表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/92

どうして彼なの……?

ダンナに、抗がん剤の副作用があんまり出なかったのは、要は『効いてない』ってことだったらしい。


検査の数値の変動も、ちょっと下がったことはあっても、正直、誤差の範囲だったらしいし……


そして、その抗がん剤を使える期間が過ぎてしまい、次の抗がん剤を試すことに。


だけどこの頃には、もう、仕事を続けられるような体調じゃなかった。抗がん剤の副作用というよりは、まともに食事もできず、栄養補給の点滴頼みになってたことで体力が一気に衰えたんだ。


見た目にも、げっそりと痩せてた。


普通に座ってるだけでも辛いし、横になっても寝られないって……


一見しただけで普通の病気じゃないって分かる様子だったと思う。


ダンナの両親は、私と結婚する以前には二人とも亡くなってて、そっちに気を遣う必要がなかったのは幸いだったかな。父親はダンナが前の奥さんと結婚するよりずっと以前に事故で。お母さんは、心筋梗塞で。と、彼は言ってた。


「僕自身はあんまり気にしたことなかったんだけど、早死にする家系だったのかもね……」


なんて、冗談めかして……


『やめてよ、そんな言い方……!』


って言ってしまいそうだったけど、それは何とか飲み込んだ。


『私がダンナに当たってどうすんだ。苦しんでんのは私じゃなくてダンナだ。死に直面してるのは私じゃなくてダンナだ。そこを履き違えるな……!』


自分にそう言い聞かせる。


一方、観音(かのん)は、普通に振る舞ってくれてた。


ただ、一人じゃ寝られないのか、私とダンナの寝室で一緒に寝るようになったけど。あと、お風呂も、一人じゃ入れなくなったみたい。


なるべく普通に振る舞うようにしてくれてるんだろうなっていうのが分かってしまう。ここでもし観音(かのん)まで精神的に不安定になって感情的になられたりしてたら、私ももちこたえられなかったかも……


ダンナも、結局、そういうことなんだろうな。八つ当たりしたって癌が治るわけじゃない。それどころか、観音(かのん)や私の心まで壊してしまうかもしれない。それが嫌だったんだと思う。


でも、だからこそ、思うんだ。


『どうして彼なの……? 世の中にはもっと死んだ方がいい奴だっていっぱいいるじゃん……!』


ってさ。


だけど、<この世>っていうのは、そういうものなんだよね。


そして、そんなこの世に、親は、子供に承諾ももらわずに勝手に送り出しちゃうんだ。それを思えば、観音(かのん)のことをダンナがとことん気遣おうとしてたのは当然だって気がする。そんな父親だからこそ、観音(かのん)は安心できてたんだろうな。


私も、そんなダンナだから、好きになったんだ。


それは間違いない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ