第十二章:四天王・機巧のアーマー。完全確率を否定するイカサマ野郎
「オラァァァ、格上げしろぉぉぉ!!」
俺の渾身のレバー強打が虚空を引き裂いた瞬間、脳内のシステムが激しく明滅した。
プスン……。
世界から、すべての音が消えた。
風の音も、アルラウネの不気味な笑い声も、俺にしがみつくアリアちゃんの荒い息遣いも。
画面が真っ暗になる。パチプロなら誰もが脳汁を噴き出す究極の演出——
『ロングフリーズ』だ。
『ピキーン! 確率0.02%の「超格上げフラグ」に当選。
設定4の引きにあらず!』
『恩恵:アルティメット・ボーナス & 結界一斉強制解除』
「な、何よこれ、身体が……動か……」
恐怖に目を見開くアルラウネの頭上から、天空を割って巨大な黄金の光線が降り注いだ。
ドガァァァァァァン!!!
「あがぁぁぁぁっ!?」
強烈な光と熱線が、アルラウネの美しい上半身と不気味な触手を根こそぎ焼き尽くす。
エロティックな悲鳴を上げる暇さえ与えず、植物の肉体が炭化し、ドロドロの灰へと変わっていく。
同時に、森を覆っていた無限ループの結界がガラスのように粉々に砕け散った。
「ふぅ……。設定4でも、薄いところを引けば勝てる。これがパチスロよ」
俺は胸を撫で下ろし、粘液でベタベタになったアリアちゃんを抱え直して森を抜けた。
数日後。
俺たちは魔王領の手前にある、黒鉄で固められた要塞へと辿り着いていた。
そこに待ち受けていたのは、全長3メートルを超える巨大な鋼鉄の塊。
魔王軍四天王の一角、『機巧のアーマー』だ。
「フハハハ! 虫ケラどもが、よくぞここまで来られたものだ」
ギチギチと不気味な駆動音を立てて、アーマーが巨大な鉄拳を地面に叩きつける。
その衝撃だけで地面が爆発した。
「おいおい、また強そうなのが出てきたな……。よし、バトルAT突入だ!」
俺はすかさず脳内のレバーを叩く。
カチャッ。リールが回り出す。
「左リール、狙うは——」
ガガガッ!!
「……あ?」
突然、脳内のリールが妙な挙動を見せた。
回っていたリールが強制的にビクンと跳ね上がり、勝手に止まったのだ。
当然、出目はバラケ目のハズレ。
「ウフフ、無駄だ。我が結界内では、貴様の『確率』など無意味。
私が貴様の運命を操作しているのだからな」
アーマーの胸部から、怪しい魔力の電波が発信されている。
「テ、テメェ……! レバーオンのタイミングをずらし、出目を書き換えたな!?
パチスロの絶対のルール『完全確率』を否定する気か!」
「ハハハ! 異世界では我がルールだ!」
「この……『遠隔操作』野郎がぁぁぁ!!!」
パチプロとして、最も許せない禁忌を前に、俺の怒りは絶頂に達した。




