第十六章:欲望の街・ベガスロ。魔王軍の資金源を叩き潰せ
関所の門をくぐり、荒野を抜けた俺たちの前に現れたのは、夜だというのに昼間のように明るい巨大な都市だった。
「な、何ですか、あの街は……!?
建物がピンクや紫色に光って、チカチカしています……」
アリアちゃんが目を白黒させている。
街の入り口には、巨大なネオン看板が掲げられていた。
そこには、淫らなポーズをとるサキュバスのイラストと共に、こう書かれていた。
『ようこそ、欲望と歓楽の都——ベガスロへ!』
「ベガスロ……。なるほどな、ここが魔王軍の資金源か」
街に一歩足を踏み入れると、そこは退廃と混沌が支配する空間だった。
大通りには、スロットマシーンの回転音や、大当たりのファンファーレに似たけたたましい音楽が鳴り響いている。
行き交う人々(人間も魔族もいる)の目は誰もが血走り、手元のコインを握りしめて狂ったように笑うか、全財産を失って地面にドロドロのゲロを吐きながら突っ伏している。
「お兄さん、寄っていかない? 今夜は『高設定』の女の子たちが揃ってるわよぉ」
露出度の極めて高いサキュバスのバニーガールが、豊満な二つの果実を俺の腕に押し付けて誘惑してくる。アリアちゃんが「ふしだらな!」と怒って彼女を引き離すが、街の至る所がそんな調子だ。
「気をつけろよアリアちゃん。この街の空気……ただのギャンブル街じゃねぇ」
俺の『スロット・マニアック』のセンサーが、不穏な警告音を鳴らしていた。
『警告:このエリアは「ハウスルール」が適用されています。
正規の設定確率が歪められている可能性あり(裏モノ・違法改造の疑い)』
「裏モノ、だと……?」
パチスロの歴史の闇。基盤を不正に改造し、通常の確率を無視して「とんでもない大連チャン」か「どこまでも吸い込む無限の地獄」を引き起こす、文字通りの化物台。
この街に蔓延るモンスターやカジノ台は、プレイヤーの金だけでなく『命』や『魂(魔力)』を直接吸い取るように改造されているのだ。現に、路地裏では干からびた人間の死体が、ゴミのように処理されているのが見えた。
「ウフフ、そこの威勢のいいお兄さん。
そんなところで突っ立ってないで、この街で一番アツい場所に挑戦していきなさいよ」
声をかけてきたのは、背中に黒い翼を生やした、冷酷そうな笑みを浮かべる魔族の男だった。
「アツい場所、だと?」
「そうさ。街の中央にある、命を賭けた大遊技場——
『スロットコロシアム』だよ」




