第二十四章:イカサマにはイカサマを。リール配列の盲点
「ククク、さあどうした勇者? 早くレバーを叩かないと、街の人間が100人ずつ消し飛ぶぞ?」
カジノの支配人『ディーラー・ジャック』が、ソファ深く腰掛けながら愉悦の笑みを浮かべる。
目の前にある『デス・ダイス・スロット』の液晶には、タイマーが非情にカウントダウンを刻んでいた。内部確率は「設定マイナス(控除率99%)」。
打てば必ず負け、拒否すれば大虐殺。まさに悪魔の無理ゲーだ。
「……勇者様」
アリアちゃんが、俺の服の裾を震える手で握りしめる。
「私、怖いです……。でも、勇者様が信じる道なら、私はどんな目に遭っても……っ」
「……大丈夫。巡なら、絶対に穴を見つける」
エルの無表情な瞳の奥に、確かな信頼の炎が灯っていた。
エルのパッシブスキル『アシスト・インジケーター』のおかげで、俺の脳内にはリールの回転が通常の数倍遅く、そして鮮明に見えている。
目押し猶予は10フレーム(約0.16秒)。
これなら、どんな精密なコントロールも可能だ。
「ハッ、ビビって席を立つパチプロがどこにいるよ。
極悪ボッタクリ店長、そのニヤケ面を後悔させてやる。レバーオンッ!!」
ガコンッ!
漆黒の筐体が不気味に震え、人間の部位が描かれたリールが激しく回り出す。
『1ゲーム目:ベット(同行者の生命力と衣服)』
「あぁっ!?」
レバーを叩いた瞬間、台の側面から伸びた、目に見えない半透明の触手がアリアちゃんとエルの身体を襲った。
ビリビリビリッ!!! と激しい音が響き、アリアちゃんの新調したばかりの聖職衣の胸元が大きく引き裂かれる。はち切れんばかりの豊かな膨らみが露出し、触手の摩擦によって、白い肌に生々しい赤いミミズ腫れが走った。
「いやぁっ! 熱い、身体が、縛られて……っ!」
エルの黒いマントも切り刻まれ、華奢な太ももや脇腹からツッと血が流れ落ちる。
エロティックでありながら、じわじわと肉体を削っていく生々しい痛みに二人が顔を歪めた。
「ウフフ、いい鳴き声だ! 内部確率は設定マイナス。
お前がボタンを押した瞬間、リールは必ず『ハズレ目(首・腕・心臓がバラバラ)』になるよう制御される。小役による払い出し(ダメージ軽減)など、絶対に起きん!」
「……本当にそうか?」
俺は冷酷に笑った。
パチスロには、プログラムによる『リール制御』という絶対のルールがある。
内部でハズレが選ばれた時、リールはハズレ目を止めようとする。
しかし、ボタンを押してからリールが物理的に停止するまでに滑ることができるのは最大で4コマ(1/60秒以内)までだ。
もし、ボタンを押した位置から4コマ以内に「ハズレ用の絵柄」が1つも存在しない、配置の隙間を正確に突き刺したらどうなる?
「エルのアシストがあれば、1コマの狂いもなくそこを狙える。
ジャック、テメェは台の内部確率だけをいじって、リールの配列という物理的限界を計算に入れてねぇんだよ!」
俺の動体視力が、超スローモーションで回るリールの『盲点』を捉えた。
「左リール、上段に心臓(チェリー相当)をビタ押し! ──オラァッ!!(ボタン強打)」
タンッ!!!




