第十五章:貯まった魔石は50,000個。いざ、魔王領への関所へ
「ジャラジャラジャラジャラ……! おいおい、止まんねぇぞこれ!」
機巧のアーマーを撃破した要塞の跡地で、俺は狂喜乱舞していた。
四天王を倒した報酬、そして要塞の金庫から溢れ出た魔石を『スロット・マニアック』の計数機に流し込むと、脳内のデジタルカウンターがものすごい勢いで上昇していく。
『ピピピピピ……計数完了。
現在の所持魔石:50,000個』
「ご、5万個ぉ!? 万枚(5万枚)突破の、いわゆる『コンプリート機能』発動一歩手前じゃねえか!」
パチスロにおいて5万枚といえば、人生で一度拝めるかどうかの大事故、お祭り騒ぎの領域だ。
これだけあれば、いつでも最高設定の『設定6(必要魔石10,000個)』に打ち替えることができるし、なんなら5回も全ツッパできる。
「あの、勇者様……喜んでいるところ大変申し訳ないのですが、その、そろそろ服を……」
背後から、蚊の鳴くような声が聞こえた。
振り返ると、アリアちゃんがボロボロに引き裂かれたローブの端を必死に引っ張り、はだけた胸元と、下着が丸見えの太ももを隠そうと真っ赤になって身を縮めていた。
ガトリング砲の衝撃波のせいで、布地はほとんど意味を成しておらず、豊かな膨らみの頂点が今にもこぼれ落ちそうだ。
「おっと、すまんすまん。
パチプロってのは、目の前にドル箱が積まれると周りが見えなくなる人種なんだ」
俺は5万個の魔石から、ほんの数個を使ってシステムショップから『高級聖職衣(実戦特化・防汚加工)』を購入し、彼女に手渡した。
アリアちゃんはひったくるようにそれを受け取ると、物陰でガサゴソと着替え始める。
「ふぅ……。でも、これでようやく魔王領への関所を越えられますね」
新調されたタイトな聖職衣に身を包んだアリアちゃんが戻ってきた。
胸元が強調されるデザインなのは、俺の趣味だ。
「ああ。この要塞の先にある『絶望の門』が、人間界と魔王領を隔てる最後の関所だ。
四天王を二人もブチ殺したんだ、向こうも総力戦で来るだろうが……」
俺はステータス画面を開き、贅沢に10,000個の魔石を消費した。
『ピガッ! 設定変更:設定4 ➔ 設定6。出玉率119.9%の神の世界へようこそ』
全身を包み込む、まばゆい虹色のオーラ。
圧倒的な全能感。
設定1の地獄、設定4の沼を乗り越え、俺は再び『設定6の加護を授かりし男』へと戻った。
「行くぞアリアちゃん。ここからは、俺たちの『ウイニングラン(消化試合)』だ!」
魔王領の関所『絶望の門』。
そこには数千の魔王軍の軍勢と、巨大な門番の魔獣が待ち構えていたが、設定6となった俺の敵ではなかった。
レバーを叩けば、画面を見るまでもなく『確定役』が乱舞する。
一振りで山を消し飛ばす光の斬撃を連発し、数千の軍勢を肉片の雨へと変えながら、俺たちは文字通り関所を「踏み潰して」突破した。
ここに、魔王討伐への第1部『人間界防衛編』が完結した。
しかし、関所の向こう側に広がっていたのは、荒廃した魔界……ではなく、
ギラギラとした色彩に満ちた、異様な光景だった。




