第二十二章:カジノの支配人・四天王筆頭「ディーラー・ジャック」
パチパチパチ……。
リリスが消滅し、静まり返ったコロシアムに、場違いなほど上品な拍手の音が響き渡った。
見上げると、上空のVIPテラスから、ゆっくりと一人の男が宙に浮きながら降りてくる。
黒いタキシードを完璧に着こなし、シルクハットの間から二本の冷酷な角を覗かせる男。
その顔立ちは端整だが、瞳の奥には底知れない冷徹さと、何万人もの破産者を出してきた狂気が宿っていた。
「見事だ、人間の勇者よ。そして……久しぶりだね、出来損ないの『L』」
「……ジャック」
エルが珍しく、嫌悪感を露わにして身構えた。
「こいつが、この街のボスか?」
「ええ、魔王軍四天王筆頭……カジノ都市ベガスロの支配人、『ディーラー・ジャック』よ」
ジャックは床に転がるリリスの肉片を一瞥し、フッと鼻で笑った。
「裏モノの最高傑作と自惚れていたリリスが、まさか正規の『設定6』と、廃棄物の『設定L』のバグシナジーに敗れるとはね。所詮は違法改造、店のセキュリティ(エル)には勝てないということか」
「おい、遠隔操作の次はフリーズハッキングか。
テメェらの汚い営業スタイルにはヘドが出るぜ。
さあ、四天王筆頭、ここで俺が全回転でブチのめしてやる!」
俺が聖剣を構えると、ジャックはシルクハットに手を当てて優雅に一礼した。
「おっと、暴力的だね。ここは洗練された大人の街ベガスロだ。
血生臭い殺し合いは、このコロシアムだけで十分だよ。
……どうだい、本物のギャンブラーなら、もっと相応しい場所で『勝負』をしないか?」
ジャックが指を鳴らすと、闘技場の中心に、最上階のVIPルームへと繋がる巨大な魔法陣のゲートが現れた。
「最上階『ロイヤル・スロットルーム』。そこが私の本拠地だ。
もし君たちが私にギャンブルで勝てたなら、この街の全ての魔石……いや、魔王城の『有利区間』を解除するための鍵を渡そう」
「有利区間の鍵……!?」
パチスロにおける有利区間。それは、どんなに出玉が爆発していても、一定の枚数(あるいはゲーム数)に達すると強制的にリセットされる、いわば「プレイヤーへの規制の壁」だ。
魔王城にそんな理不尽なルールがあるのか!?
「ウフフ、気になるだろう? 命と魂を賭ける度胸があるなら、上がってきなさい。
歓迎しよう、高設定の勇者一行よ」
ジャックはそう言い残すと、煙のように消え去った。
「勇者様、罠です! 絶対に怪しいです!」
アリアちゃんが引き留めるが、俺のパチプロの血が激しく滾っていた。
「罠だろうが関係ねぇ。鍵があるなら、奪い取るだけだ。行くぞ!」




