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やって後悔するか、やらずに後悔するか

『やって後悔するか、やらずに後悔するか』


と言うのは、よくあるジレンマだけど、私はこれは、『どちらが正解』というものじゃないと今は感じてる。結局は、それを選択する本人の<納得>が一番大事なんだ。


正直、ダンナの病状は、判明した時点でもう、<奇跡>を期待するしかないようなものだったそうだ。全財産をはたいてありとあらゆる手を試しても。っていうね……


ダンナは、それを分かってたんだと思う。


『あらゆる手を尽くしてもダメだったら諦めもつく』


って思うかもしれないけど、それは、実際にあらゆる手を尽くしてもダメだった経験のない人が言うことなのかもって、私も感じるんだ。


いや、実際にそういう人もいるのかもしれないけど、だけどやっぱり、その結果に後悔するかどうかっていうのは、結局、本人の感性とか性格とか人生観とか死生観とかに依存することなんじゃないかな……


そしてダンナは、


『そんなことじゃ納得できない』


っていう人だったってことだよ。


全財産をはたいて何もかも失ってしかも自分も死んだなんてことになったら、それこそ間違いなく後悔するって思ってたんだ。


だから、せめて、観音(かのん)と私が無理なく生きていけるようにって、そう考えてくれたんだ……


だけど……


だけどさ……


私には分からないんだ……だって、実際に、


『何もかも失ってダンナも死んで』


って状況じゃないから。それで観音(かのん)と私がどう感じたかなんて、実際にそうなってないんだから、分かんないよ!


ちくしょう……


ばかやろう……




なんてことを考えたって、現実は何も変わらないんだよね。


そしてダンナは、観音(かのん)と私の前では、どこまでも穏やかな表情をしてくれてた。


抗がん剤の投与のために入院してる間も。


私は仕事があるから毎日ってわけにはいかなかったけど、観音(かのん)は夏休み中も、夏休みが終わって学校が始まっても、毎日、お見舞いに行ってた。


そして、


「お父さん、抗がん剤使ってても、聞いてたほど副作用も出てないんだって。胃が痛いから食べるのはそんなに食べられないけど、吐き気とかはそんなになくて、毛も思ったより抜けたりしない」


って、笑顔で言ってくれたり。


病院のカウンセラーは、


「患者は理不尽な暴言を口にしたりする場合があります」


と言ってたけど、それもやっぱり人それぞれなんだろうな。ダンナは、泣き言は口にしたけど、暴言は最後まで口にしなかったし。


「僕は本当に馬鹿だった……観音(かのん)観音(かんね)に申し訳ない……」


ってさ。しかもその泣き言も、観音(かのん)の前じゃ口にしなかった。


自分が勝手にこの世に送り出しておいて、それでこんな形で死んでいくことに甘えたんじゃ、本当に観音(かのん)にとっては、


『ふざけるな!』


だもんね。



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