第三十四章:親衛隊長・ケルベロス。3つの頭と3つのリール
「エルのアシストを信じて……ビタ押しぃぃぃ!!」
黒竜の喉元へと肉薄した俺は、限界突破のタイミング(10フレームの猶予)を完璧に見極め、空中のストップボタンを叩き抜いた。
タンッ!!!
『ピキーン! 累計差枚数2399枚時に「限界突破フラグ(ツラヌキチェリー)」の獲得に成功!』
『恩恵:有利区間を強制「貫通」! これよりバトル終了時までダメージ制限が無効化されます』
「何ぃぃぃっ!? 有利区間の壁が……砕けるだとぉぉぉ!?」
黒竜が驚愕に目を見開く。
俺の聖剣から溢れ出たプラチナゴールドの光刃が、城を覆っていた半透明の結界を文字通りバリバリと粉砕した。
「上限撤廃だ! テメェのHP、全部一撃で刈り取ってやるよ!」
光刃はそのまま黒竜の喉元を深々と貫き、一気に体内へと侵入した。
ズバァァァッ!!! と強烈な一閃。
巨躯が内側から爆発するように引き裂かれ、黒い鱗とドロドロとした内臓が、生々しい肉片となって周囲に飛び散る。魔王城の門番は、一瞬にして光り輝く魔石の山へと姿を変えた。
「ハァ、ハァ……。やった、有利区間の壁をぶち抜いたぞ!」
俺は血に濡れた聖剣を振り払い、傷ついたアリアちゃんとエルに駆け寄った。
アリアちゃんのハイレグアーマーの脇腹や、エルの細い脚の傷口に回復魔法(ショップから購入した最高級ポーション)を注ぎ、衣服の破れ目から覗く肌を優しく隠す。
「ありがとうございます、勇者様……。さすが私の、マイホ(旦那様)です……っ」
「……巡。でも、まだ本番はこれから。魔王城の奥から、もっと強い『設定』の気配」
エルの言葉通り、崩壊した城門の奥から、禍々しき闇の奔流が押し寄せてきた。
地響きと共に現れたのは、巨大な三頭の魔獣。
魔王軍親衛隊長、『ケルベロス』だ。
「ハハハ! 門番ごときを倒して調子に乗るなよ、侵入者ども!」
中央の頭が邪悪に笑い、左の頭がよだれを垂らし、右の頭が狂暴に牙を剥く。
その異様な姿よりも俺の目を引いたのは、それぞれの頭の上に、独立した『リール』が浮かび上がっていることだった。
「リールが3つ……!? おい、まさか台が3台同時に稼働してるってのか!?」
「その通りだ。私は3つの意志を持ち、3つのスロットを同時に回す。貴様一人のレバーオンなど、私の圧倒的な『試行回数』で圧殺してくれるわ!」




