第二十章:助っ人登場。かつて「設定L」で捨てられた元・魔王軍の少女
ドゴォォォォォンッ!!!
突如、コロシアムの天井が激しく崩落し、一人の影がリリスの頭上へと猛スピードで落下してきた。
「……うるさい。その低俗なファンタジー演出、耳障り」
ズシャァァァッ! と砂煙を上げて着地したのは、ボロボロの黒いフード付きマントを羽織った、頭部に小さな二本の角を持つ魔族の少女だった。
彼女の全身からは、俺の虹色のオーラとは真逆の、どんよりとした、世界の底のような『暗黒の無オーラ』が漂っている。
さらに異様なのは、彼女が近づいた瞬間、周囲の空間の光が不自然に「消灯」したことだ。
「な、何奴ぉっ!? 私のオンステージを邪魔するな……って、え?
お前、その禍々しいまでの液晶消灯の気配は……まさか『設定L』のバグ人形!?」
リリスが心底嫌そうな声を上げた。
パチスロにおける『設定L』。
それは、およそ人間が打つために作られたものではない、メーカーの試験用・あるいは型式試験を落とすために存在する「常時下限」の最低最悪の設定。
機械割は驚異の80%未満。筐体の下パネルが常に消灯し、「私は打ってはいけない欠陥品です」と警告を発し続ける、業界の忌み子。
「私はエル……。魔王軍の基盤改造実験で、設定Lを掴まされて捨てられたゴミ……」
少女——エルは、感情の消えた瞳でリリスを見つめた。
彼女の存在そのものが放つ「設定Lのデバッグエラー」の波動が、コロシアムの空気を強力に歪めていく。裏モノ(違法改造)といえど、システムである以上、根本的な「致命的エラー(設定Lの存在)」には抗えない。
バリバリバリッ!!!
「キャァァァッ!? なにこれ、私の裏基盤が、ショートするぅぅ!」
リリスの筐体から激しい火花が散り、液晶画面がバグったようにブレ始めた。
『システム通知:設定Lの接近により、エリア内のハウスルールに深刻なシステムエラーが発生。
「ロングフリーズ」の結界が強制解除されます』
「はっ……、ふぅぅぅううう!!!」
一瞬にして世界の色彩が戻り、俺の身体の硬直が解けた。肺に一気に空気が流れ込む。
「勇者、様……っ」
限界を迎えたアリアちゃんが、はだけたボロボロの格好のまま、俺の足元に崩れ落ちた。全身血塗れで、エロいというよりはあまりにも痛々しい姿だ。
「よく耐えてくれた、アリアちゃん。そして……助かったぜ、設定Lの嬢ちゃん」
俺はボロボロになった身体の痛みを気合でねじ伏せ、聖剣を強く握り直した。
虹色の高設定オーラが、再び激しく燃え盛る。
「遠隔の次は裏モノ、フリーズハッキングか。
いい度胸だ。
お前ら裏社会のボッタクリ台に、パチプロの『ガチの引き』ってやつを叩き込んでやる。
……おいリリス、リールを止めさせろ。
ここからは俺のターンだ!!」




