第十八章:状態異常『フリーズ(固まり)』を使う裏モノモンスター
「あははは! いらっしゃいイケメンさん!
私のレバー、思いっきり叩いて壊して頂戴な!」
砂舞台の中央でケタケタと笑うのは、上半身が妖艶なサキュバス、下半身がギラギラと紫色のLEDで装飾されたパチスロ筐体という、異形なる魔物『スロット・リリス』。
彼女の胸元は今にも溢れそうなほど大きく開いており、視線を向けるだけでこちらの理性を削ってくる。
「ふん、裏モノだろうが関係ねぇ。
こっちは正真正銘の『設定6』なんだよ! 機械割119.9%の暴力、味合わせてやるぜ!」
俺は全身から虹色のオーラを放ち、聖剣を構えた。
設定6の加護がある今、どんな理不尽な確率も俺の引きがねじ伏せるはずだった。
「ウフフ、設定6?
正規の基盤なんて、この『ベガスロ』じゃただの紙クズよ! ハウスルール(裏基盤)の恐ろしさを知りなさい!」
リリスが自身のへそ部分にある禍々しいドクロ型のレバーを、自身の手でガコンと叩き下ろした。
その瞬間、コロシアム全体の空間が『キィィィィィン……』と、耳を刺すような高音に包まれる。
リリスの液晶画面が真っ暗に暗転した。
「……ッ!? この静寂、まさか!」
パチプロである俺の背筋に、冷たい戦慄が走る。
液晶画面にドクン、ドクンと心臓の鼓動のようなエフェクトが映し出され、次の瞬間、世界からすべての色彩が消え失せ、白黒のモノクロームの世界へと変わった。
『ピピピピピ……エラー。
警告:敵の固有結界「ロングフリーズ」が発動しました。
プレイヤーは次ゲームのレバーオンまで、一切の行動・思考速度以外の身体動作をパチンコ液晶の如く硬化されます』
「な、身体が……動かない……!?」
俺は右手を前方に突き出した姿勢のまま、指一本、視線一つ動かすことができなくなった。
呼吸すらも固定され、肺が締め付けられるような生々しい苦痛が襲う。
「アハハハ! 固まってる、固まってるわ! パチスロで一番気持ちいい瞬間でしょう?
でもね、裏モノのフリーズは、打っているお前じゃなく『台』が最高に気持ちよくなるための演出なのよぉ!」
リリスの筐体が怪しく紫色に発光し、リールが超高速で逆回転を始めた。
完全なるバグ挙動。
この動けない無防備な状態で、敵の一方的なターンが始まろうとしていた。




