第三十二章:どんなに勝っても強制終了? 魔界の理不尽ルールの謎
「オラァッ! バトルAT突入!」
ガコンッ!(レバーオン)
虹色のオーラを放つ俺のレバーオンは、設定6の引きを遺憾なく発揮した。
『ピキーン! 契機:強チェリー。恩恵:超・聖剣スラッシュ』
「我が一撃を受けろ!」
俺の放った極大の光の斬撃が、黒竜の胸元を正確に切り裂いた。
バリバリバリッ!!! と硬い鱗が弾け飛び、肉が裂け、どす黒い竜の血がブシャァァァッと噴き出す。
「グハァッ!? 門番であるこの私が、一撃でこれほどの深手を……!?」
黒竜のHPゲージが一瞬で3割減少する。
「よし、このまま一気に削り切る! 2ゲーム目、上乗せぇぇ!!」
俺はさらにレバーを強打し、追撃の構えをとった。しかし、次の瞬間──。
ピキーン。
脳内に冷酷な電子音が響き渡り、世界が不自然に静止した。
『警告:累計ダメージが制限上限(差枚数2400)に到達しました』
『有利区間を終了します。大当り(AT)強制終了。
通常営業(通常時)へと移行します』
「な、何だ、身体の力が……!?」
俺の聖剣から輝きが消え、全身を包んでいた虹色の高設定オーラが霧散した。
それだけではない。
目の前で血を流し、瀕死の重傷を負っていたはずの黒竜の傷口が、急速に再生していく。
引き裂かれた鱗が元通りになり、溢れ出ていた血が逆流するように肉体へと戻っていく。
「フハハハハ! 見たか! これが『有利区間リセット』だ!」
黒竜が傷一つない健全な姿で、高らかに咆哮した。
「嘘……私の回復魔法でもこんな一瞬で治せないのに、傷が完全に消えてる……!?」
アリアちゃんが絶望に目を見開く。
「……巡。私のデバッグエラーも、結界の範囲が広すぎて相殺しきれない」
エルが小さく首を振る。
どんなに強い攻撃を当てても、一定のラインに達した瞬間に、神のデバッグのような力で強制的に戦闘前の状態(通常時)へとリセットされる。
削ったHPは全回復。対して、こちらが消費した魔力や体力はリセットされず、ただすり減っていくだけ。
「これ、ただの拷問じゃねぇか……!」
俺の額から、冷たい汗が流れ落ちる。
パチスロ史上、最もプレイヤーを苦しめた「有利区間の理不尽さ」が、今、生々しいデスゲームとなって俺たちの前に立ちはだかっていた。




