緑の小さな光がチカチカと点滅しています……」
アリアちゃんが、寒々しい金属音の響く部屋を見渡して首を傾げた。
「……冷たい風。部屋全体が、不自然に冷やされている。システムを冷却するため?」
エルがマントを抱え込み、寒さに身を震わせる。
四方を黒い金属製の筐体──巨大なサーバーラックに囲まれた空間。
数千、数万の細い通信ケーブルが床を這い、部屋の中央にある巨大なホストコンピューターへと集束している。天井からはいくつものファンが回り、冷たい人工的な風を送り出していた。
「やっぱりな……。ここは魔王城の玉座じゃねぇ。
この世界の確率、設定、有利区間のすべてを集中管理している、メインの『サーバールーム(管理室)』だ」
俺の『スロット・マニアック』の画面が、部屋全体のシステムと同期して、無数のログを吐き出し始める。
【システムログ:稼働中】
・世界設定:全体平均 設定1.8(回収営業モード)
・総吸い込み量:魂メダル 8,900万枚
・現在、有利区間天井まで残り:100G
「この世界の人間たちが魔物に襲われ、苦しみ、搾取されていた理由がこれだ。
魔王の奴、世界全体の『割数』を極限まで下げて、全人類から生命力(期待値)をむしり取ってやがったんだ」
「割数……? つまり、私たちがいくら祈り、努力しても、最初から神様に負けるように仕組まれていた、ということですか?」
アリアちゃんが、怒りと悔しさで拳を震わせる。
「そういうことだ。パチンコ屋で言えば、全台設定1の極悪ボッタクリ店に、サクラ(魔王軍)だけをはべらせて一般客をハメ殺しにしていたようなもんだ」
「ククク……例え話としては、100点満点をあげてもいいよ」
部屋の奥、巨大なホストコンピューターの前に置かれた、贅沢な革張りのオフィスチェアが、ゆっくりとこちらに向かって回転した。




