第三十七章:レバーに込めたパチプロの魂。世界が暗転する瞬間
「死ねぃ、勇者ぁぁぁ!!!」
ケルベロスの3つの巨大な口が、俺の肉体を噛み砕くために迫る。
その牙の先が、俺の皮膚に触れ、生々しい死の冷たさが伝わってきたその瞬間。
「オラァァァァァァッッッ!!!(レバー強打)」
ドガァァァァァンッ!!!!
俺の右拳が、光り輝くスタートレバーを粉砕するほどの勢いで叩き下ろした。
その刹那──。
プシュン……。
世界から、すべての光が消えた。
迫り来るケルベロスの牙も、飛び散るアリアちゃんの血も、エルの放電ノイズも。
音も、振動も、体温も、すべてが漆黒の闇へと吸い込まれ、完全なる「無」の静寂が世界を支配した。
画面が真っ暗になる。
パチプロなら誰もが、一瞬にして全身の毛穴が開き、脳から大量の麻薬物質(脳汁)が噴き出すあの感覚。
『フリーズ演出:液晶ブラックアウト(全消灯)』
暗闇の中、電子音がゆっくりと、しかし圧倒的な荘厳さをもって響き渡る。
ドクン……。
ドクン……。
世界が、心臓の鼓動のように脈打つ。
そして、闇の彼方から、地平線を割るような巨大な金色の文字が、1文字ずつ画面(虚空)に浮かび上がっていった。
『G』
「な、何だ、この空間は……!? 身体が、動かん……!」
ケルベロスの3つの頭が、恐怖に震えながら虚空を見上げている。
『O』
「光が……世界のすべての魔力が、その3文字に吸い込まれていく……!」
アリアちゃんが、暗闇の中で息を呑む。
『D』
『ピキーン! 奇跡の確率 1/8192 に当選』
『GODフラグ、降臨。神の領域へようこそ』
世界が激しく反転し、漆黒の闇から一転して、すべてを焼き尽くさんばかりの黄金の光が魔王城全体を満たした。
「左を押してください」
脳内に響く、絶対のナビゲーション。
俺は不敵に、血に塗れた口元を歪めて笑った。
「神のお通りだ。跪け、雑魚どもが」
俺の指先が、最初のボタンへと伸びる。世界を救う、黄金の遊戯の始まりだ。




