人間って生き物の<業>
そしてその日は、ついに訪れた。
余命宣告の三ヶ月まではあと一週間という日だった。
なるほど<余命>ってのが『ただの平均値でしかない』って意味がよく分かったよ……
ダンナは、痛みを緩和するための強い薬を使って、ほとんど意識もないままに静かに命を終えた……
思った以上に呆気ない最期だった。
しかも私自身、悲しいのと同時に、なんだかホッとした。
だって、もう、彼が苦しむ姿を見なくて済むって実感したから……
だから、葬式でも、火葬の時も、不思議と涙は出なかった。むしろ、これまでの方がよっぽど泣いてた。
人間って、ホントに不思議だな……
こうやって順を追ってじっくり思い出すと、結構、実際にあったことと記憶として普段思い出すこととは、内容が食い違ってたりした。たぶん、無意識のうちに記憶を改竄してたりしたんだろうな。
逆に、当時は、よく分かってなかったけど、今になって『あれはちょっと……』って感じることもあった。
その一番が、あの頃は彼のことをなじったりしてなかったつもりだったのに、今にして思えば結構辛辣なことを口にしてたのが分かってしまう。
この辺りも、人間って生き物の<業>なんだろうね……
いずれにせよ、観音と私は、彼を見送ることになった。
観音と私を残して先に逝った彼に対する恨みは、ある。いずれ人間が死ぬのは避けられなくても、いくらなんでも早すぎるよ……
しかも、私、ダンナの子供も授からなかったんだよ。
確かに、ダンナがいなくなるのに子供ができてたらもっと大変だったに違いないとは思うんだけど、そういう、打算的な部分とは別に、感情として、
『彼の子供が欲しかった』
っていうのも間違いなくあるんだ。他の男性との子供なんて欲しいとは思わないけど、<彼と私の子供>は欲しかった。
だけど、そうやって自分の望みが叶えられないってのも、この世ってものを考えたら別によくあることだよね。
それを承知しないといけないよね。
自分が気に入らないからって他人を攻撃するような人達は、そんなことをしてて自分の人生が納得のいくものになるとでも思ってるんだろうか。
なるべく他人を攻撃しないようにしてたダンナだって辛いこと苦しいことはたくさんあったみたいなのに、わざわざ自分から面倒を起こしに行って、それで、
『この世はクソだ!!』
って、何言ってんだろう?
『イジメは、イジメられる側にも原因がある』
とか言ってるの、自分にも当てはまるってなんで分からないんだろう?
自分が嫌な思いしてるのは、自分が招いてるんだって。
自分じゃどうしようもないことに噛み付いたって、ただ自分の無力さを思い知らされるだけなのにさ……




